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東方転犬録  作者: レティウス
なんか、巻き込まれた萃夢想
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STAGE1

 ううむ、ここ最近の萃香は何をやりたいんだろうか?


 人里、妖怪の山、その他の場所と場所を選ばずに人を萃めては宴会をさせているんだが、目的が全く見えない。


 まぁ、宴会自体はウェルカムなのだが。


 今日も今日とて、人里の宴会に混ざるべく、土産の品として、妖怪の山の野菜や、俺の自家製の酒【BBA殺し】を持参していた。


 今日は一体どんなことが起こるかね。


 やっぱり、人間というのは面白い。短い人生だからこそ、その短いながらも、人間には長い人生を精一杯謳歌している話を聞くのは、酒のいいつまみになる。


 こちとら、既に万を超える年月を過ごしてはいるが、人間達みたいにな思いは中々持っていないんだよねぇ。


 特に、俺や玲央なんかは、長生きのしすぎで物事を急くことはないからか、人間が何かをすぐにやろうとしたり、その実績を聞くのは大変に面白い。


 これが、知能の低い低級妖怪や本能に正直な妖怪なんかだったら、話は変わるんだろうけど。


 まぁ、なにはともあれ宴会だ。楽しみだねぇ。


「やっと見つけたわよ!」


 いい気分で、人里に向かって言っていたら、上空から声がかかる。聞いたことのある声だったので、何だと思って上を見れば、レミリアがこちらに向かって降りてきていた。


 もう、夕暮れも過ぎた時間帯だからか、レミリアは日傘も差さずに普通に飛んできたようだ。


「何か、ようかい?」


「何か、ようかい?……じゃないわよ!この、異変の犯人が!」


「はい?」


 いきなり現れてこいつは何を言い出すんだ。


「しらばっくれるつもりね!」


「いや、意味が分からんのだけど」


 憤怒の表情でこちらを睨みつけるレミリア。まるで親の仇の如く睨みつけられているんだが、全く怖くはない。


「ここ最近、宴会が続いているのはあんたのせいでしょうが!」


「いや、ちげぇけど」


「しらばっくれるな!酒好きのあんたが、起こさないで誰が起こすと言うのよ!」


「やべぇ、否定が出来ん」


 そう、全く否定が出来ない。もしも、俺が異変を起こすならば、きっと酒に関わることが関係するだろう……いや、それもどうなのよ?


「ほらみなさい!」


「いや、待て待て。何でお前はそんなに怒っているんだ。確かに、ここ最近は、宴会が続いているが、別に害はないだろ?」


「害はあるわよ!」


 はて?害があるって一体なにが……妖怪の山の連中見たく、酔った勢いで喧嘩を始めたりとか?


 けど、こいつがいる紅魔館だったか?あそこで、喧嘩をしでかしそうなのは、中国……じゃなかった、美鈴だろうけど、相手がいないから、やらないだろうし。


 そうするとフランか?けど、フランだったら俺の家に居候している時に、ある程度は飲めるようにしたから、酔っぱらって暴れるようなことはしないとおもうが。それに、あの子は酔うとすぐに寝ちゃうし。


「あろうことか、私が楽しみにしていたワインを飲まれたのよ!?しかも、私が生まれた日のワインも開けられたのよ!?悔しいから、私が飲んだら、お腹を壊したのよ!?一体どうしてくれるのよ!」


「いや、知らんって。てか、楽しみにしていたんなら、誰にも触れられないように、封印をしとけって。あと、お前の生まれた日のワインは流石にもう、古いだろ」


 お前、自分が何歳だと思っているんだ?500歳だぞ。流石に、そこまで古けりゃ悪くなりもするだろうさ。


 まぁ、俺の場合は今まで生きてきた年月分の酒が亜空間にしまってあるがな!


 とと、話がずれてきたな、修正しよう。


「うるさいうるさいうるさい!私の恨み、晴らさないでか!」


「やれやれ」


 普段は大人ぶっているようだが、やっぱりまだまだガキだなこいつも。


 流石に、500歳程度じゃ見た目も心も成長はそこそこ程度か。


 そう言った意味じゃ、玲央も子供の頃は可愛げがあったなぁ。


 思わず遠い目になってしまっていた俺なんだが、レミリアが攻撃を仕掛けてきたので、現実に戻る。


「おいおい、いきなりとは御挨拶じゃないか」


「うるさい!私の怒りを思い知れ!」


 全く聞く耳を持ち合わせちゃいないな。しょうもない。


「5尾解放」


 流石に1尾のままじゃ分が悪すぎるので、5尾を解放。


 レミリアの特徴はスピードだな。あの小さな羽根でよく飛びまわれることで。


 俺はどちらかというと、地上戦のほうが好きなんだけどねぇ。


 生まれてから、1000年くらいまでは空を飛ぶこと出来なかったし、もともとが犬だからか、地を駆けるのが好きなのだ。まぁ、駆けることなんてめったにないけど。


「死ねぇっ!」


「っと、あぶねぇな」


 てか、物騒すぎんぞ。何だよ、死ねって。子供がそんな言葉を使うんじゃない。


「はぁぁぁぁっ!」


「っと、よっ、あら?」


 高速移動によるヒットアンドアウェイに加えて弾幕も多数展開してきていたのだが、流石に対処が追いつかずに被弾してしまう。ダメージはあってないようなもんだが。


「ちぃっ、すばしっこい」


「そりゃ、犬だからな」


「だが、このまま押せば私の勝ちだ!」


 ふぅむ。これは、あれか?調子に乗っているとみていいのか?


 スピードは確かに速いが、麻耶ほどじゃない。近接戦闘もかなりのレベルではあるが、玲央と比べて天と地ほどの差がある。弾幕だって、全てを束ねて清明の一発分程度しかない。


 その程度の実力しかない、レミリアが俺に勝つと?


 伊達や酔狂であいつら狂人と一緒にいるわけではないんだぞ?


 しかも、月一で玲央に勝負を挑まれるんだぞ?酷い時は、他の二人も参戦するんだぞ?そいつらを相手にしている俺が、お前より弱いと言うのか?


「調子に乗りすぎだ、小娘」


「誰が、小娘か!」


「8尾解放」


「あ、な……」


 8尾を解放した瞬間、レミリアが動きを止める。顔も引き攣っている。


「大体がだ、玲央に散々トラウマを植え付けられといて、いつも一緒にいる俺に喧嘩を売るってのが、どういう意味か、分かってないな?」


「え、あ……」


「もう一度、そのちっぽけなプライドをへし折ってやる」


 そっと目を閉じて、押さえていた力を一気に解き放つイメージを固める。


「!」


「ひぃっ!?」


 目を見開いた瞬間に押さえていた力を一気に解放すると、レミリアが短い悲鳴を上げた。


「俺は他の妖怪と違って、ちょっと長生きをしすぎている妖怪だ。スペック云々は置いておいても……妖力量ならば、誰にも負けん」


 俺の言葉を聞いても、レミリアには届いていないようだ。口をパクパクと開閉しているだけで、反応はない。


「終いだ。犬符「犬坤一擲」」


 両手に溜めた妖力を、左右別々に放つと、レミリアはボロボロになって、地上で伏せていた。


「まぁ、なんだ……これやるから、元気出せ」


 仲間内では大人気の鬼殺しを気絶しているレミリアの横に置いて、本来の目的地である人里へと向かって、足を動きだした。


 思わぬところで時間をくっちまったけど、間に合って、楽しかった。

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