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東方転犬録  作者: レティウス
なんか、巻き込まれた萃夢想
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STAGE3

 真理が今回の異変の真相を萃香に聞きだそうと動き出した時、本来ならば幻想郷の異変を解決すべき立場である、博麗の巫女たる霊夢と、毎回異変に首を突っ込む魔理沙はどうしているかと言えば……


「がはっ」


「げふっ」


「たるんどるぞ!!その程度で根を上げるな、たわけが!」


 清明にこれでもかというぐらいにしごかれていた。


「その程度だから、前回の異変の時、足が遅く、解決までに無駄に時間をかけたのだ!」


 そういって、清明が一つの札を取り出し発動すると、修行場所として使われている博麗神社の境内一杯に方陣が現れ淡い光の粒子が舞い上がる。


「ほら、立つのだ!今の術で、体力・霊力・魔力などは全て回復したはずだ!」


 そんなバカなと言いたいところだが、この女、自らの能力である【術を極めし程度の能力】によって、使えない術はない。


 そもそもが、才能の塊であり、更には努力を惜しまない人物であった。


 ゆえに、実現不可能と言われているような術式であろうと、理論さえ出来れば、彼女に発動できない言われはない。


 粒子を浴びた、霊夢と魔理沙は怪我が見る見るうちに回復していき、残りかすしか無かったはずの体力や霊力なんかも全て回復してた。


「やぁぁっ!」


「ふむ、不意打ちは結構だが、声は出さぬ方がよいな。式神「前鬼・後鬼」」


 ついでとばかりに、修行のつもりでやってきていた妖夢が清明に斬りかかるも、更に発動したスペルカードから現れた式神によって攻撃が防がれた。


「はぁはぁ、男の娘だぁ」


「はぁはぁ、た、たまらん!」


「ひぃっ!?」


 現れた式神のあまりの変態っぷりな表情に思わず短く悲鳴を上げてしまう妖夢であった。


「あれは、しゃーないよな」


「初見であれは目に毒よ」


「わ、私は女です!」


「なんだと!?」


「やはり、我らの希望は真理たんしかいないのか!」


 妖夢のうろたえっぷりに思わずうんうんと頷く霊夢と魔理沙。二人も、初めてあの変態を見た時は似たような反応をしたもんだ。


 そして、妖夢から告げられる性別にショックを受ける二体。そして、ショックを受けながらも、それで転ばない精神。流石である。流石であるが……


「「ぎゃぁぁぁっ!?」」


 突如、空から振り落とされたと言わんばかりの極太の閃光が二体を包み、滅せようとしたのであった。


「こ、これは真理たんの!」


「我らの愛が通じたのか!?」


 ただで転ばない二体である。髪は漫画のようにアフロで、あちこちが焦げているにも関わらず、死んでいないのだ……清明が発動した方陣が二体を生かしたのであるが、無くても生きてそうな気がするが、気にしたらまけである。


「む?真理か?」


 清明が極太の閃光が発射されただろう空中を見るが、そこには誰もいなかった。ただし、ぱっと見ではまるで分からないが、若干空間が歪んでいるのに気がついた。


「まぁ、よい。ほれ、次に行くぞ!」


 そういって、清明が発動したのは紫が使ったスペルカードである。


「これは!?」


「あいつが使ってた!」


「嘘!?」


「ついでだ、これも持って行け」


 更に幽々子のスペルカードまで再現して清明は霊夢たちを容赦なくしごき続ける。


 修行と称された、しごきは激しさを増していく。


 その過程で、疲れた、霊力がという言い訳は通用しない。


 その前に、清明が方陣で三人を無理やり回復させているからである。


 ただし、精神的にはガリガリと削られていくので、体に心がおいつかなくなっていくのだが。


「腑抜けどもが!その程度で、参ったとは言わさんぞ!」


 厳しい修行に根を上げたいのは山々なのだが、何か言い訳を言おうとしたら、そこに容赦なく弾幕が降り注ぐので黙って受けるしかない。


 特に霊夢と魔理沙は幼少のころから、清明を師として育ってきたせいもあってか、言い訳をするという気持ちにすらならない。


「なんなんですか、あの人は!?幽々子様を子供のようにあしらったとおもったら、幽々子様の弾幕を使ったり」


「あいつは、安倍清明。かつて、地上で最強を誇った陰陽師よ」


 泣き叫ぶような妖夢の台詞に汗をぬぐいながら、短く要点だけを伝える霊夢。


「陰陽師って……幽々子様から、滅んだって聞いたんですが」


「知らないわよそんなの」


「てか、あいつの歳知っているか?千歳は越えるらしいぜ」


「……人間じゃないんですか?」


「人外で十分よ、あいつなんて」


 そんな会話を続けている霊夢たちだったが、それを許す清明ではない。


「ほう、お喋りする元気があるってことは、ノーマルからハードに切り替えていいということだな?」


「げぇっ!?」


「あんたのせいよ!」


「知りませんよ!」


 そんな喧嘩をしている暇など与える気が無い清明が、先ほどの弾幕だけでもシャレにならないと言うくらいの量だったのに、更に倍増したものを繰り出す。


「いい加減、私を動かしてみせい。椛は一人でハードモードに挑めるぞ」


 腕を組み、威厳たっぷりに告げられる言葉に、霊夢の眉がピクリと動いた。


「上等よ、やってやろうじゃない!」


「お、おい、霊夢?」


「霊夢さん?」


 何やらやる気になっている、霊夢に魔理沙と妖夢が戸惑う。


 特に幼少のころからの知り合いの魔理沙は驚きを隠せなかった。


 霊夢という人物は、自分が欲してやまない才能を持ちながら、それを有効に使わずに、ほどほど程度でしか行使してなかったのだ。


 生来の気質なのか、面倒事を嫌い、よくも悪くも中立な立ち位置に常にいるような、人物が、何故か清明の言葉を聞いてやる気になったのだ。戸惑いたくもなろう。


「よい気迫だ。だが、気迫だけでは、クリアできんぞ」


 霊夢の気迫に満足そうに頷いた清明が弾幕を動かし始めれば、霊夢が必死に迎撃を始める。


 そんな霊夢に負けじと、魔理沙や妖夢も同じように迎撃を開始した。


「ほれ、どうしたどうした」


 消されては生み出し、消されては新たなパターンを構築しを繰り返す清明に、次第に霊夢たちは押され始める。


「ちくしょう!これでも、喰らえ!恋符「マスタースパーク」」


「ちぃっ、夢符「封魔陣」」


「うぅっ!人鬼「未来永劫斬」」


 流石に、弾幕や魔法、剣での迎撃が難しくなってきた霊夢たちは遂にスペルカードを取り出して、一気に消しにかかる。


「ふむ、この状況ではそれがベストだな……しかし」


 そういって、清明は懐から新たにスペルカードを取り出すと三人に見せつけるかのように付きつける。


「魔符「真・マスタースパーク」、霊符「滅魔陣」、人鬼「未来永劫斬」」


「んなっ!?」


「ちょっ!?」


「私だけそのまま!?てか、剣が無いのにどうやって!?」


 あろうことか、清明は霊夢たちが使ったスペルカードの改良型を一気に三つ発動したのであった。妖夢のに関しては、所見だったので改良する暇がなかったが、使い方が違った。


「ぬおっ!?」


 魔理沙のマスタースパークのさらに上を行く威力でありながら、太さは逆に細いという攻撃に、魔理沙のマスタースパークが中央から錐で穴をあけられるかという感じにどんどんと削られていく。


「くぅっ」


 霊夢の攻勢結界とでも言うべき封魔陣に対して、更に受けから包み込むように放たれた、滅魔陣は、全てを押しつぶさんと狭まって行く。


「「ひゃっはー!」」


「なにそれ!?ありなんですか!?」


 妖夢の永劫斬に対しては、式神たちが抜いた刀で二倍の手数と速度で次々と切り落としていったのであった。


「さぁ、まだまだ修行はこれからだ!貴様らの腑抜けた根性、叩きなおしてくれる!」


 たった今、必殺技を破ったと言うのに、まだまだやりたりないのか、清明の怒声が響き渡る。


「貴様らのせいで、楽しみだった花見が無くなったのだ、当分の間、休めるのは、私が貴様らを気絶させた時だと思え!」


 なんてことはない。単純に逆恨みで修行とかこつけたしごきをしていたにすぎなかったのであった。


 こうして、本来ならば、異変解決に向かうべき人物たちは、異変が起きているということも知らなかったのである。

清明が横文字が達者なのは真理のせいです。理由は風神録あたりで分かるかと。

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