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東方転犬録  作者: レティウス
娘が頑張る妖々夢
101/115

STAGE10

前回で100話達成というのを知ったのは実は感想でしりました。


まさか、ここまで長くなるとは思いませんでした。

 椛と紫の対決は熾烈を極めていた。


 椛が太郎と花を使い、紫に対して接近戦を仕掛けるのに対し、紫はそんな椛を近づけさせまいと先ほどまでの弾幕が児戯と思われるほど濃密な弾幕を展開し、隙間を使い縦横無尽に攻め立てていた。


「くあっ」


 椛から苦悶の声が漏れる。


 紫から油断が無くなり、椛を同格と認めたからこそ、自力の差が現れ始めていた。


 幾ら椛が真理の娘であり、真理や幻想郷の理不尽共から教えを受けていたと言えど、そこはまだまだ500歳を超えた少女。


 1000を超える大妖怪の一角である紫にはまだ及ばない。


「ああぁぁぁっ!」


「つぅっ」


 しかし、多少のリスクは覚悟の上で突っ込み、紫に肉薄すれば、それは確実に紫にダメージを与えるものであった。


「山窩「エクスペリーズカナン」」


 椛がスペルカードを宣言すると同時に、紫の周辺に多数の弾幕がまるで包囲するかのごとく、展開される。


 紫は迎撃するか、回避するかを一瞬悩んだが、下手な消耗は避けようと隙間を作り回避を選択した。


「逃がしません。行きなさい!」


 しかし、一瞬の思考により動きが固まったのが悪かった。展開された弾幕は、紫に向かって急速に迫っていく。


「速い。けど……」


 避けられない速度じゃないと思いながら、隙間に逃げようとしたが、流石は真理の娘か。こういった場面での戦術眼はそれなりであった。


「あぁぁぁっ」


 避けようとする紫に、椛の弾幕は一か所に固まり、その力を爆発させ、その余波で紫にダメージを与えるのだった。


「この機は逃しません!」


 チャンス到来と、椛はダメージを喰らい動きが鈍っていた紫に一気に肉薄していったが、


「まだまだ甘いわね。魍魎「二重黒死蝶」」


 大妖怪の名は伊達ではないのか、近づいてきた椛だったが、紫が作った蝶の姿をした弾幕をもろに受けてしまう。


 ギリギリで撃墜は逃れたものの、流石の椛も今の一撃は痛かった。


 もともとが実力に差がある相手と戦っている分、ダメージは必要以上に受けてはならない。受けてしまえば、もともとあった実力差が更に深まるためである。


「ここまで強いのに、なんでそこまでグータラなんですか」


「うっさいわよ。いいじゃない、自分が楽をしたって」


 苦々しい表情をしながら、もらしてしまう愚痴。それに律義に付き合う紫は余裕がある表情だ。


「さてと、幻想郷の異変の内容も把握しなきゃいけないし、ここら辺で終わりにさせてもらうわよ」


「望むところです」


 そういうと、椛は太郎と花を呼び戻し、全てを自分に還元する。


 すると、先ほどまで死に体に近かった椛の全身に溢れんばかりの力が駆け巡る。


 今まで消し飛ばされずに紫の弾幕を喰らい続けてきた太郎と花が有す妖力はかなりのもので、還元した結果、元の椛を超えるほどの量に達していた。


「これなら……!」


 そのことを感じ取った椛の顔には希望が生まれる。


 方や紫はというと、その事実に思わず舌打ちをしてしまっていた。


 太郎と花が自分の弾幕を喰らい、その力を自身に還元し、最終的には椛に還元されることは分かっていたつもりだ。


 だからこそ、目障りなあの二匹は早々に潰すつもりだったのだが、そちらに気をまわしてしまえば、椛を相手取るのが難しかった。


 ゆえに、最後の最後で勝負はどう転ぶかが分からなくなってしまったのであった。


(油断しないと言ったのに、こうなってしまっては、結局油断したってことなのよねぇ)


 舌打ちした時の苦々しい顔から一転、今度は苦笑い気味に自嘲する紫であった。


「これで終わりよ!紫奥義「弾幕結界」」


「それはこちらの台詞です!狗符「犬坤一擲」」


 魔法陣が現れ椛を囲うかのように回転しだすと、そこから次々と弾幕が現れ出し、椛を追いつめる。


 そんな椛は攻撃を行えず、回避に徹するしかなかった。


「どうしたのかしら?終わらせると言いながら、さっきから回避ばかりじゃない」


「黙りなさい」


 そう言いながらも椛は反撃をしてなかった。理由は単純である。


(思った以上に溜めるのに時間がかかりますね)


 実は、あの時かっこよく言った椛だったのだが、自身の総量を上回る妖力を使用するのは当然初めてであり、かつこれから行う攻撃に対しても、初の試みであるために制御に苦労しているのであった。


 椛にとっては1時間とも2時間とも言えるような時間が流れたと思った時、ようやく紫の弾幕の勢いが弱くなってきたのであった。


 それと同時に椛の準備も完了したのであった。


「喰らいなさい!」


 術の制御をしていた紫に対し、右手をつきだすと、魔理沙のマスタースパークと酷似した太い光線が紫に向かって突き進む。


「くっ」


 直前に嫌な予感が過ぎ去った紫は術の制御を放棄して何とか回避に成功するも、体勢を崩しどうあがいても隙間に逃げ込むという行為は出来ない状態になってしまっていた。


「これで!」


 そんな決定的な隙を見逃すほどバカでない椛は、今度は左手をつきだすと、先ほどと同様な太い光線が紫に向かって飛んで行った。


「あ、あぁぁ!」


 流石に回避できないと踏んだ紫はこの攻撃を何とか結界を張ることにより防御に成功する。


 しかし、今の一撃で結界は完全に罅が入ってしまっていた。また、紫も先ほどの弾幕と今の結界で余力まで使い果たしてしまったのか、既に体はガクガクであった。


「本当の終わりです!」


 先ほどの位置より更に上昇した椛は、足を振り上げると、なんとそこから、先ほどの太い光線が再び発射されたのであった。


「きゃぁぁぁっ!」


 余力まで使い果たしてしまった紫に残っていたのは罅割れた結界のみ。しかも、先ほどの光線よりも更に強力だったためか、結界など簡単に破壊して、ついに紫に直撃したのであった。


「これで……」


 にやりと笑った椛はそのまま意識を失い地上へと落ちて行ってしまった。




「まじかよ」


「あいつ、本当に紫さまを倒したのか」


 椛と紫の戦いを見ていた面々は、唖然とした表情をしていたのだった。


「とりあえず、二人を回収してきたのだー」


 唖然としている面々を放って、ルーミアだけは平常運転といった具合に、空から落ちてきた二人を回収して、部屋へと運んだのだった。


「最後のあれなんだよ。流石の私でも3発もマスタースパークなんてできないぜ」


「出来てたまりますか。それに、あの魔方陣は……パチュリー様に聞いてみますか」


 魔理沙と咲夜は先ほどまでの戦いの感想を言い合っていたが、唯一霊夢だけは難しい表情をしていた。


「どうしたんだ、霊夢?」


 そんな霊夢に気がついた魔理沙が首を傾げながら尋ねると、考え込んでいた霊夢は、藍のほうへと顔を向けた。


「ねえ、あんた」


「なんだ?」


「あいつの親が真理って本当かしら?」


「そうだが?」


 何がいいたいのかさっぱりな藍は、怪訝は表情をすることしかできなかった。


「ねぇ、その真理とさっきの紫だったかしら?それが、戦ったらどっちが勝つかしら?」


「真理だな」


「真理なのだー」


 即答であった。仮にも彼女の式であるはずの藍が、主の可能性を信じないで、完全に言いきったのであった。


「そう」


 それだけ聞くと、霊夢は再び考え込んでしまった。


「まぁ、あいつが直接動くことなんてあるまいよ……喧嘩を売らなかったらな」


「何だかんだで真理は、売られたケンカを10倍にして買う奴なのだー」


 傍迷惑な奴だと二人して笑うが、周りは笑えなかったり、よくわからなかったり色々であった。


「いたた、流石に紫さんレベル相手だと疲れました」


 そんな微妙な空気の中、目が覚めたのか、椛が現れた。その手には、簀巻きにされた紫を引きずっていたが。


 ちなみに紫はまだ起きないようでがっつりと寝ていた。


「ふむ。強くなったな椛」


「ありがとうございます」


 あるが散々な目に合っているのにも関わらず、そこには触れずに先ほどの戦いの感想と告げる藍と、それを受け礼を述べる椛だった。


「しかし、驚いたぞ。真理の技を使えるとはな」


「もともと両腕で使えはしたんですよ。足の一撃は流石に妖力が足りなかったり、制御が難しかったりと理由があるんですが」


「そもそもが、足から砲撃とか訳が分からん」


「お父様はもともと足技が得意ですからねぇ。その反動じゃないですか?」


「んなバカな……といえたら、いいんだがな」


「ですねぇ」


 二人して遠い目をする。幻想郷の理不尽たちは、常識に囚われない。


「さてと、霊夢さん達もそろそろ行きますよ?時間が本当に無くなりそうです」


「だな、とっとと行って止めてきてくれ」


「命令しないで頂戴」


 それだけ言うと、霊夢はずんずんと玄関まで歩いて行ったのであった。

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