現在の幻想郷
「それで、結局今はどんな状況なんだ?」
「ほっこり」
「うぅ…」
昼食をとり終えて一服しながら紫に問いかける
俺の脚の上にはほっこりした椛が満足げに座っており、玉藻がなにやら落ち込んでいる
「そうね、現状で変わったことといえば、鬼が地底に行って前にあった陰陽師連中の集落が人里に変わったことかしら」
「それだ、鬼が地底に行ったってのはどういうことなんだ?」
今度は隣に座っている玲央に問いかける
「それはですね、ここ近年の人がとてもつまらなく許せなくなってしまったからですね」
全く意味が分からん
「昔は私達相手に正面から挑んでいた人間でしたが段々と狡賢くなりまして、罠やらなんやらを多用することが増えてきたんです」
ああ、鬼って良くも悪くも真っ直ぐだからそりゃ豪快に引っかかるだろうな
「お前とかなら正面から破ってこそなんぼだと思うが?」
「ええ、私自身は自分の力を自覚してますしそういった戦法を否定するつもりもありませんが…
どうやら子供達はそれがとてもいやなようでして」
ああ、玲央の意見じゃなくて子供達の総意なのか
「なので、仕方なく山を降りることにしたんですが」
「ただ、山を下りられたらたまったものじゃないから、私が提案したのよ」
「人に見切りをつける子達がほどんどでしたから丁度いいと思いまして」
「しかし、地底って地獄だろ?」
たしか、そうだと誰かに聞いたけど
「ええ、ただ最近は人がよく死んでしまうからか地底じゃ狭くなって場所を移したのよ」
地獄ってそう簡単に引越しできるのか?いや、実際しているからできるんだろうが
「それで、空っぽの地底だと色んな妖怪が暴れそうになるから地底の管理を鬼に頼んだのよ」
「なるほどな」
「私の場合は真理さんが帰ってきたら地底は子供達に任せて出てくることを了承させましたが」
「一番出てきて欲しくない人が出てくるなんて」
「何か言いました?」
「ひぃっ!?」
「あんまり虐めるなよ」
「はい」
玲央が殺気を紫に叩きつけて、青い顔をしているのをやんわりと注意すると素直に従ってくれてやめた
「はぁ…お願いだから鬼神が暴走しないように止めといてよね」
知らん。俺は別に玲央の保護者ではない
「そんで、人里だが?」
「ええ、真理が出て行って50年くらいでそうなったの」
「そんなに直ぐなのか?」
「というよりも、真理が出て行って直ぐに鬼達が地底に篭ったものだから陰陽師の連中も胸囲が去ったと思ったのでしょ
天狗とか他妖怪もいるけど一番の懸念は鬼だったわけだし」
確かに妖怪一人の戦闘力で考えても一番怖いのは鬼だな
「まぁ、他の妖怪がいても結構平和になったのか段々と人が集まってきたわ
元々ここら辺って資源が豊富で作物も育てやすい場所だし」
「あぁ、そういやそうだったな」
「私が来たのは人里が出来て100年くらい経ったくらいだそうだ」
今まで黙っていた慧音が言ってくるがそうか
「ん?お前がいるってことは妹紅もいるのか?」
「ああ。あまり人里に出てこなくて竹林のほうにいるがな」
懐かしいなぁ、元気にしてっかな?蓬莱人だから病気でくたばるような奴ではないか
「そうか。それで、そこの紅白巫女はなんなんだ?ぶっちゃけ今回のことに関係あるのか?」
「ええ、この子は博麗神社に住まう幻想郷の守護者って感じよ」
「神社?あったかそんなもの」
「ええ、と言っても引っ張ってきたのは真理が出て行った後だけど」
う~む、俺が出て行った後に結構変わったな。こういうことなら出て行かなければよかった
「どうも~」
眠たげな目で挨拶する紅白巫女
「所でその腋見せは?」
「これが、博麗神社の巫女の装束ですよ~」
腋見せがか?変わっているな
「祭っている神は?」
「さぁ?」
「いや、さぁってお前な」
「知らないものは知らないですよ」
いや、自分がいる神社なのになぜに知らんし
「実はかなり前になんだけど廃れた神社があったんだけど、だれもいつ何処で建てられたかを知らないのよ
しかも、いつの間にか巫女がいて神社を掃除しだしているって」
「亡霊かなんかじゃないのか?」
「死んでませんよ私」
いや、そんなの一目見りゃ一発だからそうだけどな
「妖怪の山と正反対の端に神社はあるわ。暇だったら後で向かってみれば?あんたって神社に行くにも萎縮しないでしょ?」
「ああ」
したことなんて全く無いな…知り合いの神様がああだからしかたないけど
「御賽銭お待ちしてます」
「生憎と根無し草でね金は無い」
「来るな」
おお、さっきとは全く違った冷たい態度だ
「あれ?あんたって外で暮らしていたから結構持っていると思ったけど」
「野犬のそれと変わらん生活だぞ?必要も無い」
つっても、持っていなくはないが賽銭するくらいなら一気に使い切ってしまおう
「そういや、幻想郷っていうとある程度の地盤は出来たのか?」
「ええ、両端に妖怪の山と博麗神社を持ってきてそれを私の能力で幻と実体の境界を張っているわ
…ただ、今回のはそれすら越えられてしまったけど」
まぁ、それは仕方ないだろう。ある程度の力を持っていたらそうもなるだろうし
「大体はこんな感じよ」
「なるほどな」
「すぅ…」
おっと、椛にはまだ難しかったのか寝てしまったようだ
「さてと、あと気になるのは…ああ、玉藻の名前が変わったことくらいか?」
「そういや、そうね。藍」
「はい」
紫に呼ばれて今まで紫の後ろに控えていた玉藻が前に出てきた
「ほら、昔私があなたを式にしようとしたことがあったでしょ?」
「…ああ、そんな事もあったな」
「あなたはそんな愚を犯そうとしたのですか?滅びたいですか?」
「玲央はんうちにも残しといて~な~」
「ひぃっ!?」
玲央だけではなく、麻耶にも殺気をぶち込まれ紫は青を通り越して紫に顔色を変える
「やめとけ、当時に痛い目みているからいいだろ」
「「は~い」」
「助かったわ」
冷や汗だらだらでお礼を言ってくる紫に手を上げてかまわんという旨を伝える
「そんで?」
「ええ、あんたが出て行って身寄りもないし提案したら受け入れてくれてね。それで、いつまでも名前が無いのもかわいそうだから上げたのよ」
「玉藻って名前じゃなかったのか!?」
てっきり名前とおもってずっと呼んでいたんだが
「あくまでそれは帝の前にいた時に必要となって使っていた偽名だ」
なるほどなぁ
「んじゃ、これからは藍と呼べばいいのか?」
「ああ、そうしてくれ」
「…私のときは八雲としか呼ばなかったくせに」
ぽつりと紫が愚痴を零すがお前は反応が楽しいから弄っただけだ
「んじゃ、そろそろ帰るか。日も落ちてきたしな」
「ええ、またいらっしゃい」
紫に別れを告げて各々家を後にする
「そういえば、妹紅には黙っていてくれ」
帰りの道のときに慧音に思い出したようにいう
「?どうしてだ?喜ぶと思うが?」
俺の意図が分からないのか首をかしげる慧音
「びっくりさせたいだけさ。竹林だったか?気が向いたときにいってみるから」
「悪い人だ。ただ、そうだな人づてより行き成り現れてくれたほうが喜びは大きいか」
「そういうお前もそこそこに悪いからな。そういうこった」
慧音と別れて自宅へと向かうと何故か玲央まで入ろうとしてきたが
「教育に悪いから自分の家か麻耶の家に行っていろ」
無理やり締め出して俺はそのまま家へと帰ったのであった




