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東方転犬録  作者: レティウス
招いてみたよ、風神録
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宣戦布告?

「私は……自由だぁぁぁっ!」


 幻想郷にやってきて、早苗に空を飛ぶコツを教えれば、直ぐにものにして、今俺たちの頭上でくるくると旋回しながら、飛び回っている。


「ここが、幻想郷ねぇ……確かに、神秘にあふれているね」


 神奈子様が、体の具合を確かめるような感じで手を握ったり開いたりしながら、感想を述べている。


 来てすぐに力が戻るってわけではないはずなのだが、そこはあれだ。かつては大和の神の中でもかなり高位の存在だったためか、かつてほどではないにしろ、そこそこの力を取り戻したようだ。


「ん~、自然が気持ちいいね」


 逆に諏訪子様は、この過ごしやすさを気に入っている様子である。


 外の世界だと、確かに自然が減ってきてしまっているからねぇ。便利になってはいるんだが。


「お父様!」


 そんな感じで軒先でのんびりと酒を飲んでいたら、文を連れ添って娘の椛がやってきた。


「おう、ただいま」


「ただいまではありません!一体この方たちは……」


「かつての知り合いさ。ほれ、天照様覚えているか?あの方の組織にかつて所属していた八坂神奈子様と、かつて、地上のミシャグジ様を統括していた洩矢諏訪子様だよ」


「ほぉ、これが真理の娘かい?そっくりだねぇ」


「だねぇ。真理が誰かと番になって、その人が生んだといっても納得しそうだよ」


 詰め寄ってきた椛にとりあえずお二柱を紹介すると、お二柱とも、椛と俺の似ている部分を探し出していた。まぁ、子は親に似ると言われるしな……いや、血は繋がってねぇけど。


「あ、はじめまして。犬走椛です」


「よろしくな」


「よろしくね~」


 紹介されたからか、しっかりと挨拶するうちの子。うむ、こういうところは礼儀がなっている。俺の教育のたまものだな。


「いやいや、真理の教育だったら、失礼な奴になるだろ」


「失礼な」


「真理って、私たちに敬称つけてくれているけど、敬ってはないよね?」


「まぁ」


「ほら」


「なん…だと…!?」


 いやいや、それでも礼を尽くす相手ならば、それ相応の態度はとるぞ?めったにおらんけど。


「あや~、そんなことよりですね、真理さん」


「なんだ、いたのか」


「最初からいたわよ!どんだけ娘馬鹿なのよ!」


「存在感がないんじゃないか?」


「はたてやその他の天狗共と一緒にしないで!」


 いやいや、お前めっちゃ失礼なことを言っている自覚しているか?まぁ、文ぐらいしか、天狗どもの名前知らんし、見分けつかんけど……いや、麻耶の側近の奴らは見分けはつくが、名前は分からんな。


「そんなことりより、なんでこんなところに神社を転移させてるのよ。幹部連中があーだ、こーだと煩くなってるわよ」


「紫か麻耶に聞け」


 俺がそういうと、文はめちゃくちゃ渋い顔になり、眉間に皺を寄せた。


「聞けったって、八雲はどこにいるか知っているけど、胡散臭くて会いたくないし、天魔様に直接なんて、めったなことじゃかなわないわよ」


「よんだか~?」


「天魔様!?」


 不意打ち気味に背中から声をかける麻耶。それに驚く文。麻耶の奴狙っていたな?


「まぁ、細かい理由は置いておくとして、うちの側近の子らには教えといたはずやけど?後はまぁ、鬼の連中がいなくなってからというもの、この妖怪の山に刺激がのーなったというのが理由やなぁ」


「刺激、ですか?」


「せやで?うちの子らはよくも悪くも天狗やからね。文ちゃんや椛ちゃんみたいな、常識破りの子らってのは珍しいんやん?うちとしては、おもしろうないんよね」


「はぁ……?」


 文は分かってないようだが、俺や玲央は仕切りに頷いていた。


 天狗の社会は簡単に言えば閉鎖社会だ。自分たちさえよければ、周りが何かあっても知らんぷり。そう言った連中ばかりなのは逆に言うと、危なかったりする。だから麻耶はそれを破ろうと、妖怪の山の中腹を提供したのだ。


「何か、強い力を感じたから来てみれば、これはまた凄いわねぇ」


「お前が来るなんて珍しいな」


 くるくると回りながらやってきたのは、厄神である雛であった。こいつはめったなことじゃ、自分のテリトリーから動かんのに。


「まさか、大和の神と、私たち八百万の神の中でも最上位に位置する神がやってくるなんて……一緒にいるってことは、知り合いってことでいいのかしら?」


「まあな。この二人が、今の体制を作るころからの付き合いだよ」


「どれだけ前よ……」


 呆れながらため息をつく雛。何年前って大体……2000年くらい?よく覚えてないが。


 そのあとも秋姉妹が来て驚いてたりしていたのだが、まぁそれは微笑ましいものだ。


「そういや、早苗はどこいった?」


「そういえば、見ないね」


「どこいったんだい、あの子は……昔っから、落ち着きがなくて困った子だよ」


 神奈子様はかなり呆れているように見せているが、甘いな。子を持つ親として、その表情はよく知っているぞ。それは、子供を心配する親の顔だ。


 んで、まだ帰ってこないなら探しに行こうかという話になったころに、早苗は帰ってきた。


「どこ行っていたんだい!行くなら、行くで一言声をかけていきな!」


「ご、ごめんなさい。えっとですね……ここからまっすぐ行ったところに神社があったんですけど、そこに御神体も何も飾ってなかったので、とりあえず、神奈子様や諏訪子様の分体となりえるものを飾ってきました」


 子供の説教は親の役割と思って、雛とかと話していたんだが、早苗の口から出たセリフに思わず固まってしまった。


「あー、早苗?その神社ってどこか寂れていて、貧乏っぽくて、絶対に人が辿り着けそうにない場所だったりするあの神社か?」


「はい!」


 俺の質問に元気よく答える早苗に思わず頭を抱える俺たち。


「こりゃ、揉めるなぁ」


「揉めますねぇ」


「ちょうどええんやない?」


「ふむ。馬鹿弟子どもとこの子の才、どちらが上か見極めるにもってこいか?」


 とりあえず、俺の家は結界で覆っておこう。壊されたり侵入されて奪われたらたまったものではないからな。

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