一は全、全は一の妖怪
「何を言っているんだ!この世で一番かわいいものそれは………猫に決まっているだろう!あの、小さくて丸まっている姿を見てわからんのか!!」
「お前こそ何言っちゃってんの?この世で可愛い動物は………馬!あいつ等のつぶらな瞳を見続けてみろ!争いが馬鹿らしくなるぞ!!」
現在、玉藻の前とあほな論争を繰り返しているのだが、何故こうなったし?
「お前が、猫を下らないと言ったんだろう!!」
「言ってねえよ!」
「………あれ?」
こてんんと、首を傾げる玉藻の前
「普通の男ならイチコロだな」
「まるで、お前には効かない言い方だな」
「実際、なんとも思わんしね……王手」
「ああっ!?ま、「待ったはもう使い切ってるぞ」……うぅ…負けました」
因みに、論争しながら将棋をやってたもんだから玉藻の前の打つ手打つ手がめちゃくちゃで読みづらかったと言っておこう
しっかし、将棋が既にこの時代にあったとはねぇ……いい暇つぶしにはなるな。普段ならば、酒を交えてやるんだが……
「酒が飲みてえ」
「やめろ!あの匂いを嗅ぐだけで気持ち悪くなる!それよりも、絶世の美女と言われている私の部屋を酒の匂いで充満させるぐらい飲むな!」
と、この部屋の主にダメだしを食らい飲めないのだ
「ああ…かくも悲しき現実かな」
「何を詩人ぽく言ってるんだこの酔いどれ」
「一度も酔ったことねえよ」
兎に角、こいつは酒に弱く匂いを嗅いだだけで酔ってしまい、その後酒が抜けたら二日酔い状態になってしまうので諦めているのだ
「そういや、この前帝が来ていたんだがどうしたんだ?」
再び駒を並べながら玉藻の前に聞いてみる。因みに、今度は飛車・角落ちに加えて金落ちあたりか
「ああ、何でもとっとと閨に来いと言うんだ。ったく、爺が調子に乗るなというんだ」
玉藻の前が駒を移動させながらそんなことを言うが
「てか、お前は何故にここに侵入したのかをもう一度思い出せ」
むぅ、金が無いのは痛いな。穴熊が使えん………俺は、こういったゲームは基本的にじっくり責めるのが好きなのだがな
「いや、だがあんな爺だぞ?お前も想像してみろ」
「俺は、男だと言ったはずだぞ。てか、そもそも男同士が絡みあうのを女だって想像して気持ち悪くなるだろう」
ぽちぽちと進む駒を見ながら戦況を見る……ううむ、流石に俺もそこまで強くないからきついか
「………ありだな?」
「あ゛?」
「な、なんでもないぞ!」
突如慌てて手をブンブンと振る玉藻の前………腐ったやつだったのか
「そ、そんな可愛そうなものを見るような目で私を見るな!!」
「……はぁ」
「溜め息!?」
そんなコントをやりながらもくもくと将棋は進めていくが突如として廊下から凄い足音が聞こえてきた
「ゲっ!この足音は帝か」
おい、いい女がゲとか言うな
「んじゃ、俺は帰るわ」
「ああ、またな」
ここ最近は何か、こいつと普通に会話している俺。なんだろう………最初は私のが偉いとか抜かしていたんだが?
☆★
さて、ちょっと所要であるところに呼び出されている間に帝が倒れたらしい。そして、その犯人は、白面金毛九尾の狐というのが国中に回ったつまりは玉藻の前こと
まぁ、しょっちゅう帝相手に早く死ねだの口くせぇんだよボケとかほざいていたし案外呪術辺りが使えたのかもしれないしな
そんでもって、都に帰った後に聞いたら陰陽師の安倍泰成がその正体を見破ったそうだ
安倍泰成……それは、清明の孫だ
まぁ、孫と言っても確か分家にいた息子の子供だったかな?清明は生涯結婚しなかったからな・・・
結婚しなかったと言っても、流石に体面には気を使い影武者みたいな嫁さんを貰ったことにして、子供が出来ずに養子を取った設定だけど
まぁ、俺も清明と一緒にいたから知っているだけで、面識は無い
てか、子供の教育の影響が出るだろうと認識疎外を使い目の前にいても気づかないようにしていた
さて、それはそうと玉藻の前は何処にいったんだ?たしか、どっかに逃げたと言って今討伐隊が向かっているはずだが
「ああ、陰陽師とか将軍とかは那須野の方に向かっていったよ」
「ああ、ありがとさん。礼はこれでいいか?」
そう言って、饅頭を渡す。この時代にはまだ砂糖は無いが甘味をつけるのは別に砂糖でなくても代用できるのでそれを渡す
「おぉっ!?これは、見た事無いが上手そうだ」
そう言って、噂好き妖怪はスキップをしながら離れていった
「んじゃ、ちょっと行ってみますかねぇ」
あいつが、どうなるのかを見届けるのも一興だろう………情が移ったかな?…ないな
☆★
「グゥルルルルルルルルル………」
白面金毛九尾の姿……即ち、狐の姿に戻り頭を低くしながら四肢に力をいれながら唸る姿があった
ふむ、人間時の時でもそうだったが、あのシッポはいいなぁ……それに、孔雀のように開いている姿はあるものは魅了されるだろう
俺の場合はなぁ、増やしても基本的に上をむかないからなぁ……あれは、あれで羨ましいな
「ガァァァァァアッ………」
シッポ考察をしていたら、突如として聞こえた声に視線を戻せばそこには倒れ伏す玉藻の前の姿がそこにはあった
すると、どうだろうか玉藻の前が突如としてその姿を生物から無機物に変えたのだ……どうやって?
まぁ兎に角、姿を変えたその石になった玉藻の前だったが突如としてその石から瘴気があふれ出し人が一人二人と倒れていった
あれは確か……後に殺生石とか呼ばれるものだったかな?それが現れると、安倍泰成は急ぎ結界を張り逃げるように指示しそのまま人間達は消えていった
まぁ、既に倒した以上ここにはこれ以上いる必要も無いし、玉藻の前もまた元に戻れることはないだろうしな
『……し…は…』
「ん?」
突如として凄く細く集中しないと聞きとれない声が聞こえてきた
『どうせ私は、いつも一人なんだ…』
そんな声が聞こえてきたので、何処からかと思ったがこんな思念を飛ばせるような奴がこの場にいるとしたらそんなのは一人しかいない
『私はただ……誰かと一緒に居たかっただけなのに…』
おそらくは、これがあいつの本当の心の叫びだろう……ふむ、ここで助け出してやるのも一興かな
俺が舞台にあがるのは俺の主義に少し反するが…まぁ、どうでもいいなそんなことは
「ふむ、なるほどねぇ…」
いや、すげえなこれ。複雑な術式で己を変えているのだがそれ以外にもなんか色々あるっぽい
まぁ、何とかできるが
「解!」
殺生石に手を載せてその一言を呟けば石になっていた玉藻の前が再び元の姿に戻った……しかし、何故に人間の姿で裸なんだ?
「まぁ、今は治療なんだが……どうしよう?」
羽織っていた浴衣を玉藻の前にかけて呟く。いや、マジでどうしようねぇ……俺って定住を持ってないから治療をするにしても場所が無いし…
そんなことを思っていたら懐かしい気配が
「いい所に!出て来い!」
「きゃぁっ!」
小さい悲鳴を上げながら出てきた、胡散臭い妖怪「スキマ妖怪よ!!」八雲紫がそこにいた
「久々だな紫。早速で悪いがどこかいい場所ないか?ここじゃ、治療したくても出来ん」
「ええ、久々ね…って違う!どうやって私のこと分かったのよ!」
「そんなのは後にしろって、こいつを助けてやら無きゃな」
「……珍しいわね貴方が手を出すなんて」
「気まぐれが働いただけだ。それより返答は?」
「まぁ、いいわ。ついてきなさい」
そういうと、紫が手を振ると両端がリボンで結ばれてなにも無いところに線が走ったと思うとそこが開き中には目が沢山ある空間が現れた
「あいも変わらず、趣味が悪い空間だな」
「そう?これはこれで、慣れると可愛いものよ」
慣れたくないねぇ
「さ、行くわよ」
そういうと、紫が入っていったので俺もそれについて行き出た場所は過ごしやすそうな気候と広い屋敷がある場所であった
「ここは?」
「ここが、私の家で人はこういうは…【マヨヒガ】ってね」
ここが、マヨヒガか
「さてと、その子の治療だったわね…部屋なんて腐るほどあるから適当な場所に行きましょ」
そう言って歩き出す主に俺もついて行き、適当な部屋(といっても広すぎるが)についたのでとりあえず玉藻の前を寝かせる
「そういえば、治療すると言っていたけどどうするの?ここには、こんな怪我をした子を直すような場所は無いわよ?」
「はっ……はっ……」
元々死に掛け寸前だったのを更に無理やり助けたので既に死ぬ一歩手前である玉藻の前を見ながら俺は不敵な笑みを浮かべる
「何よその顔は…」
「お前なら、知っているだろう?妖怪同士で直す方法を」
「まさか…自信の妖力を与えて直すと言うの?無茶よ、タダでさえ普通の状態でも上手くいかないのに」
「やりようは、腐るほどある」
まさか、ガキの頃に習った方法を試すことが来るとは思わなかったが
「さてと、紫ちょっと離れていろ…9尾解放」
「ッ!」
9尾を解放すると紫の顔色が変わる。そりゃ、これだけの密度の妖力を間近で受けちゃそうなるよな
まぁ、それは玉藻の前にもいえることだがそんな問答をする暇なく俺は自分の唇を噛み切り血を流す
「な、なにを……」
紫が少し離れた位置で多少どもりながら聞いてきたが悪いが今は口の中は血で溢れていて喋れん
「…んむ」
「なぁっ!?」
「ん…むぅ…ぴちゃ…ん」
「な、ななななな!?」
俺は玉藻の前に口付けをし、更に血を飲ませるために無理やり舌を絡めながら流していく
「むぐ…ちゅ…ぺちゃ……ふぅ」
口を離して口をぬぐう。玉藻の前の顔を見れば、先ほどよりも血色のいい顔をしているので成功したようだ
しっかし、さすが九尾の大妖怪だ。まさか、1分いじょう血を流し続けないと効果が出ないとは思わなかった
「紫終わったぞ…むぅ?」
「きゅ~@@」
紫に終わりを報告しようと振り返ってみれば、そこには目を回した紫がいた…なにがあった?
仕方無しに、紫も玉藻の前の隣に寝かせて俺も縁側で横になる
久方ぶりに戦い以外で妖力を消費したら思わぬほど疲れたのだ、ここは気候もいいし寝るには気持ちよさそうだと思いながら俺は眠りついた
☆★
「ん…朝か」
瞼に刺す鋭い光を感じ目を覚ませば、日は昇りいい天気であった
ふと、玉藻の前の事を思い出し部屋に言ってみたら
「う~ん…う~ん…」
「すー…すー…」
「………」
紫があろうことか、玉藻の前のシッポに抱き付きながら眠りこけており、玉藻の前は若干苦しそうにしていた
「アホかーーーーっ!」
「みっぎゃぁぁぁぁぁっ!?」
朝一に、紫のへんてこな絶叫が当たりに響き渡った
☆★
「痛っいわね…」
頭をさすりながらこっちを恨みがましく睨みつける紫を無視しつつ、俺は目の前の奴に問いかける
「気分はどうだ?」
「…何故だ?」
「は?」
「…何故、私を助けたのだ」
俯きながらそんなことを言う玉藻の前…ううむ、何故かと聞かれれば
「何となくだ」
「そんな、理由でか?」
「そんなもんだ。俺は基本的に気まぐれで助けるようなことはせんのだが…まぁ、べつにいいだろう?」
「……」
ありゃりゃ黙っちまった
「ねぇ、真理」
沈黙が嫌だったのか、紫がこちらに話しかけてきた
「なんだ?」
「よかったら、何であなたが九尾なのか教えてくれない?」
「え?」
紫の言葉と共に玉藻の…めんどくさい、玉藻で言いや。玉藻が俺のシッポのほうに目を向ければそこには、あら不思議、さらさらのシッポが9本も
「な、なんだって!?」
目を見開いて驚いている、玉藻だが俺はめんどくさいからp「場所提供してあげたでしょ?」…畜生めんどくさい
「はぁ…」
観念したように、溜め息を吐くとなにやら紫と玉藻が期待した目で此方を見てくる…やめろ、そんな目でみたって俺の態度は変わらん
「まぁ、いっか」
「漸く観念したわね」
「とっとと喋れ」
なんか、玉藻が軽く昔に戻っているな
「当然だ…ほとんど、意識が無かったとはいえ私の唇を奪ったのだ。それ相応の代償を払って貰うぞ」
「あ、やっぱ意識あったんだ」
「ああ」
「え、唇…あ、ああああ…きゅ~@@」
なんか、再び紫が目を回してひっくり返った…どうした本当に?
「さぁ?」
玉藻も何がなにやらと言った表情である
とりあえず、紫がおきるのを待つのと同時にとりあえず玉藻に病人が食えるような粥をつくって食わせたりしていたら紫が起きた
「はっ!?私は一体…」
「どうでも、いいだろう」
「ああ、そうだな」
俺と玉藻の言葉にそっかと頷きながら遂に説明会
「さてと、俺が9尾ということだが、昔紫にも言ったが俺は1尾でそれ以上でもそれ以下でもない」
9本の尾を揺らしながらそう答えると二人はありえないといった表情である
「だったら、そのシッポはなんだと言うのよ」
「ん~、それを説明するにはなまず俺の年齢からだな」
「年齢だと?」
「そ、妖怪は生きれば生きるほどその身に宿す妖力が大きくなるのは知っているよな?」
二人は何を当然といった表情で俺を見てくるが
「んで、俺の年齢だが…ざっと8000年くらい生きてるんじゃね?それでもって、さっきの年齢と妖力の話で俺は相当の妖力を持ってるんだよ」
「「…は?」」
二人が呆けたような顔をするが俺は構わず説明を続ける
「んでな、俺の趣味の暇つぶしにこんな莫大な妖力なんていらないからどうしようかなと思っていたときに思いついたのが…お前だよ」
「な、なんだ!?」
ビシッと効果音が付きそうな音を突きたてながら玉藻を指差す
「いやぁ、9尾の妖怪というのは昔からちょっとはいなくは無かったからな、それで思いついたのが力を分割して封印しようと言うことだったんだ
そんでまぁ、最初はシッポとか関係なく力を分割して封印していたんだが、そしたら今度は封印を解除するのが多少手間でなぁ、それでどうしようと考えていた時に4尾の狐にあってね思いついたのが」
「シッポを増やすってこと?」
「その通り。まぁ、あくまで擬似的にという言葉がつくがな。そんでもって俺のシッポを妖力で形にしてそれぞれ封印して必要になったら出すといった具合にしたんだ」
「えっと、それでシッポって作れるものなの?」
「そんなわけ無いだろう」
紫が、確認するように玉藻に聞いてみるがあっさり否定された
「まぁ、俺も結構時間かかったしな」
どんだけ時間かけたっけなぁ?
「そ、それよりお前は本当に8000年も生きているのか!?」
玉藻が恐る恐ると言った感じで聞いてきた
「たぶんね。まぁ、俺もきちんと数えてないからわからんが」
いや、マジで俺の年齢って幾つだろ?
「さてと、秘密も教えてやったしこれからどうしようかね」
「秘密ってほどの秘密じゃないじゃない…」
紫の突っ込みをスルーしつつ考えていると紫から提案があった
「だったら、私の幻想郷を回ってみたら?少しは進歩したのよ?」
そういう、紫だったが…ふむ、幻想郷とやらが昔紫が言っていた理想郷か?だったら、一度目で見てみてもいいかもしれんな
「分かった。とりあえず、後で場所を教えてくれ。ここまで陽気がいいと眠くなるから明日の朝から行くとするわ」
紫にそう告げて玉藻に挨拶して俺は縁側に獣化して眠りについた
幻想郷…どんなやつがいるのかね楽しみだ
序盤の動物についてですが、タダの作者の趣味です
馬がガチでかわゆくて好きなんですよね
賭けもしないのに競馬場にいって馬を見たりします
さて、皆様にご報告なのですが…
私ことレティウスは6月5日から約20日間の間少し家を空けて旅行に行ってまいります
そこで、この小説が一時更新されませんのでお気に入り登録をされていてくださる皆様には申し訳ございませんがお待ちください
かえってき次第更新を開始します




