STAGE4
ちょっと、ハーメルンの方でやることやっていたら、更新が遅れました。申し訳ないです。
さて、萃香に事の真相を聞き出そうとしたのはいいんだが、あいつをどうやって追い詰めようもとい、対面に座らせるかだな。
あいつは自分を霧に変えて、幻想郷中に広がっているから、目の前に表させるのも手間だな。
おそらく、俺が萃香を探し出そうとしているのもすでに承知のはずだ。
こそこそと隠れてないが、かといって目の前にすぐに表れないことを考えるに、あいつも鬼ごっこを楽しんでいる可能性があるな。
まぁ、呼び出すのは割かし簡単なのだが。
空間から、真新しい酒を取り出すと、適当に地面に置く。
「あーしまった。今年の新作の酒を落としちまった」
我ながら棒読みもいいとことな感じで言ったのだが、直後に萃香の気配がだんだんと濃くなっていく。
「この酒は私んだー!」
案の定、萃香は体を実体化して俺が置いた酒をかっさらうようにとっていき、近くの切り株の上に座ると、栓を開けて飲みだす。
おい、仮にも女なんだから、ラッパ飲みするな。すごく残念に見えるぞ。
こいつと同等か、それ以上の酒好きの玲央や麻耶ですら、そこまで女捨ててないんだがなぁ。
「ほれ、これもやろう」
「マジで!?あんたは、神か!?」
「犬だよ」
鬼から神扱いされる俺ってなんだろう?昔、鬼扱いされたこともあった気がしたが。
「ぐびぐびぐび」
「それ飲みながらでいいから、ちょっと聞かせろ」
「ぐび?」
ラッパ飲みしながら、首をかしげる萃香。見た目幼女なのだが、ダメだ。これじゃ、萌えない。めっちゃ、オヤジ臭い。
「ここのところ、誰も彼もが宴会をしまくっているのは、お前のせいだろ?」
「ぐび」
俺の質問に頷いて答える萃香。てか、相手が飲んでいるのに、俺が飲まない理由なんてないな。
空間から、酒瓶と杯を取り出して、手酌で酌む。
「いったいどうして、そんなことをやるんだ?いや、お前さんが賑やかなのが好きだっていうのは、重々承知しているが、理由もなしにやらんだろ」
「ぷはっ。もう一本!」
「理由を教えてくれたらな」
きゅぽんと音を立てて追加をおねだりしてくる萃香に、理由を教えたらやると言ったら、なにやら足をプラプラさせながら、空を仰ぐ。ついでに、追加の酒も用意する。
「さいきんさー、人間たちの間で異変が起こったとしても、なんていうかこう……他人任せ?みたいな感じが根付いてきちゃってるじゃん?」
「まぁ、確かになぁ。人里自体は危なくなれば慧音が隠すし、異変の大本は博麗の巫女や魔理沙あたりが解決するからな」
「んでさ、なんていうか、一昔の人間たちって、何か起きたら、自分たちにできることを必死にやろうとしてたじゃん。こう、見ていて寂しいんだよね」
「なんとなく、納得。商売とか、そっち方面は逞しくなった気がするが」
「そうそう。別に私だって、私と喧嘩しろって誰でも彼でも喧嘩を吹っ掛けるわけじゃないし、退治に来いなんて、無茶は言わないよ。でも、忘れられるってのは、寂しいもんじゃないか」
萃香の気持ちもわからなくはない。
俺だって、妖怪である。かつては、それがばれて追われたことは多数だ。
まぁ、人間観察が趣味なために、ばれない工夫は腐るほどしたが。
話を戻すとして、今の幻想郷の住人は確かに危機感というのが薄い。
門番だって、顔なじみになれば、小言も言わずに気軽に挨拶する始末だからな。
まぁ、理由の大半が慧音と清明がいるからってのもあるんだが。
夜に眠るとしても、危険がないとわかれば、人間だれだって危機感というものは、欠如してくる。
弱小・中級妖怪クラスならば、清明が張った結界を突破することなんて、不可能だし、俺や萃香のような大妖怪はわざわざ夜半に襲い掛かるなんて真似はしない。
まぁ、夜が本分の妖怪がいるにはいるが、そういった連中だって、襲い掛かるわけではない。
清明を相手に危険を冒してまで人里に向かうメリットが極端に少ないからな。
「だからさ、危険はないけど、異変を起こしてみたんだよ。まぁ、博麗の巫女が出てくるかなぁって思っていたけど、一向に来なくて、真理が来ちゃったけど」
「すまんな。なんか、清明がやたらと霊夢たちにキレていてな、当分の間は、解放されんだろ」
「みたいだねぇ。私だったら、願い下げだね。あんな危険地帯に飛び込みたくないよ」
「まったくだ」
ある程度理由もきけたので、さらに酒をくれてやると、再びラッパ飲みを開始する萃香。
「んで、満足はしたか?」
「ぐび」
俺の質問に再び首を縦に動かして、答える。
「んじゃ、そろそろやめておけ。天狗たちが二日酔いどころか、十日酔いとかわけのわからん状態になっていて、仕事が滞っているらしいからな。ついでに言えば、なぜか知らんが、俺に被害が出ている」
「あいよー。それに、この前、母様じきじきにそろそろやめろって叱られたしね」
「そうなのか。まぁ、ここ最近は忙しいらしいからな」
なんでも、玲央が麻耶の屋敷に住む代わりの条件として、仕事を手伝うというのがあるとかなんとか。
仕事なんて、ぜってえにしたくないから、えらいと思うわ。
「それにしても、相変わらず真理は油断ならないねぇ」
「なんでだ?」
「だって、私が自分の体を霧に変えていても、どこにいるか把握しているんでしょ?」
「まあな」
「母様だって、天狗の頭領だって、おおよそでしかわからないのに、真理は確実性をもっているんだもん」
そこは、あれだな。能力の恩恵があるからであって、決して、麻耶たちが劣っているというわけではない。
「そんじゃ、またな。お前の気持ちも分からなくないから、今回はお仕置きなしだ」
「あいよー。またねー」
手を振る萃香についでにもう一本酒を投げ渡して、家路についた。




