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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
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あいさつ回り―妖怪の山3

「あやややや、そこにいるのは真理さんじゃないですか」


 妖怪の山の散策中に突如頭上から声が聞こえたので上を向いてみればそこには一人の鴉天狗が…


「ああ、文か」


「はい、清く正しい射命丸文です!」


 ビシッと敬礼する感じで俺の元に降りてくるんだが…


「え?なにそれ、お前一体どうした?」


 あのとげとげしい文は一体どうした?なんか、あんたとかお前とか呼ばない文が本当に気持ち悪い。


「何を言っているんですか、私はこんな感じだったじゃないですか」


「ねーよ、絶対ねーよ」


「デスヨネー」


 文も違っていると分かっていたのか俺の突っ込みに素直に頷いている。


「実はですねー今天狗たちの間で瓦版が流行っていまして、私も例に漏れずやっているんですよ」


「瓦版ねぇ…」


 瓦版って新聞だったよな確か?


「そんでもって、記者たるものとしてあの態度はいかがなものかと思いまして口調を直したんですよ」


「ほ~、変われば変わるもんだな」


「貴女が言ったんじゃないですか、心の赴くまま~って」


「そうだったか?当時の俺はいいこと言ったな。あと、何度も言うが俺は男だ」


 しっかし、豹変って言葉が通るほど文の雰囲気が変わったなあ。前はなんと言うか抜き身の刀かと思うほど鋭かった雰囲気が今じゃこんなだし。


「おとーさん知り合い?」


 おっと、文の変化に驚いて娘のことを忘れていたとはまだまだだな俺も。


「こいつは文射丸命といってお父さんの知り合いだ」


「よろしくねぶんしゃまるおねーちゃん」


「なによその名前は!!ふざけんじゃないわよ!」


 おお、キレたら素に戻ったぞ。やっぱりキャラ作りだからか素に戻ると口調も昔のそれで何となくほっとする。


「おいおい、子供にキレんなよ。ごめんな椛?ちょっと冗談言ってしまった」


「もーおとーさん!」


 プリプリと怒る椛の頭を撫でてやると怒りはどこへやら直ぐにはにかんだ笑顔になる。


「ごめんね、えっと…」


「はぁ…文よ射命丸文」


「文おねーちゃんだね!私はいぬばしりもみじです!」


「そう。あんたこの子娘って言っていたけどどうしたの?」


「口調はどうした?記者ならそっちじゃないだろ?」


 俺のツッコミにハッとした表情になって数回咳払いすると記者の口調になった。


「それでどうしたんですか?」


「すぐに変わったな、昔のお前を知っているほど信じられん。ま、いいか。ほれ、お前がボロボロになったときあっただろう?あの時に孤児としていた白狼天狗の椛を引き取ったんだよ」


「なるほどー」


 なにやら紙と筆を取り出して書いていく文。記事にでもするのかな?


「それで、真理さん達はこの後どうするんですか?」


「このまま山を登っていくつもりだ」


「………悪い事言わないのでやめたほうがいいですよ?」


 むっ、文の顔が若干いやそうな感じになっているな。


「この先は完全に天狗の縄張りですので絶対絡まれますよ?天狗は面子を気にするので勝手に入ってくる妖怪は問答無用で排除にきますし」


「いつものことじゃないか」


「いつも騒いでいたのは真理さんがきていたからですか……」


 疲れたような顔をする文。ああ、うん、ごめんよ?でも、直す気はないから諦めてくれ。


「まぁ、こいつの両親の墓参りでもしようとね」


「あう……」


 墓参りという単語に若干暗くなる椛だが行かないわけにもいかないし、な。


「そうですか、では私はこれでー」


 そういうと文はそんな速度だす必要ないだろうというぐらいのスピードで飛んでいってしまった。


「文おねーちゃん早いね!」


「そうだなー」


 文の速度をみてうちの椛が目をキラキラさせているが変な影響を与えないか心配だ。










「待っとったわ~真理さん~」


 椛の両親への墓参りを済ませた後、天狗の本拠地へ乗り込んで文句言ってくる馬鹿共を沈めつつたどり着くは麻耶の家。


 尋ねた瞬間にはんなりとした言葉と共に麻耶が飛びついてきたのでそっと避ける。


「ああんもう、真理さんのい・け・ず!キャン☆」


「いいかー椛?あれが残念な人と言うんだ」


「はーい」


「ひどいわ~」


 よよよと泣きまねする残念な麻耶を指差しながら椛に教えると元気に返事する。いわれた麻耶はあまり気にしてないのかわりとあっさりと立ち直った。


「それにしても、あの天狗たちはなんとかならんのか?いつもいつも、絡まれてちゃめんどくさい」


「そうかな?ばーんってやってどっかーんってやっているおとーさんカッコイイ!」


「そうか?だったら、あのままでいいや」


「意見変えすぎですよ真理さん」


 あっさりと自分が言った事を覆したら後ろから声が聞こえたので振り向くと盆に茶を乗せた玲央が若干呆れ混じりよってきた。


「ほんまやね~。あの真理さんがこんなに親馬鹿になるとは思わんかったわ~」


 麻耶の意見に玲央も賛成なのかうんうんと頷いているが、一番驚いているのは俺だからな?


 正直誰かに肩入れしすぎる自分ってのは思いつかなかったんだけど、蓋を開けてみたら椛を可愛がっている自分がいたさ。


「ま、そんなことより真理さんがくると玲央はんが予想してたから今日は宴会や~」


『待てやコラ!』


 麻耶が宴会だと一旦瞬間に襖が開け放たれ現れるは幹部の天狗たち。


「天魔さま!また仕事をサボりましたね!」


「今日と言う今日は絶対に仕事を終わらせてもらいます!」


「さぁ!行きますよ!」


「あっ、ちょっとどこ触ってるんや!真理さんがきとるのに仕事なんかできるわけないやろ~」


「黙れ!きりきり働いて終わらせてから参加してください!」


「あ、ちょっと……た、助けて~」


 妙にエコーを残しながら麻耶は天狗たちに連れ去られていってしまった。


「「「………」」」


 取り残された俺達はなんというか…うん、言葉を失ったね。


 てか、最後の奴なんて敬語じゃなくて普通に黙れ言っているし。あいつどんだけサボり癖あるんだ?


「まぁ、なんだ?酒を残すのは勿体無いから飲むか」


「そうですね」


「おいしそー」


 そんでもって麻耶を放置しつつ俺達は宴会を開始し、麻耶が戻ってきたのは椛が寝てから結局明け方のことであった。

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