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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
55/115

あいさつ回り―花畑

 それは突然だった。


 家で縁側で気持ちのいい日差しを浴びながら久々に獣化しながら寝ていたら突如の轟音とともに家が吹き飛んだ。


「なんだ?」


 ノッソリと起き上がりことの起こりを確認しようと動き出したらその正体は自ら姿を現した。


「ふ、ふふふ……久しぶりね真理」


「久々だな幽香」


 現れたのは怪しい表情をした風見幽香であった。


「あなた、去年辺りに幻想郷にきたそうじゃないの…」


「ああ、それが?」


 それがどうしたというのか?俺が幻想郷に来てからは結構あっちこっちを歩き回ったが。


「どうして私の所に来なかったのかしら?」


「……お前もいたのか?」


「ええ、いたわよ?それでどうしてかしら?」


 どうやら尋ねなかったことに拗ねてしまったようだが…


「しかし幽香よぉ…」


「何かしら?」


 かつて見た綺麗な笑顔を向けながら俺の言葉を待つ幽香。これがただの男ならばその笑顔で落とされたかもしれないが、今は用件を済ませよう。


「たとえ尋ねかったとしてもその報復で家を壊すな!!」


「くぁっ!?」


 人化して思いっきり頭のてっぺんに拳骨を落とす。淑女にあるまじき声を上げながら畳に落ちるがそんなの気にせず背中に足を乗せる。ついでにシッポも5尾を開放。


「これからどうしてくれんだ?隙間風なんかいう次元を超越しているじゃないか」


「ぐっ、だったら私の家にでも…」


「ああん?人の家を壊しておいて最初に言う子とはそれか?それに、この家には俺以外の住人もいるんだぞ?」


 俺一人なら家などいらんが、この家には椛とあとりというほかの住人もいるんだ。流石に二人に野宿しろなど言えんぞ俺は。


「悪かったわ」


「最初から考えて行動しろよ」


 足をどかして幽香を立たせる。椛がにとりの所に遊びに行っていて助かった。もし、家にいたら巻き込まれていたかも知れん。


 あとりは最初の段階で何かを感じたのか周りを見回した時には庭に避難していたから助かった。


「そんで、うちを壊しにきたわけじゃないだろ?」


「当然じゃない。勝負よ真理」


 …………玲央二号だ。


「えー」


「ふふ、そう言ってやる気なのでしょう?」


 何故ばれたし?家を吹き飛ばされて黙っていられるほど俺も優しくはない。


「さあ、やりましょう」


「やるのは構わんが何処でだ?」


「私達の再戦には相応しい場所よ」


 そういって、出て行く幽香に対してあとりに家のことと椛のことを任せてついていくとそこには一面の向日葵が植えられた場所であった。


「なつかしいな」


 この景色はかつて妹紅と旅をしていたときに幽香とであったあの場所と同じである。


「ええ、人間や妖怪共はここを太陽の畑と呼んでいるらしいわ」


「まぁ、この花を見ればそういう想像も出来るし、強ち間違いでもないからな」


 上手いたとえを考え付く奴もいるものだ。


「さあ、始めましょう」


「まぁ、やるか。んじゃ、かつてを超えられているか試そうか…7尾開放」


 かつては7尾で苦戦していたのを思い出し7尾まで開放する。幽香のセンスを考えるとこれを超えていそうな気がしないでもないが。


「ふふふ…やはり、他の雑魚とは違うわね…鳥肌が立ちそうよ」


 ややトリップしながら幽香が言ってくる。なんでこう俺の周りには普通の奴が少ないんだろう?……いないか?


「まあいいや、こい」


 空中にあがり手で招きよせる仕草をした瞬間に幽香の姿がぶれた。気づけば目の前で右手を振りかぶっている途中であった。


 引き絞られた右手から殺人級のストレートを放たれるが、これを左手を使って払いのけ逆に空いているわき腹に蹴りを放つも肝心の幽香は払われた勢いを利用してそのまま横に回りこんでおり空しくも外れてしまう。


「ハァッ!」


 今度は傘によるなぎ払いを頭を屈めて避けると顔の位置に蹴りが来たので仰け反るように避けたところに止めとばかりに再び傘が振り下ろされて腹に直撃した。


「ゲフッ」


 肺から空気が漏れるのを感じなら地上に落ちきる寸前に体勢を整えて再び空へと上がる。


「いや、驚いた。前に7尾で完全に封殺できたのに」


「何が驚いた、よ。大して効いていないじゃない」


「いやいや、結構受けているぞ?ただ、ここに来てから頑丈になったのは確かだけど」


 玲央がたまに仕掛けてくるからなぁ…昔ほどギラついてない分、楽でいいけど。


「まぁ、いいわ。行くわよ」


「8尾開放」


 幽香が近づく前にシッポを開放して上限をあげると、先ほどのぶれた動きが全て見切れるようになり今度は払うことせずにその場で回転しながら避けつつ回し蹴りでカウンターを取る。


 幽香は直感が働いたのか左手で咄嗟にガードはしたが、気にせずにそのまま力を入れて吹き飛ばした。


「つっ…なんて重い蹴りなのよ」


「まぁ、手が使えない分は、な」


 如何せん、拳骨程度ならば出来るが実戦では未だに手での攻撃は苦手で使えないからなぁ…


「だったらこれでどう!」


 幽香が傘を前に向けると先端に力がたまりだす。確か、マスタースパークとか何とか言ったか?


「んじゃ、俺も」


 右手に妖力を集める。力と力のぶつかり合いは嫌いじゃないので正面から受け止める。


「マスタースパーク!」


「おらっ!」


 俺も何か名前付けるかね?未だにまともな名前があるのって亜空転間位しかないし。


 正面からぶつかり合う極光と極光。最初は中間地点で押し合っていたが、俺のほうが威力が低いのか徐々に押されだした。


「ふふ、これで決めるわ!」


 更に力を込めたのか一気に押され目前まで迫ってくる幽香のマスタースパーク。


「9尾開放」


 素直に賞賛しよう。未だに9尾まで開放するただ一人の妖怪などは今まで玲央しかいなかったからな。


 9尾まで開放された俺の力は目前まで迫っていたマスタースパークを一気に押し返し幽香を飲み込んだ。


「ふぃ、疲れた」


 空中でボロボロになっている幽香だがもう戦う力は残っていないのか一歩も動かないので近づいていく。


「デタラメね…」


「まぁ、長年生きてきたから力は有り余っているさ」


「いつか越えてやるわ…」


 それだけ言うと、幽香は此方に倒れてくるように気絶したので受け止める。


「楽しみにしているよ」


 聞こえないだろうが、そう呟き幽香を抱えて地上に降りると。


「いいものを見せてもらいました」


 とびっきりの笑顔で賞賛する玲央がいた。


「来ていたのか」


「真理さんの妖力が解放されたのを感じたので」


 相変わらずすげぇな。


「それにしても、若いのに凄いですねぇ」


「ああ、恐らく戦闘力で考えればぴか一だろう」


 鬼すらも賞賛する力を秘めている幽香を抱きながらこいつの匂いがする建物を見つけて中に入り寝かしつける。


「うっ…」


「気づいたか」


 前見たく長い時間の気絶ではなかったのか直ぐに起きた。


「気分はどうだい?」


 かつて聞いた言葉を投げかける。


「優れないわ」


 これまたかつて聞いた答えが返ってきた。


「そっちの女は誰よ?」


「初めまして。私の名前は鬼神母玲央。巷では鬼神といわれている鬼の総大将ですよ」


「貴女が…」


 玲央の自己紹介を聞いて眉を寄せる幽香。


「すばらしい戦いでした。今度は私と戦ってくださいね?」


「鬼神が私をね」


 鬼神が自分の力を認めたのが嬉しいのか口端が上がってにやける幽香。


「さてと、家を壊された鬱憤は晴らしたけど、どうすっかなぁ?」


 むしろそれを先に片付けておくべきだったか?俺も思っていた以上に頭にきていたらしい。


「あ、おうちでしたら今天狗たちが必死に直していますよ?なんでも麻耶さんが最優先事項だといって総動員させたみたいですし」


「そうか?悪い事したな」


「気にしないでください。なにやら寝言をほざいてましたし」


 どうせ高感度がどうたらこうたらとかだろうが。


「しかし、直ぐには直らないしどうしようか?」


「でしたら、地底にきませんか?勇儀ちゃんたちも会いたいって言っていましたし」


「そういや鬼どもは地底にいたんだったな。んじゃ、行くか」


 こうして家の修理は天狗に任せて俺達一行は地底に向かうことにした。

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