宴会フィーバー
「おうおう、なんか賑やかだな」
「おう、真理さんじゃないですかい」
人里へと食料の買いだしを頼まれたのでやってきたのはいいんだが、何やら店が閉まっており、広場で人里の連中が集まって何かをしていた。
春雪異変が終了して間もないが、既に桜は散ってしまっている……やべぇ、思い出したらまたムカついてきた。
「し、真理さん!黒いオーラが漏れているよ!」
なじみの酒屋の親父が冷や汗をかきながら何か頓珍漢なことを言いだしている。
「はっはっは、オーラなんてものが見えるわけ……見せれるな」
「出来るんですかい!?」
否定しようとしたんだが、出来なくもないと思い直り告げると、親父が心底驚いた顔をした。
「まぁ、俺も出来なくはないが、玲央が得意だぞ」
「へぇ、あのお方がねぇ」
想像がつかないのか、首を傾げる親父。まぁ、ここに来ている玲央はもっぱら大和撫子みたいな感じだからなぁ。
いや、俺と一緒の時はどちらかというと、快活な少女か?
とにかくとして、オーラがどうのこうのというイメージとは結びつかないような感じであるのは仕方ないだろうな。
あいつって、人間好きだし、弱者に対して力を振るうのは好かないからなぁ。
そう言った意味でも、あいつが妖怪の山を納めていたころは、よく天狗と喧嘩をしなかったもんだ。
天狗は逆で、強いものには媚びへつらい、弱い者には横柄な態度を取るからなぁ。
いや、昔からいる幹部連中はわりとそんなんじゃないか。
あいつらは、昔から麻耶のいい補佐役としていると言うから、麻耶と近しい感じがするし、移ったのだろうか?
まあ、昔から生きている妖怪ってのは偉そうなのか、はたまた、俺みたいに暢気なのかのどっちかだろうな。
俺に取っちゃ、偉そうにしてようが、どうしようが微笑ましいものだ。
「ほれ、こんな感じだよ」
「おぉっ!」
試しにやってやると、感嘆の声を上げる親父。ただし、周りには更に人が増えていたが。
「いいぞいいぞ!」
「もっとやれー!」
やいのやいのとまくし立てる人里の住人達。もともと、陽気な奴らが多い、幻想郷だが、今日は一際増してだな。
更に言えば、まだ夕刻というのに若干酒の匂いが住人たちから漂っている。
こんな時間から酒か?全くいい大人がこんな時間から……誠に結構なことだ!
「いいものを見せて貰ったんで、真理さんにも一献」
「おいおい」
酒屋の親父が盃を持ってきて俺に手渡してくる。
勧められる酒を断るなんてほど、俺は非情ではないので、注がれた酒を一気に煽る。
「お、新酒か?」
「気がつきましたか?ええ、この前、八雲様がいらしまして、とりあえず、酒の補充をしなければ、消されるとかなんとか言いながら置いて行きましたよ」
紫の奴は何をやらかしたんだ?まぁ、俺から言えるとすればグッジョブと言ったところだな。
日本酒が多い幻想郷に遂に焼酎が入りだしたか。
焼酎も出回ってきたし、今度は蒸留酒にも手を出すのもありだな。むろん、好みの酒を造るという意味で。
「それにしても、宴会なんてどうしたんだ?」
「はて?なんででしょう」
「おいおい」
親父の言葉に、今度こそ呆れてしまう。周りを見ても、全員が理由に気が付いていない。
まぁ、俺としては酒が飲めるならなんでも構わないんだが。
最近、あとりが厳しくて飯の時に飲むのは許してくれるんだが、午後から夕飯までの間は取り上げられてしまうんだよなぁ。
我が家の台所を預かってもらっている手前、強気に出られないし、何だかんだで数百年の付き合いだから無碍にも出来ないし。
まぁ、あとりが入れる茶も十二分に美味いからそれでも構わんのだがね。
縁側で二人で将棋を指しながら飲む茶も一興か。そこはやっぱり酒にしてほしいけど。
それに、ダメダメと言いながらも、たまには出してくれるからなぁ……あの、ツンデレさんめ。
その後も、宴会に参加し、気がつけば夜の蚊帳もおり、あたりが真っ暗になって解散という雰囲気になった時に、買い物に来ていたことを思い出し、必要なものを無理やり売ってもらって帰ったのだが、
「遅い。3日間、禁酒」
「すまなかった!だから、許してくれ!」
「ダメ。私も椛もお腹ぺこぺこだった。真理が帰ってくるのを待っていたのに、何やってんの?」
あとりの絶対零度よりもなお低い視線に俺は謝り倒すしか方法は残されていなかった。
「しょうがない。ただし、明日は禁酒。後、私の農園を手伝って」
「サー!イエッサー!」
そのあと、何とか許しを貰えたのだが、それでも一日の禁酒はつらいです。
それにしても、萃香は何をやろうとしていたんだろうか?意味もなく、村人を萃めるとは思えんのだが。
実は、風由家のヒエラルキートップはあとりです。物理方面なら確実に真理だけど。
そして、そんなあとりに嫉妬する玲央達w




