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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
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あいさつ回り―地底

 玲央に誘われて地底へと向かうのはいいのだが、今回は椛がいないからさっさと済ませて帰ろう。


 玲央曰く地底の連中は気のいいやつらも多いけど、反対に地上より封印された気性の荒いやつらもいるから椛に万が一があるかもしれないからやめておいたほうがいいと言われてしまった。


 俺が近くにいて出来ると思うのかなぁ?まぁ、玲央が俺がキレて地底が崩壊するほうが嫌ですって言われてしまったらしかないか。


 椛とあとりを麻耶に預けてきたのはいいけど、ここ一年は椛と一緒に出かけるのが癖になっていたせいか近くにいないと物足りないな。


 てか、俺も変わったもんだ。昔は一人であちらこちらと歩いていたのに。


「っと、ここが入り口かな?」


 ぷらぷらと歩いていたら地底の入り口へとたどり着いた。玲央は先に行って宴会の準備をしていてくれるそうだ。


 まぁ、一人なら一人で何が起こるか楽しみにしながら歩くかな。


 しばらく歩いていくとなにやら頭上から何か落ちてくるのでキャッチしたのだが


「桶?」


 丸い木枠で出来た桶なのだが、桶にしては何か違うような気がする。なにやら手に持つような部分があるから。


「………」


「………」


 なにやら視線を感じたので手元の桶を見てみると少女が桶から顔を出して俺をじっと見ていた。


「ぽしょぽしょ」


「桶ではなく釣瓶とな?」


 彼女が言うには俺が持っているのは桶ではなく釣瓶らしい、なるほどそれならば取っ手がついているのも頷けるな。


「ぽしょぽしょ」


「ん?いや、俺は鬼に御呼ばれして地上から来ただけだよ」


 何しにきたかといわれたので答えてやる。


「あんた、キスメの言葉が聞こえるの?」


 釣瓶少女を手に歩きながら放していると再び頭上から声が聞こえたので上を向いてみるとなにやら蜘蛛の巣に寝転がっている少女がいた。


「これでも耳がいいもんでな」


「ふ~ん、たいていの奴はキスメが何を言っているか分からないとかいって気味悪がるんだけどね」


 ひどいもんだ。人の話はきちんと聞かないといけないんだぞ。


「そういうお前も降りてきてくれないか?首が疲れる」


 わざわざ話すためだけに空飛ぶのなんか馬鹿らしいし。


「おっと、ごめんよ」


 そういって地上に飛び降りてくる少女。蜘蛛の巣からすんなり離れられるあたり捕まっていたわけではなさそうだ。


「それにしても地上からのお客さんねぇ…」


「まぁ、変わっているってのは自覚しているよ」


 もう何千年も言われ続けているしな。


「ぽしょぽしょ」


「そういや自己紹介してなかったな。俺は真理、風由真理。ちょっと長生きしている犬の妖怪さ」


「わたしは、黒谷ヤマメだよ」


「キスメ。釣瓶落とし」


 茶色い装束を着ているのがヤマメで釣瓶落としの子がキスメね。てか、キスメはそれくらいの音量でも喋れるなら喋ればいいのに。分かるからどっちでもいいけど。


「それにしても犬の妖怪が鬼と知り合いねぇ」


 自己紹介が終わりヤマメが俺のことをジロジロと見てくる。まぁ、鬼と犬の接点なんかないからなぁ……しいて言うならペット?


「鬼神と古い友人でな、宴会やるから来ないかって誘われたんだよ」


「鬼神っていやぁ、最近なんかの妖怪が来たから地上に帰りますって言って他の鬼連中がてんわやんわってなっていたけど」


 間違いなく俺が帰ってきたからだな。けど、俺は悪くねぇ。


「それにしてもヤマメは何の妖怪なんだ?蜘蛛なのは分かるが」


 蜘蛛の妖怪で思いつくのはそんなにあるわけじゃないし、俺が実際見たやつなんて片手で数えられるしかいないけど。


「わたし?わたしは土蜘蛛だよ」


「なにぃっ!?」


「ひぅっ!?」


 思わず大声で叫んでしまい、キスメが小さく悲鳴を上げてしまう。いやごめんよ。


「びっくりしたなぁ」


「いやこっちの台詞だから。変わりすぎだろお前」


 昔に見たこいつというか土蜘蛛の姿と似たよったところなんて一つもありゃしねえ。


「ん?昔のわたしを知っているの?」


「ああ、世間を騒がしているって話を聞いて見に行ったんだけどさ」


「いやぁ、わたしも若かった」


 そんな若気の至りみたいな感じでいわれてもな。


「それに退治されたって聞いたけど」


「う~ん、案外生命力あったみたいでさ、私の死骸?をそのまま処理したくないみたいに思ったらしくてこっちに押し込められたみたいなんだよね」


 いやいや、死骸とかすっげぇ他人事みたいに言っているけどお前のことだぞ。


「まぁまぁ、わたしの昔なんてどうでもいいじゃん」


 まぁ、お前がどうでもいいって言うなら俺もいいけどね。


「それで、あんたは私のこと知っているみたいってことはそこそこ長生きってことでしょ?」


「いや鬼神と古い知り合いって言っただろうが。あいつとは既に千年以上の付き合いだよ」


「ぽしょぽしょ」


「わたしもキスメに同意だよ。そんなに長生きしている風にはみえないよ」


 そこに触れるな。俺も貫禄でなくて悔しいんだから。


「まぁいいや、鬼がいる場所って知っているか?」


 玲央には


『真理さんには場所を告げないほうが楽しんで来られますよね?それに一定時間来なかったら迎えに行きます』


 って言われたからな、本当に俺のことを良く分かってらっしゃる……時々分かりすぎて怖いが。


「鬼ならとりあえずこのまま真っ直ぐ行けば大丈夫だよ……暇だから私も行こうかな」


「いいんじゃないか?あいつらの性格なら別に誰が増えようとも迎えてくれるだろ」


 気のいい連中ばっかりいるからな、嫌いなのはセコイやつだけだ。


 玲央の場合は器が大きすぎて基本的に大らかで怒らないし。


「んじゃ、行きますか」


「おー」


「おー!」


 キスメも行くみたいだな。てか、返事だけは大きく出せるってどうよ?

や、ヤマメの喋り方が一切分かりませんでしたw

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