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東方転犬録  作者: レティウス
放浪篇
12/115

竹取の月の姫

 都で噂の美女と言うのがかの竹取物語の人物のかぐや姫と知ったのは、紫と別れ都に近づくにつれての情報で分かった


 かの、かぐや姫が御伽噺ではなく実在していたとは・・・


 まぁ、別にいようといまいと一度見られればいいやと思っていたんだが、俺が来る頃にはまともに謁見することが出来ないくらい警備がガチガチになってしまっていた


 どうやら、貴族や皇帝がその美貌を狙っているとかで一般人にはお近づきになれなくなってしまったとか


 どうしようねぇ・・・まぁ、既に手段は手に入れているからどうでもいいんだが


「ねえ、真理。どうしてお父様は私のことを引き取ったのかしら・・・そのまま捨ててくれればよかったのに」


 俺の腹に頭を乗せながらそう呟く少女の名は藤原妹紅といい、現在俺が厄介になっている屋敷の息女だ


 だが、この少女はどうやら妾の子・・・しかも、一夜限りの子だったそうでここの住人はおろか主人すらこの少女が産まれた事は知らなかったそうだ


 じゃあ、何故この少女がこの屋敷に住んでいるかといえば、どうやらこの少女の母親が死ぬ間際にここの主人に会いにきて託したそうだ


 当然、屋敷の住人はおろかここの主人の夫人は大激怒し捨てろだの殺せだのわめいたそうだが、主人は頑なに拒んだそうだ


 まぁ、主人が言った事に反発するなどこの時代では首を切ることに等しいので、こうして妹紅は屋敷にいられるのだが、しかして妹紅がやっているのはこの家のお手伝いさんモドキと言った感じである


 これは単純に奥方が妹紅をそのまま置くのを良しとしなかったかららしいのだが、妹紅自体もそれは受け入れて働いているそうだ


 ただ、基本的には周りのお手伝いさん達は妹紅に同情してか余程のことが無い限りは仕事を回さないそうなので日ごろ俺を枕にしてぼーとしる一日を過ごしている


 ちなみに、主人と妹紅の関係だが親子と言うよりは


「真理ここにいたのか。出かけるぞ?」


「あ、御館様申し訳ございませんでした私が真理を連れてしまっていましたので」


「よい、では行くぞ真理」


 とりあえず呼ばれたのでその人物の元へと向かう。この人物こそかの車持皇子こと藤原不比等である。


 なぜ、俺がこの人物の屋敷に厄介になっているかと言うと単純に妖怪に襲われているところを助けたからである


 因みに、何故助けたかは単に通行の邪魔だったので妖怪を蹴飛ばしたら喧嘩を売ってきたのを5割り増しで買取しただけだ


 そんで、助けてみたらお礼がしたいとか抜かしたんだが妖怪であることに気づいて再びビビリ始めたから獣化して敵意が無いことを示したら再び礼がしたいといわれた


 なんでも、妖怪でも何でも助けて貰ったのにそれを放置するなどただの愚か者だとかなんとか


 まぁ、丁度よかったんでかぐや姫の事を聞いてみたら丁度求婚している最中だとか


 なので、一度でいいから連れて行ってもらえばいいと頼んでみると不比等は了承してくれて俺を自身の屋敷へと招いたのだ


 因みに常に犬の状態なのは、俺の人間時の姿よりも犬の方が不自然じゃないとか


「ああ、真理どうしよ?妹紅に高圧的な態度とっちゃったよ」


 不比等自体が実は妹紅のことを気にかけており、上手くコミュニケーションを取れないので俺をクッションにしてとろうとしているんだが


「とりあえず落ち着けこの小心者。てか、何で緊張すると貴族然となるんだお前は」


「いやだってさぁ・・・」


「情けない声出すな馬鹿が」


「酷い・・・」


 分かって貰えただろうか?不比等自身はとても妹紅のことを大事にしているのだが突如として現れた娘ゆえにどうやって接すればいいか分からずああいった態度をとってしまうようだ


 しかも、かぐや姫の求婚の理由がまた


「おら、とっとと行くぞ?幾ら回りに人がいないからといって犬が喋っているのも可笑しいし、犬に喋りかけている人も可笑しいからな」


「わ、分かった。行くぞ真理。妹紅のためにもかぐや様には私の元へときて貰う」


 なんでもかぐや姫と妹紅は大体同じくらいの年齢らしいのでそれをきっかけにできればと考えているらしい


 ・・・なんとも馬鹿な親である。子育てをしたこと無いので俺からはなんとも言えないがな








「かぐや様、藤原不比等様がお越しなりました」


「入ってもらって」


 お手伝いさんに案内され不比等が輝夜の部屋へと入っていくのに俺も後に続いて入っていく


「かぐや様、本日もご機嫌麗しゅうございます」


「ご丁寧な挨拶をありがとうございます」


 ほう、これが噂のかぐや姫か。確かに絶世の美女と呼ぶに相応しい人物ではあるが・・・やはり子供だなぁ


 この時代の結婚適齢期が大体13くらいなので仕方ないといえば仕方ないか


 因みにかぐや姫は豪奢な十二単を着ており気品に満ちてはいる


「あら?そちらの犬は一体?」


「本来ならばかぐや様に会うのにこういった生物を連れてくるのは無礼千万なのは重々承知しておりますが、たまには趣向を変えてみるのもあなたの心に届くのではと思い連れてきたしだいでございます」


「あら、そんな。私は動物は好きですよ?」


 そういうとかぐや姫は此方に向かってきて俺を撫でるので俺は大人しくそれを受ける。


「ふふ、気持ちいい毛並みをしているのね」


「ありがとうございます。真理も嬉しいといっておられますよ」


「あら?貴方はこの子の言っていることが分かるのかしら?」


「ええ、飼い主ゆえの特権ですよ」


 不比等ぉ・・・別にかまわんが、それだと少し鼻につくぞ


 その後は不比等とかぐや姫の話となり時間となり帰路へとついた


「ああ・・緊張したよぉ」


「なっさけねぇなぁ、妹紅のためにかぐや姫を嫁に迎えるんだろ?そんな体たらくでどうするんだ一体?」


「だってさぁ・・・」


 帰りの道すがらはもっぱら不比等の愚痴に付き合わされて気持ちが辟易したのは言うまでも無い









 夜、辺りが静寂に包まれ人は家にて就寝前の準備についている頃に俺は立ち上がり外へと向かっていく


「いくのか真理?」


「不比等か?ああ、あれだけじゃダメだから直接いって来るわ」


「そうか、気をつけてな」


「そこで、私の事を~って言わん辺りお前はまだ人間が出来ているな」


「ただでさえ、今日はお前を出しに使ったんだ。それ以上は望まんさ」


「はいはい、んじゃ行ってくるね~」


 わき道に入り誰もいないことを確認してから俺は人化し空間の応用でかぐや姫の屋敷へと飛んだ









 かぐや姫の屋敷に着いたあと、再び獣化しかぐや姫の部屋の前の庭をうろつくと突如としてかぐや姫の部屋の扉が開け放たれかぐや姫が庭を見ながら月見酒をしだした


「ちっ!」


 は?今あいつ舌打ちしなかったか?顔も不比等と一緒にいたときのお淑やかな感じは一切見忌々しいものを見ている感じで月を見ていた


「ったく、どいつもこいつもうざったいのよ!中には下種な目でこっちを見てくるし気持ちわるったら無いわよ!」


 月に対して舌打ちをかました後、かぐや姫は愚痴を言い出したんだが・・・まぁ、其処については同情するよ


「大体、なんで私があんなおじん共と結婚しなきゃいけないのよ!歳考えろ歳を!」


 ・・・まぁ、ロリコンといわれても仕方ないくらい歳離れているしね


「はぁ、それにしても月がやけに綺麗に見えるわね今日は・・・余計にイライラするわ」


 胡坐をかいて月を飲むお姫様・・・ないわ~


「むっ!あんたは確か藤原の時にきた犬っころね、何故いるのかしら?まぁいいわ、こっちきなさい」


 犬だからか、素で接しても問題ないと思ったのかそのままで命令してくるので俺は逆らわずに近づいていく


「ああ、あんたの毛は気持ちいいわね。刈り取って羽織ろうかしら?」


「いや、怖ぇよ」


「ホントにそんな事するわけ無いじゃない。でも、あの人の事だから私が言ったことなら実行するわよ。

 いえ、だれでもするわね。だって私が欲しいんだから逆らえるわけ無いじゃない」


 オーホッホッホ!と笑うかぐや姫・・・酷いなこいつは


「いや、お前よぉもうちっと言い方ってもんがあるだろうが」


「うっさいわねぇ、いいじゃない。ここには誰も聞いている奴なんて・・・いる・・・わけ・・・」


 漸く俺が喋っていることに気がついたかぐや(なんか、こいつに【様】をつかうと【様】に申し訳ないようなきがする)の言葉が尻すぼみに小さくなっていった


「ちょっ!?あんた喋れるの!?そうすると・・・妖怪!?」


「まぁ、落ち着けって」


「落ち着けるわけ無いじゃない!妖怪がいて平静を保てる奴がいたら見てみたいわ!」


「・・・そういや、俺も見たこと無いなぁ」


 諏訪子様達の下にいたときも巫女さんも最初はかなり警戒していたからなぁ・・・能力のおかげで敵意はもたれなかったけど


「・・・私を食べにきたのね。でも残念ね!私の周りには腐れ陰陽師たちがこれでもかというほど護符を置いていったから私を襲おうとしても無駄よ」


「いやいや、それならば入ってくる時点で弾かれるって。それを考えたらどうなるんだい?てか、お前のためを思ってるんだから腐れいうなや」


「え・・・?」


 いや、この屋敷には結界が張っており侵入者及び妖怪が入ってきたら即刻ばれるような奴だ


「そういえば、そんな事いっていたわね。めんどくさいんで聞き流していたわ」


「だめだこいつ、早く何とかしないと」


 なんかこのかぐやは色々残念な感じがする


「そこまで力を持っている妖怪にも見えないのに何でかしら?」


「まぁ、能力のおかげだね」


 俺の人間の時の能力で俺には能力やこういった結界の干渉を素通りできるようにしている


 犬の時には使えないが、人間時にそれを作って犬になってもそれが消えないようにするのにどれだけかかったか


 まぁ、それでも妖力がそっちに逐一流れるので妖力を抑えると同時に犬のときならばほとんどばれないようになったからいいがね


「くっ、私をどうするつもり?」


「どうもせんよ?ぶっちゃけお前と話せればいいかなって思ってきただけだし・・・それにしても猫を被っていたとは」


「うるさいわね、いいじゃない。誰もかしこも私の内面なんて気にせず外側だけしか見ないんだから」


「まぁ、外面がいいのは認める」


「偉そうね・・・」


「そうかい?まぁ、大人と子供の差だな」


「こう見えても2000年は生きてるわよ」


「じゃあ、おばはんだな」


「おばはん言うな!」


「それでも、やっぱ俺よか子供だな」


「あんた一体どんだけ生きているのよ」


「知らん」


「いや、知らんって」


「途中からめんどくさくて数えてないが5000以上は確実に生きていると思うが聞かれたら今は1700くらいと言っているがな」


「妖怪ってそんなに生きていられるものかしら?」


「大妖怪ならばいけんじゃね?俺よか年上なのは俺を産んだ母親くらいしか知らんが」


 そういや、今頃何やってんだろあのビッチは?くたばったかな?・・・いや、生きてそうだな








「くしゅん!・・・ずず、誰かが妾の噂をしたか?まぁよい・・・お!そこのものちょっと待て!妾と子作りせんか?」









「まぁ、どうでもいいな」


 とりあえず人化してかぐやの隣に座る


「わ、私をどうするつもりよ」


「どうもせんよ、とりあえず酒を飲んでいるんでな一緒に飲もうと思っているだけだ」


 空間を操り酒を取り出して杯に酒を注ぎそれを一口に飲む


「うん、うまい」


「はぁ、何か警戒しているだけ損な気がしてきたわ」


「そいつは重畳。折角今日は晴れていて月が綺麗なんだ月見酒としゃれ込もうじゃないか」


 そう言って酒を飲んでいるとポツリとかぐやが此方に話しかけてきた


「ねえ、あんた月にここよりもぜんぜん発展した都市があると言ったら信じる?」


「真理だ」


「へ?」


「名前だよ。んで、発展した都市ねぇ・・・月に人がいるのも驚きだがそんなものがあるとはねぇ」


「信じるの?」


「ウソなのか?」


「いや、本当なんだけどさ・・・」


 俺が信じる前提で話しているとかぐやが急に俯いてしまった。はて、俺が何か悪い事いったか?


「ねぇ、なんで直ぐに受け入れられるの?」


「それは、俺の名前がまんまって感じかな?俺自身の趣味もそうだが、ありのままを見てみたい。それが俺の行動原理だ。

 だから、俺は人を見るのが趣味なんだ。誰が何をなすか、それをなすために何をするかってねのを見てみたいのさ

 そして、真理ってのはありのままの事実。覆せない本当って意味だ。だから月にここより発展した都市があるのならばそれは本当なんだろうさ」


 そう言って俺は再び酒を仰ぐ


「ふぅ、うまい。そういや、かぐや姫さんは何で月を見て舌打ちをしたんだい?」


「輝夜よ」


「ん?」


「名前。輝く夜と書いて輝夜。蓬莱山輝夜ってのが私の名前よ

 そうね、あんたが信じてくれるなら話してもいいかしら・・・」


 そうして、かぐや姫あらため輝夜はぽつりぽつりとまるで今まで溜めていたものを吐き出していった


「月の暮らしは不自由なくとても優雅なものだったわ。必要なものは発明され不必要なものは排出されていった」


 ふむ、話を聞く限り相当な文明があるんだろうな


「そこで私は姫として生まれ周りにはもてはやされて本当にすることが無かったくらいにね」


「・・・」


「でもね、そんな暮らしは正直生きているだけの地獄よ。元々月の民ってのは寿命に悩まされること無く生きていくことが出来るのに回りも便利すぎたらどうなるかしら?」


 輝夜が此方を伺うような感じで質問をぶつけてきた


「さてね、その便利・・ってのがどんなものかも想像できないし何より・・・生きているだけの地獄ってのが想像できないさ」


「そうよね、だから私は地上での暮らしにとても憧れたの」


「何故、地上の暮らしが憧れに繋がるんだ?」


「地上はね、穢れが多く住まうのに適さないって。重力は強く命を縛り付けるし妖怪は多いしってね」


「月にはいないのか妖怪ってのは?」


「月にいるのはかつて地上を離れた人と元々住んでいたといわれる玉兎だけよ」


 ああ、そういや月の兎っていう伝説とか歌舞伎があったな


「だから私は地上に行くために不老不死の秘薬をのんでしまったの」


「不老不死の秘薬というと蓬莱の薬か?」


「良く知っているわね。そうよ、それを飲み私は地上に落とされた・・・罰としてね」


 なるほどねぇ、地上は穢れが多い場所→不死ならばどうにもならないってところか?


「だけど、それももう許される。次の満月に迎えがくるそうよ」


 次の満月というと丁度一月くらいか?昨日が満月だったからな


「帰らないのかい?」


「帰りたくないわ。地上も私をもてはやしてつまらないけどそれでも月での暮らしよりは万倍もましよ

 それに、帰ったら帰ったでどうせ私に待つのはモルモットよ」


「・・・姫さんじゃないのか輝夜は」


「姫よ?ただ、姫と言っても変えはきくもの。じゃなきゃ、罰とはいえ地上に落とすかしら?」


 よくあることっちゃあることだが、つまらんなぁ


「さて、もう眠いからあんたは帰ったら?」


「そうだね、そうするよ。・・・ああ、最後に言っておく俺は男だから間違えるなよ?」


「・・・へ?」


 それだけを言い残し俺は空間をつなぎ不比等の家へと帰った


 ・・・月の民ねぇ、色々ある世界だがまさか月に本当に人が住んでいるとは面白いが地上を捨てた理由がつまらんね

さて、漸くぐーやの登場!


もこたんをもっと出したかったけどこの時点でもこたんよりはできなかったorz


藤原不比等はあえてヘタレキャラにしてみただけで歴史上の人物と全く関係ありません


 何となくこういうキャラもいいかな?と思ってやって見ました

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