あいさつ回り―地底2
風邪引いた…
喉・鼻・熱・頭痛の風邪の症状オンパレード
「あそこの橋を渡ったらすぐだよ」
ヤマメが指差す先を追うとわりと大きな橋が川を渡るためにあった。
「まぁ、あの橋には厄介のがいるけどね。あんたの場合はそっちのがいいんだろ?それに悪いやつじゃないし」
厄介とな?どう厄介なのだろうか……鬼どもや幽香のように喧嘩を吹っかけてくるのか、はたまた玲央のようなネットリした感じなのか、麻耶みたく腹黒いのか…
厄介なのに悪いやつじゃないとか言葉遊びか?
てか、この短い会話の中でよく俺の性格を把握しているな。……自分で思うのも癪だが単純な性格だったな俺は。
「………(パルパルパル)」
なんか、橋に近づくに連れて何やらぼそぼそと呟いている声が聞こえてくるな……
「あの橋には橋姫がいるんだよ」
呟きがでかくなってきた頃合にそこにいる厄介なやつの説明をヤマメがしてきた。
それにしても橋姫か……一条戻り橋で渡辺綱が斬ったという嫉妬の鬼がわりと有名だな。
その後に、色々と悪い噂が流れていたりしたな、男女の仲が分かれたなり他の橋に行こうとしたら不運なことが起こるなど。
その後に行ってみたが何もなく、一日中橋の上で寝ていても橋姫なんか現れなく結局あきらめた記憶があるな。
「おーい!パルスィー!」
「ぽしょぽしょ」
ヤマメが大きな声を上げて手を振りながら橋へと駆けていく。俺の手に持たれているキスメも何やら早く早くと言ってくる。
だったら、自分で行けばいいだろうにと思わなくもないが、別段断る理由もないので俺も早足で近づいていくとそこには金色の髪に和服という少々変わった格好の少女がいた。
しかもだ……エルフ耳である!今から500年位後の世界ならば絶対な人気が出るであろう神の耳を持つ少女である。
俺?どうでもいいよ。
「相変わらず元気ね……」
何やら羨むような妬むような視線でヤマメを見る少女がふとヤマメから視線を外して俺を捕らえる。
「何?新しい友達が出来たから自慢?」
「友達って言っていいか分からないけど、そうだね紹介するよ。お~い真理」
ヤマメが俺を呼んでいるので更に近づき横に並ぶ。
「風由真理だ。ちょっと長生きをしている犬の妖怪さ」
「水橋パルスィよ」
自己紹介すると相手もそっけなくだが、きちんとしてくれた。うん、こういう子は嫌いじゃないね。
「とても綺麗な顔ね」
「昔から言われなれているさ。それに、男だから褒められても嬉しくない」
「「「え?」」」
ん?なんか、全員固まったがどうしたんだ?
「そういや言ってなかったか、俺は男だぞ」
「「「えぇぇぇぇっ!?」」」
おお、ここまで盛大に驚かれるのは久々な気がするな。
「ちょっと待って!」
ガシッとヤマメに顔を捕まれ動けなくなる。下からも何やらジーとしたキスメの視線を感じるし。
「本当に男?」
「嘘は嫌いなんでね」
「……見えない」
「だろうね」
自分が女顔なんて散々言われ続けてきたから最早慣れた。
「女の自尊心を傷つける男ね」
「知らん」
むしろ俺としては、むさ苦しい男に成りたいのだが、変化の術使おうが何しようが成れないものは成れないんだよ。
一時期は髯を生やせばとも思ったのだが、全然伸びないし。
「う~ん、これで男なのか……声も若干低いけどそんな感じの声なら鬼の中にも一杯いるし…」
まぁ、俺の声ってハスキーボイスって感じで男装の麗人になるのかな?いや、男らしさのかけらもない顔だから意味ないな。
「綺麗な顔だよ」
「ありがとよ」
キスメの言葉に棘がなく純粋な言葉と分かりそのまま御礼をする。
「それであんたは何で地底にいるのかしら?」
「なんかね、鬼たちに会いに態々地上から来たんだってさ」
「鬼に?ふん、鬼に好かれるなんてね」
「何分、玲央とはかなり昔からの縁でね」
初めての友人だなあいつは……それがどうしてああなった?
「鬼神と?そういえば、もの凄い勢いでこの橋を渡って行ったわね……壊れると思ったわ」
「すまんな。あいつは良くも悪くも一途なやつなんでね」
鬼の総大将にして人から畏怖され神格を得た唯一の鬼だからな。また、鬼に裏表がないといわれる所以が玲央の性格から来ているって言ったら信じるやついるかね?
俺と一緒のときはわりと素の状態に近いのだが壊れている。が、対人に対してのあいつはまさに鬼の姿だ。昔一緒にいたときに討伐に来た人間相手にその態度を見てかっこいいと思ったし。
「それで、鬼に会いに行くあんたとヤマメが一緒にいる理由は?」
「いや、宴会らしいからお邪魔しようかなって」
後ろでに手を組んで朗らかに理由を言い放つヤマメにパルスィはため息を一つ吐いた。
「あんた、前にそれで潰されたじゃない」
「でも、宴会は鬼主催だから唯で酒が飲めるってのはいいことじゃん」
あ、こいつは懲りないタイプだな。まぁ、直ぐに酔ってしまうけど酒が好きって奴はたくさんいるし。
「お前さんも来るかい?」
「嫌よ、私は静かなほうがいいの」
「まぁまぁ、いいじゃん一緒に行こうぜ。お前の昔話とか聞かせて欲しいし」
キスメを頭の上に置き、パルスィの手を取り歩き出す。
「ちょっと、話を聞いていたの」
「聞いていたが、時には強引のほうがいいだろ?」
「それじゃ鬼と一緒じゃない」
「まぁ、鬼に友人が多いから移ったのかね」
それに引っ張る手に抵抗する感じがない分、案外口だけいやがっているのかもな……ツンデレか!
「何か失礼なこと考えてなかった?」
「賛辞を考えていたがね」
まぁ、ツンデレのやつにツンデレといっても違うと返されるのがオチなのでそこは言わない。
「んじゃ、行くか」
「「お-!」」
「分かったわよ」
結局なんだかんだ言って付いてきてくれるこいつは根はいいやつだな。
パルスィはあえて『妬ましい』という単語を言わないようにしたので苦労しました。
あと、ニコ動で風神一家を見たら洩矢家の人々をあれに近い感じにしたくなりますよね……流石にやらないけどw




