あいさつ回り―蓬莱人
「あむあむ」
いまだ昼食を取っている椛を見ながら今日の予定を考える。とりあえずは落ち着きを取り戻した幻想郷だけどどうすっかなぁ?
紫に知り合いいるならばあいさつ回りにでもいけば?って言われているしそれもいいんだが知り合いが結構いるからどこに行けばいいのか迷う
まぁ、紫曰く知っていて知らん振りしている連中もいるらしくて、好きにすればと言われてもいるしそいつらを見に行くって意味でも妹紅に会いに行くかな
「うっし、決めた」
「ふぁ?」
俺の声に一体なんだという表情をしながら口をパンパンにしてこっちをみる椛
「ご飯食べたら出かけるぞー」
「(ごっきゅん)何処に?」
「俺の知り合いに会いにな」
「はーい」
再びマイペースに食べだす椛、うむ俺の娘だというの実感する
普通なら出かけると言う話を聞けば急いだりするものだが己のペースを崩さないとは将来大物になるか?
「さ、行くぞ」
「何処行くの?」
「確か…迷いの竹林だったか?」
なんでも、単調な風景と深い霧、地面の僅かな傾斜で斜めに成長している竹等によって方向感覚を狂わされるという。また、竹の成長が著しい為すぐに景色が変わり、目印となる物も少ないので、一度入ると余程の強運でない限り抜け出せないらしい
「それじゃ、私達も迷っちゃうの?」
「飛んでれば問題ないってさ」
そのまま入ってしまえば迷うらしいが、飛んでれば単調な場所でも上から見下ろしているから大丈夫のようだ
椛はまだ10くらいだが流石は天狗で空を飛ぶのもお手のもだ…俺は卑弥呼に会うまで飛んだことなかったけど
恐らくは最初から習えば飛べたんだろうけど、必要が無かったからなぁ。旅をしていた頃も飛んで移動するって事はなかったことだし
「といっても、歩いて行くけどな」
「えー」
不満顔の椛だが頭を撫でて歩き出すと慌ててトコトコと後を追ってきた
「さてと」
「あ、おとーさんが犬になった」
「元々犬だって」
「そうだっけ?」
竹林の入り口に差し迫った時に元に戻ると椛がちょっとびっくりしていた
俺自身も久々に獣化したしなぁ、やっぱりこっちの姿のほうが力を使わない分楽だ…まぁ、生活するのは断然人化した姿だけど
「どうして犬になったの?」
「ん?この姿なら迷わないかなって」
「それだけ?」
「そ、それだけ」
嗅覚とかこっちの姿のほうが優れているし、聴覚初めとした五感とかもこっちのほうが優れている
「んじゃ、行くぞ」
「はーい」
そういって、俺にまたがる椛…って待てい
「歩きなさい」
「えー」
乗っている椛が不満の声を上げるがそんなの知らん
「いいか、椛?基本的に歩くってことはとても重要なんだ。旅をするにもどこかに出かけるにもな。だから歩きなさい」
別に重いわけじゃないけど、ここで楽を覚えさせるというのも違うだろうしな
「…はーい」
やや不貞腐れながらも素直に従う椛の頬を嘗めてから歩き出した
「ううむ、確かにこりゃ迷うな」
「ここどこー?」
行けども行けども全く同じ景色にどこにいるかわかんなくなってしまう
「あ、椛とまれ」
「え?」
俺の言葉に急停止する椛
「そこに何故かは知らないが落とし穴あるからな」
そう言って前足で叩くと見事穴が出来たが結構深いな
「ほんとだ」
「誰だこんな所に落とし穴なんて」
悪戯にしては意味がないような気がするけど
「まぁ、いっか進むぞ」
「あーい」
さっきから能力が自動発動しているから何かしらの悪意があるのか?…元々常時発動するタイプの能力だがさっきから何かを感じまくる
「うぎぎ、また失敗ウサ。なんなんウサ?あの犬っ子ろは」
竹林にて真理たちにばれない程度に尾行している一匹の妖怪がいた。頭には白く長い耳を持ち腰には丸い尻尾、ピンク色の服を着ている一見すると幼い少女である
「兎に角後を追うウサ。このままじゃ師匠の所に行っちゃうウサ」
とことこと走りながらこの少女は真理たちの後を追うのであった
「ん?」
「どーしたの?」
「いや、誰かに後をつけられているみたいだが、結構距離があるのか見つけられん」
匂いもこの霧のせいでかなり薄くなってしまっているし気配しかしないんだが
「そこにも落とし穴があるから気をつけろ。あと横にそれるなよ?宙吊りにする罠もあるようだ」
「もーやだー!」
確かにここら辺から何故かは知らんが罠が多くなってきているな
「てか、妹紅は何処だ?」
「もこ?」
「もこうな?なんていうかこう、俺の旅仲間だ」
それとも知人の娘?説明がなんかややこしいな本当に
「ん?なにか音が聞こえるな」
「どっちー?」
「ん?向こうの方角さ」
顔で椛に顎で方向を示してやると椛は目を細めながらジーとその方向をみやる
「何も聞こえないよ?でも、何か色々な色が見える」
どうやら聴覚は惑わされていないようで確かに何かがぶつかり合う音が聞こえるな
てか、椛は見えるのか?音は聞こえるが何も見えないんだがな俺は
「まぁいっか、行くぞ」
「は~い」
俺が先に歩いて椛を後を追わせる、こうすれば罠にかかることも無いだろ…その前にやることがありそうだが
「ちっ、なんなんウサ本当に。どんな小さい罠も見つけるウサ」
「そうかそうか」
「あいつは、やばいウサ」
「そうか?これでも友好的な奴だと思っているんだが」
「何処がウサ。私の罠をあんなにかん…たん…に…」
漸く誰かと話していると分かったのか次第に声はしぼんでいき、ばっと後ろを振り向く兎少女
「よ」
片手を上げながら挨拶したがビックリしたのかかなり後ずさって行くが
「おい、危ないぞ」
「竹の配置ぐらいわかるウサ」
「いう、そうじゃなくてな」
「ふふん、私を見つけたのは褒めてやるウサ、だけど…ぎゃー」
「だから言わんこっちゃ無い」
自分の罠にまさかはまるとはな、策士策におぼれるとはよく言ったもんだ
「ほれ、大丈夫か?」
「いつつ…なんで、助けるウサ?」
「ほら、兎鍋って結構美味いだろ?」
手を貸しながら兎少女を助けると何故と聞いてきたので教えてやったら顔を真っ青にする
「た、食べても美味しくないウサ!」
「大丈夫だって、自分の味なんて誰にもわからんって」
「う、ウサーーーーッ!?」
竹林に一人の少女の声が木霊した
「あれ?おとーさん元に戻っちゃったの?」
「こっちが、変わっている姿なんだがな」
「た、助けてウサ」
元の場所に戻ると椛が俺が人化している姿を見て何でと小首をかしげていた
「所で、その人は?」
「今日の夕飯」
「えー」
両手、両足を竹に縛り付けられた兎少女を見て質問してきた椛に結論だけ答えるとなんか不満顔をされた
「そ、そうウサ!私は美味しくないウサ!それに、年取りすぎてきっと骨だけウサ!味も落ちているウサ!!」
その様子をみて少女は必死になっていいわけを開始するが、うちの椛がそんな程度で止まるとは思わんが
「それだけで、足りるの?あとりおねーちゃんもおとーさんも沢山食べるよね?」
「ウサーッ!?」
ああ、やっぱり。俺は元々酒飲みだからな、つまみがあったほうがいいという理由でかなり食べるしあとりもあとりであのちっこい体の癖にかなり食うからな
「まっ、諦めろ。妖怪諦めが肝心だしな」
「それを言うなら人間ウサ!」
ご丁寧なツッコミどうも
「お、音が大きくなってきた」
「私にも聞こえるよー」
「だ、誰か」
さらに深く進んでいたら先ほど聞こえた音が聞こえてきたのでそろそろだと思うが
「もふもふ」
兎少女を捕獲してからというものちっこい兎妖怪達が俺を攻撃しているんだが、まったく痛くないので放置している
椛いたっては一匹捕獲してもふっているしな
「お、見えてきた」
そんなことを思いながら進んでいたら音の正体が見えてきた
「かぁぁぁぁぁぐやぁぁぁぁぁっ!」
「もこぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
音の正体はどちらも知っている奴等であった
「てか、何やってんだあいつら?」
どちらも当たればただではすまない威力の弾幕をお互い放っているもんだから回りの被害は甚大だ
まぁ、話まんまならそのうち勝手に生えてくるからいいのかな
それに色々な色ってのは恐らく妹紅が放っている炎の弾幕と輝夜の虹色の弾幕のことだろう
「ひ、姫さまを知っているウサ?」
「あん?姫さまってどっちだ?」
恐らくは輝夜のほうだけど。妹紅もああ見えて貴族の娘だしな
「あら?あなたは…」
色々と考えていたら昔に見た青と赤が半々の服を着た女性が此方にやってきた
「ああ、あんたはえっと…」
なんだったかなぁ?輝夜を逃がす時にあったきりだったから名前が出てこない
「まあしょうがないわね。あの時ちょっと喋っただけだし。永琳、八意永琳よ」
「おお、そうだった。永琳だ。懐かしいな」
「そうね、あの時はあなたのおかげで簡単に逃げられたわありがとう」
そういって、丁寧にお辞儀をする永琳にかまわんと継げて頭を上げさせる
「それで、あなたはなんでそんなのに括られているのかしら?てゐ」
「し、師匠助けて…」
か細い声で永琳に助けを求める兎少女あらためてゐ
「師匠?」
「ええ、なんでもこの竹林に元々住んでいたのは私達だっていうからちょっと交換条件を出して一緒に住んでいるのよ
まぁ、条件っていうのは教養を授けるってことなんでけどね」
「へ~、まぁ馬鹿な奴も多いだろうからいいんじゃないか?」
恐らくは先生と同義みたいなもんだろ
「まぁ、知り合いなら放してやるか」
そういって、肩に担いだ竹を下ろして縄を解いてやる
「うぅ…酷い目にあったウサ」
「自業自得だな」
「ああ、なるほどね」
どうやら俺の言葉に思い当たる節があったのか納得する永琳
「それで、貴女は何しにきたのかしら?私達がここにいるって知らなかったみたいだけど」
「一つはあそこでばかやっている奴に会いにきたんだよ」
指差す先にはダメージ食らってもなお相手を殺さんとばかりに弾幕を放ちまくる妹紅
「もう一つは紫が知らん振りしている奴等がいるって聞いて見にきたんだがどうやらお前達みたいだな」
「なるほどね」
俺の説明を聞いて納得する永琳
「あと、昔に言わなかったか?俺は男だ」
「そうだったかしら?」
とぼける永琳。どうやら故意で言っていたようだな
「師匠誰ウサ?」
「前に姫さまを助けてくれた恩人よ」
てゐが復活したので挨拶してやるか
「俺の名前は真理、風由真理だ」
「因幡てゐウサ」
「あら?あなたって苗字あったかしら?」
「ここ最近作ったからなぁ」
500年くらい前だったか?そんなもんだし、輝夜たちとあったときにはまだ無かったのだけは覚えている
「てか、因幡とな?」
「そうウサが?」
因幡と言われて思いつくのは一つしかないな
「あの因幡の素兎?」
「そうウサよ」
わーお、因幡の素兎といえば神話に出てくるやつじゃないか。後に御伽噺になったが、そんな奴が生きていたと言うのか
「てか、そうすると大先輩じゃん。よく生きられたな」
「健康に気を使っていれば大丈夫だったウサ」
健康すげぇ。俺より年上の妖怪にあったのは母親以来はじめてだわ
「そうね、凄いわね」
「いや、蓬莱人のあんたと比べるなよ」
「あら、よく分かったわね」
「気配が人のそれと違うからな」
「そんなに違うものかしら?」
永琳や輝夜、妹紅には共通として人の気配なのにそれじゃないと感じる気配を持つ
具体的にと聞かれても気配としか答えられないが、不老不死の蓬莱人とただの人が持つ気配は違うとはっきり分かる
「おとーさん、いい加減飽きた」
ずっと輝夜対妹紅の弾幕戦を見ていた椛が俺の袖を引っ張りそんなことを言ってきた
「確かにさっきから被弾しては復活しての繰り返しだな」
「まぁ、何年もやっていればそうね」
これをずっと続けているのか。まぁ、死なんしいいか
「さてと、止めてくるわ。話もしたいからな。5尾解放」
「がんばってね」
永琳の声を聞きながら二人が近づいた瞬間を狙い一気に跳んだ
「え?」
「へ?」
「お前等」
突如表れた俺に驚きを隠せない二人を気にも留めずに両足を振り上げる
「いい加減にしろ」
そして、斧のように振り下ろして二人の頭に打ち込んだ
突如表れた俺に気を取られて満足に防御できずに二人はそのまま地上に落ちて行ってそのまま頭ごと地面に埋まって行った
「やりすぎたかな?」
「大丈夫でしょ、そのうち目を覚ますわ」
1尾に戻しながらそんなことを言う俺に永琳がフォローに入る
「そうか」
「ええ、それじゃ私達の家永遠亭に案内するわね」
「悪いな」
「構わないわ」
永琳の案内の元二人引きずりながら永遠亭とやらに向かって行った




