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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
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あいさつ回り―人里

かなり遅れた情報となりますが空椿様の東方藍蓮花にてクロスさせていただきました


東方藍蓮花にて真理が出張して空椿様が描く私とはまた違った真理をお楽しみできると思いますのでよろしければどうぞ

「椛出かけるがどうする?」


「いっしょにいくー」


「あとりは?」


「待ってる」


 椛は相変わらず俺の後ろをついてくるし、あとりはあとりであまり家を出たがらないな。


「座敷童子は家からあまり出ない」


 流れだったくせによく言う。家のことをあとりに任せて、椛と一緒に家を出て人里を目指す。


「おとーさん、ここって人間が一杯住んでいるところだよね?」


「そうだが?」


「大丈夫なの?」


 ほんとに頭のいい子だ。頭を撫でてやるとくすぐったいのか目を細めてそれを受け入れている椛を眺めつつこの幻想郷という特殊な場所を思いやる。


 紫の話だと村で暴れないことを条件に妖怪でも人里に訪れていいとか。ただ、利用しているのは玉藻こと藍だけだそうだけど。


 まぁ、慧音に会うついでにどんなものか見てみるのも一興だと思い椛を連れたち目の前に見える門へと向かう。






「止まれ」


「ほい」


「あい」


 う~む、椛は所々で言葉が幼いな。


「この人里に何用だ」


 人里に近づいて行くと大きな門(?)が見えそこに門番らしきものが俺に問いかけてくる。幼子を連れた女だと思って油断しているのかねぇ?


 正直見た目に関して言えば諦めたが…


 それに、門番の男からあふれ出す霊力を見るとそこそこの力を持っているようだ。一尾の状態の俺と戦える程度から考えるにある程度の実力者を配置するだけの人材はあるようだな。


「答えよ」


 おっと、色々と観察しているとせっつかれてしまった。黙っている理由もないしさっさと答えますか。


「ここにいる慧音に会いにきたんだよ」


「慧音先生だと?本当か?」


 ん?先生?あいつ人里でなにかやってんのか?


「嘘は嫌いなんでね」


「妖怪がそんなことを言って信じられると思うか?」


「ごもっとも」


 いや、本当に。妖怪はこ狡賢いやつが多く嘘をつく奴が多いからなぁ。妖怪の山の連中はあまりつかないようだが、それは玲央がいたときに徹底的に潰したようだ。


 あいつ、嘘大ッ嫌いだからなぁ。冗談は冗談と受け取るが嘘は許さないやつだし。


「ふむ、どうやら嘘ではないようだな。いいだろう、通してやる」


「すまんね」


「ただし!何かあれば俺が向かうし慧音先生の実力も相当なものだ覚悟しておけ」


「娘がいるし、早々問題は起こさんよ。ではな」


「ばいばーい」


 門番に後ろでに手を振ると椛は振り返り手を振っていた。なんか門番の奴が戸惑っているがどうでもいいか。








「さてと、慧音はどこにいるかねっと」


「けーね?」


「そ、お父さんの友達?だよ」


「そこで、疑問つけるんだ」


 しゃあない。あいつと出会った後に妹紅を任せてそのまま分かれてしまったからな。


「おとーさん、あれ」


「ん?」


 椛に裾を引かれて指先を見てみれば茶屋を指していた。


「おいしそうだよ?」


「ああ、そうだな」


「ふぇ」


 涙目になる椛。なんだ?言いたいことははっきりといいなさい。


「食べたい」


「お昼食ったばかりだろ?」


「食べたい」


「太るぞ?」


「太らないもん」


 涙目から一転、頬を膨らませて拗ねる椛の頬を潰しながら茶屋へと向かう。


「いいかい?」


「へい、らっしゃいっ!?」


 いや、らっしゃいって魚屋かなんかか?それに、振り向きながらいったもんだから俺が妖怪と認識するのが送れて最後の語尾がかなり上がったぞ。


「ああ、暴れんから気にすんなって言っても安心できんな。まぁ、あれだ。藍の知り合いだから安心しろ」


「あの八雲様の?」


 この茶屋にあいつの匂いが残っていることから人里に来たらここで少し休憩しているんだろうな。


「ああ、なんだったらあいつのツケで頼む」


「…わかりやしあ。お客はお客でさ」


 ほう、いい根性だ。先ほどまで怯えた目で見ていたのに客と認めると直ぐに店員の顔となった。


「んじゃ、オススメはなんだい?いかんせん最近ここに来たばかりだし、人里は初めてだからな」


「うちのオススメはワラビ餅でさ。後は三色団子に甘いのが嫌いならばみたらしやずんだもオススメでさ」


「ほう、ワラビ餅があるのか。では、俺はワラビ餅に茶をこの子には甘い三色と茶を頼む」


「へい、お待ちを」


 軒先で注文しそのまま外の椅子にかけると、椛も行儀良く座るが楽しみなのかうずうずと体を揺らしている。


「お待ちどうさま」


「すまんな、ほら椛」


「わーい」


 椛に三色団子が乗った皿を渡し、俺も皿を受け取り一つを楊枝でつまんで口に含む。


「上手いな」


「ありがとうございます」


「おいしー!」


「はは、ありがとうな嬢ちゃん」


 これは藍がはまるのも分かるような気がするな。元々甘いものは嫌いではないが場所によると外れも多くあるからついつい酒に走ってしまうがここはまさしくあたりだ。


「おとーさんの美味しそう」


「食うか?」


「わーい!」


 一つつまんで椛のほうへと持って行くと嬉しそうにかぶりつく。


「けほっ」


「がっつくからだ」


 口元の黄な粉をぬぐってやりながら椛を窘めつつ背中を叩いてやる。ワラビ餅はこれがあるから子供には若干むかないんだよな。


 まぁ、それでも上手いが。


「でも、美味しい」


「そか。だが、もう少し綺麗に食えないなら当分は俺から少しやるくらいだな」


「うぅ…」


 まぁ、女としてのマナーなんかはあとりが教えるだろう。俺は知らん。いざとなったら玲央あたりに相談するか?あいつのぶっ飛んだ性格抜けばそこそこに躾等はできているからな。


「ごちそうさま」


「ごちそーさま!おいしかったよ!」


「ありがとうございました」


 店主に礼を言って店を後にする。








「さてと、どうするかね?」


「どこにいるか知らないの?」


「ああ」


「無計画だね」


「それが俺だ」


 旅をするに当たっていちいち細かいことまで決めてするのはつまらん。旅ってのは過程も楽しむものだしな。


「もし、少しいいか?」


「はい?はいっ!?」


 たまたま通りがかった人に声をかければ怖がられてしまったが気にせず用件だけ言おう。


「慧音はどこにいるか知っているか?」


「け、慧音先生ですか?い、今は寺小屋も終わっているので、稗田様のお屋敷にいらっしゃるかと」


「ありがとうな」


 礼を告げてから再び歩き出す。あいつ、寺小屋なんてやっているのか。父親に似たのか?あの父親は正しい歴史を集めてからそれを人に教えたいとか言っていたからな。


「さてと、お屋敷というとそれなりにでかいだろうから探してみるか」


「おとーさん、あっちのあれじゃないかな?」


 椛が指差した場所を見てみれば確かに立派な屋敷が鎮座していたので間違いないだろう。


「おし、いくか」


「あーい」


 椛と一緒に歩きながら思い返した。確か、稗田といえば稗田阿礼がいたな。その子孫かなんかかな?


 はるか昔に出会った記憶があったはずだが、そのころは確か獣化状態だったからきちんと話すのは初めてだな。















~おまけ~


「大体こんなもんだろ」


 藍は家での家事のための食事を人里までやってきて買いに来ていた。


「はぁ、紫様の怠け癖もなんとかならんのか」


 溜め息とともに思い出す。式になると決めてから改めて家を案内されたときの惨状を。


 寝かされていた部屋は紫の部屋でそれは大きく自分が玉藻として過ごしていた部屋に負けず劣らずであった。


 家自体も大きく沢山部屋があり豪華なつくりだったが…


 あろうことか、そのほとんどはゴミ屋敷かと思ったほどであった。


 自分が寝る場所は綺麗になっているのに、他の場所は汚いのだ。それは、生活を拒否するぐらい。


 初めての式の仕事はまさかの家の大掃除だとは露にも思っていなかった藍は唖然としたのであった。


 兎に角掃除を終えて漸く一息つけると思えば主は腹が減ったと抜かしたのだ。このときほど殺してやろうかと思ったことは無いほどに。


 しかもだ。今まで男を騙して悠々と暮らしていた藍にとって食事なぞ作ったことなかったからそこからは試行錯誤だった。


 まずいといわれ改良ししょっぱいと言われ薄くすれば薄いと文句を言われ、イライラした日を過ごした。


 最近は漸く文句は言わなくなったが未だにぶん殴ってやろうと思っているのは別に構わないだろう。


 しかし、藍にとって人里に来れば癒しがある。それが、茶屋である。


「すまん、ワラビ餅をもらえるか?」


「はい、お待ちを」


 あまりのストレスに自慢の九尾に円形脱毛症が出来た時は人知れず枕を濡らしたものだ。


 逃げ出そうと考えたそんな折に見つけたこの茶屋は藍にとって憩いであると同時に救いであったのだ。


 主が遅いとか文句を言おうがここで大好きなワラビ餅を食べればニコニコとやり過ごせる自信があるほどのお気に入りのお店なのである。


「うむ、いつも通り上手かった。また来たら頼む」


 そう言って代金を置いて帰ろうとしたら店主から待ったがかけられた。


 もしかしたら常連となっていつも来ているから何かしらの土産でもくれるかと期待をもちつつ店主の話を聞けば。


「実は先日いらした真理殿?と言う方が召し上がれたのですが、そのときの代金が八雲様につけられておいでで払ってもらえますか?」


「……」


 一瞬何を言われたか理解できなかった藍だが直ぐに理解し


「あの駄犬がぁぁぁぁぁっ!!」


「ひぃっ!?」


 九尾を逆立たせて怒りをあらわにする藍に慧音が呼び出されたのはほんの数瞬のうちであった。

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