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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
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あいさつ回り―妖怪の山2

「う~む、こうして歩き回ってみても結構知らない場所多いな」


「そーなの?」


 ふと思い返してみても俺ってこの山自体にきても玲央と戦うか酒飲んでいるだけだったような気がする。


 椛も俺があまり知らなかったことに若干驚きながらコテンと首をかしげる感じである。


 元々は誰も住みつかない豊かな山を玲央が気に入り住み着いただけであったからなぁ。


「ん?」


「あ」


 歩いているとなにやら家が見えてきたのでそちらに向かっているとなにやらその場でくるくると回っている少女がいた。


「あら、何か用かしら?」


「うんにゃ、しいて言うなら散歩かね」


「だよー」


 回りながらも此方の接近に気づいた少女はこちらに話しかけてくる。…目は回らないのだろうか?


「おねーちゃん、目回らないの?」


「慣れているから大丈夫よ」


 慣れるほど回っているのか。いやしかし、何故そこまで回るんだ?趣味か?


「貴方がここ最近来た妖怪ね」


「ああ、風由真理だ」


「厄神の鍵山雛よ」


「へぇ」


 神力を感じてはいたがまさか厄神とは。


「聞いていた通り変わった妖怪ね」


「知ってるのか?」


「この山に住んでいるもので貴方を知らないほうが少ないわよ?」


 でもにとりは知らなかったが…まぁ、まだ幼かったから知らないといえば知らないか。


「まがりなりにも神相手に萎縮しない妖怪なんて少ないわよ」


「だろうな。しかし残念。俺は神様の知人もいるもんで萎縮はしないんだ」


「おとーさんって誰かに萎縮するの?」


 ん?椛それはどういう意味かな?お父さんでも萎縮する相手はいる…いるよな?自分で考えて浮かんでこなかった。


「おとーさん、疫病神ってどんな神様?」


「疫病神じゃなくて厄神な?間違えちゃ失礼だぞ?」


 疫病神といわれ鍵山雛の顔が若干歪んだが子供ゆえにしかたないと言った感じでそのままスルーした。


「どう違うの?」


「厄神は厄を回収してくれて疫病神は厄を振りまく存在だ」


「大雑把過ぎるけどそうね」


「名前から考えてお前さんは流し雛か何かか?」


「ええ、私は病から村を救って欲しいという願いから生まれたわ」


 ふ~む、こういった神は基本的に友好的で助かる。


「そういう貴方はあまり厄がないわね」


「そうかい?まぁ、あろうがなかろうが人生だ大いに結構」


「本当に面白い考えをもつ妖怪ね」


「そういうお前も面白い神様さ」


 二人して笑いあう。本来は相成れぬ存在なのにお互い笑っているからだ。


「しかし、回っている理由はなんだい?」


「簡単よ。私は人々から少し厄を回収するの…私の能力【厄をため込む程度の能力】を使ってね」


「おあつらえ向きの能力だなぁ」


 俺なんて種族関係ない能力だし。


「ええ、けどね厄というのは一箇所に留めておくほうが危ないからだから回収している時は回っているのよ」


 なるほどね、回ることにより流動的にして留めていない形にしていると言う訳か。


「あとは別の神に渡して終わりよ」


「ふむ、基本的に俺は信仰などしない妖怪だけどお前ならしてもいいと思うよ」


 いやマジで。こういった神様なら大歓迎だ。


「別に必要ないわよ」


 だろうね。神様なのにこんな場所に住んでいるし。


「えっと、おねーちゃんはいい人なの?」


 この場合は神様ということだろうな。


「そうね…神に善悪は存在しないけど、それでも貴女が望むならそうだと思うわ」


「そっかー」


 ううむ、こいつは出来るな。普通の神ならイラッとする態度を取るのにこいつは自分と言う存在をきちんとわかってらっしゃる。


「おーい、雛いる?」


「あら」


 家に案内されてお茶をご馳走になっていると入り口からなにやら赤い服を着た少女が入ってきた。


「うげっ、なんで妖怪がいるの?」


「なんでかしらね?」


「いやいや、あんたの家でしょうが」


「だめよ穣子ちゃん、そんな乱暴な喋り方しちゃ」


 なにやら最初に入ってきた少女にそっくりな少女が最初の少女の喋り方に注意をしだした。


 てか、また神か。


「俺は風由真理。最近この幻想郷にやってきてこの山の麓に住みだした犬妖怪さ」


「いぬばしりもみじです」


 とりあえず敬意を表すように自己紹介をする。


「えっと、私は秋静葉といいます」


 ペコリとお辞儀する少女の名前は秋静葉。頭に紅葉の髪飾りをつけていてなんとなく似合っているな。


「ほら、穣子ちゃんも」


「なんで…」


「穣子ちゃん?」


「はいぃぃぃぃっ!」


 なんだ?静葉と名乗った少女から突如凄みが増し穣子と呼ばれる少女が萎縮し直立不動で返事をした。


「秋穣子よ…」


「ご丁寧にどうも」


 いやいやと言った感じで自己紹介をしてくれた穣子を微笑ましく思いながら再び茶をすする。


「雛はなんで妖怪を家に上げているのよ」


「そうね、彼が最近この山の噂で持ちきりの妖怪だからかしら?」


「ふ~ん……って、彼!?」


 俺が男だとしって大いに驚く穣子。雛も最初は分からなかったようで驚いていたが、穣子の反応をみて若干恥ずかしがっている。


「はぁ……綺麗ですねぇ」


「言われなれているよ」


「ムカッ!あんたそれ嫌味?」


「いや、事実だけだぞ。何万年も言われればそう答えざるえないだろう?」


「何万!?」


 ううむ、やはり実年齢を知られると性別並みに驚かれるな。神ならば俺より先に生まれた奴なぞ五万といるだろうに。


「………妖怪ってそんなに長生きするものかしら?」


「大らかにかつ細かいこと気にしなければ生きていけるさ……ああ、俺より大先輩は健康に気をつければいけるって言っていたな」


 まぁ、先輩というか神話の妖怪と言うか……まあ、実際気を使って生きてきたんだから事実だろうな。


「凄いんですねぇ」


「凄くなんかないさ。凄かったら今頃この山を俺がしめているだろうさ」


 そんな気サラサラないが。


「それで、その噂の妖怪はなんで雛のところにきたの?」


「散歩していたらなにやらくるくる回っている少女をみつけてそれで話していたらお茶に誘われたわけさ」


「どんなわけよ…」


 ふむ、それにしてもさっきから気になっていたんだが…


「おねーちゃん、いい匂いがするね」


「私?」


「うん!」


 そう、穣子からはなにやら食欲をそそるようなそんな感じの匂いがするのだ。


「それはね、穣子ちゃんが豊穣の神だからよ」


 今までニコニコと話を聞いていた静葉が椛に説明をする。


「ほーじょーの神?」


「へぇ、八百万の神か…どうりで」


 神力の大きさ的に祟り神などとは違った感じがしたが八百万の神なら納得がいくな。


「そうするとお前らは二人で一つの神と言うことか?」


「いえ、私は紅葉の神で【紅葉を司る程度の能力】という能力で葉を秋色に染め上げています」


「季節の神か」


 ううむ、八百万の精神で言えば間違いないのだろうがなんというかこう…地味だな。


「今の季節は私達の季節!何人足りとも邪魔はさせないわ!」


「お、おおう」


「気にしなくてもいいわよ。彼女達は名前の通り秋が最上になっているから。逆に冬になると鬱状態になるけどね」


 行き成りのテンションで押された俺だが、雛の説明に納得がいく。まさか、季節の神様はそのまま季節に調子を左右されるとか。


「今の私達に敵は無し!あんたも嘗めた真似したら消しちゃうわよ」


「み、穣子ちゃん。あまり乱暴な言葉を使っちゃダメよ」


 ううむ、姉妹に関しても真逆だな。まぁ、それぞれが補い合うという形では十分なのかね?


「まぁ、意気込みは買うがお前は麻耶…天魔に勝てるのか?」


「天魔って天狗の長の?流石に無理よ」


「じゃあ、やめとけ。力をひけからすつもりは毛頭ないが、俺の実力はあいつと同じだぞ?」


 いやぁ、いるもんだよな自分と同等または上のやつって。


「はぁ?その程度の力で言っているの?」


 胡散臭いものを見る目つきでこちらを窺う穣子。周りを見てみれば雛や姉の静葉も似たような表情だ。


「普段は力を封印しているんだよ。俺は基本的に人間には友好的だけど本来の力はでかすぎて逃げられるし」


 ちょっと勘がいいやつなんて速攻で倒れるくらいらしい。


「本当に?嘘ついたら承知しないわよ」


「嘘は嫌いだ。しょうがない…5尾解放」


『!?』


 おお、驚いてら。てか、ウチの娘はさっきから静かだと思ったら寝ていらっしゃる。この状況の中で寝られるとは将来は大物になるか?


 それとも鈍いだけかな?このくらいの妖気にはある程度敏感になってほしいものだ。


「こんなもんだよ。もちろん全力ではないがな」


 そういって再び尻尾を封印する。普段生活するのに力なんて不要だし。…ここら辺は玲央はわかんないとか言っていたな。


「はぁ…マジで凄いのねあんた」


「伊達に長生きしていないさ」


 その後、椛が起きたのを気に雛たちに別れを告げて再び山の探索へと戻っていった。

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