旅支度
さて、どこに着地させようか・・・・!
徒歩で王都まで歩いて帰る僕達勇者一行は道中モンスターに襲われることもなく城へと着くことが出来た。
帰るだけでも歩き疲れた僕たちには王様に報告をするという義務があり、クルエルさんに案内してもらい王様に聖剣を見せた。
ホープが見世物ではない!と憤慨していたが僕は早く休みたかったので王様にたっぷり視姦させた。
本当は庇ってやっても良かったけど彼について話そうとしない罰だ。
そして翌日、一週間以内には他国に行くことを許可され、ハンターの仕事をしつつ旅費は自分で稼いで装備を充実させるように言われた。
王国からの支給は一切するつもりがなさそうだ。
大臣は寂しくなった頭部をさすりながら僕たちに言い放つ。
正直、この国の装備で他国に行けば十中八九舐められるのでやめておけ。と
流石は平和ボケの国といったところだ。
武器の質が悪いので他国で購入する方が戦力にはなるだろうとのお言葉。
だけど一応新調はしておこうと思う。
これから旅立つっていうのに武器が壊れちゃったらどうしようも無い。
僕には聖剣があるから良いとして、タニアさんの武器は調達した方がいいだろうな。
前衛だしね。
一番いい店はどこかクルエルさんに聞いてみる。
お勧めはギルドに一番近い武器屋だそうだ。
鍛錬所にいるタニアさんを連れてその武器屋へと向かってみた。
タニアさんの武器を買うんだから本人に選んでもらった方がいいだろうと考えたのだ。
だけどタニアさんの気に入る品は無かったようだ。
諦めて次の店に行こうとしたとき、店主に呼び止められた。
「兄ちゃん、ここから西に行ったところに鍛冶屋があるのを知ってるか?」
「いえ……町に詳しくないので……」
「グランっていう俺の幼馴染がやってた店でな、バレンタイン工房ってんだ」
「はあ……」
「そこなら、注文どおりに武器を造ってくれる筈だ。ま、以前より質が落ちているだろうがな」
タニアさんにそれでいいか聞くと構わないといってくれたので行ってみよう。
質が落ちたとはいえオーダーメイドで造ってくれるのはいいな。
そのほうが手に馴染みやすいだろうし。
「あ、いらっしゃい!シノブー!お客さんよ!」
「ぅえ?私!?それはリリーの仕事だろ?」
「あ、そうだったわね。ごめんなさい」
「ああ、ほらお客さん来てるんだろ?ちゃんと接客しないと……」
バレンタイン工房に行くとあのパーティでみた女の人と柚木君と同じタイプの地味な男の人が居た。
柚木君のほうが何倍も魅力的だけどね!!
いや、僕は地味な男の人が好きって訳じゃなくてどっちもあまり好きじゃないんだけどね。
だって僕男の子だけど女の子だから実はどっちも苦手……。
「(理想と現実……いや、名を落とした弊害で雰囲気すら変わって居るのか?)」
「(どうしたの?)」
「(なんでもないぞ。拙者、嘘は好かん。好かんだけで偶に言うが)」
ホープはよく独り言を言う。
声が聞き取りにくいけどなにか重要そうなことを言ってそうで気になる。
「それで、何が欲しいの?」
「あ、うん。タニアさん」
「そうだな……丈夫で刃毀れしにくい剣が欲しい」
「えーっと……うちには置いてないわね……2日あれば造ってみせるけど?」
「それでいい」
「重さとか形の指定ある?」
「いや、任せるよ」
「うん!シノブー!」
「リリー……私は始めたばっかりで打ったことないんだけど?」
「えー?そうかなー?」
「そうだよ……勘弁してくれ」
武器の話は全くついていけないから入っていけない。
僕にはホープがあるから別にいいけどね。
「それじゃあ、2日後」
「ああ、頼む」
「うん。じゃあ材料費込みで7500円よ」
高い……給料3か月分で購入したものがタニアさんの武器とほぼ同価格とは。
「お金は受け取りの時に払ってくれたらいいわ」
「リリー、駄目だろ?持ち逃げされたらどうするんだ?」
「大丈夫、そんなことするようには見えないもの」
「グレイ……頑張れ……!」
「どうしてグレイがでてくるの?」
お金は後払いで良いそうなので2日後までには7500円。いやそれ以上は稼いでおきたい。
「タニアさん、僕はクエスト受けに行くけどどうする?」
「討伐なら行くさ」
「そっか。じゃあ行こう」
他の二人は呼ばなくても別のクエストを受けに行くだろうし心配はいらない。
個人的にはグラニアちゃんがとっても心配だけど。
そしてギルドへ。
ギルドで斡旋しているクエストを見るのは初めてだ。
ざっと見ただけで500はくだらないほどの数だ。
これだけでD級だというのだから更に驚きだ。
すぐに終わらせることが出来るクエストは数が少ない。
例えば採取だと場所さえ知っていれば往復4時間かからないかも知れないが場所にもよるし、護衛などの依頼は確実に数日かかる。
これらを踏まえ条件にあうクエストを探す。
「これなんかどうかな?」
そういって僕が指を刺したのは……
『コボルト討伐クエスト』
難易度:D
※備考:コボルトの遠吠えが五月蝿くてかなわん。討伐してくれ。ああ、ついでに弟子の練習用の剣にコボルトどものつかう剣が欲しい。コボルトの巣にいって奪ってきてくれ。
討伐証明部位:コボルトの犬歯
場所:王都周辺の森林
依頼:コボルトの討伐・コボルトの剣3本~
依頼人:鍛冶屋の店主
依頼達成報酬:1000円~
というクエストだ。
「阿呆か、こっちに決まってんだろ」
『オーク討伐クエスト』
難易度:D
※備考:醜いオーク共が俺達の村の近くに住みつきやがった。心配で村から出られない。やつらを退治してくれ。
討伐証明部位:オークの耳
場所:ファーク村周辺
依頼:オーク討伐
依頼人:ファーク村の若者
依頼達成報酬:2300円~
なんだか円で換算してるからか報酬がとても少なく感じる。
だけどこれって多い方……なんだよね?
「オークか……ナイトオークよりは弱いだろうな。じゃあいこうぜ」
「え?あ、うん」
円表記は助かるんだけどなんだかしょぼいなぁ……。
腑に落ちない思いで報酬額を見ていたけどタニアさんが急かすのでフォーク村へと向かった。
やっぱり円はないよ。
魔王討伐の所まで端折ったら怒られそうなんでやめておこう。
まだ分体が2人居るわけだし。
ファンタジーでの通貨の呼び方が円ってなんか嫌だ。
元も嫌だけど。せめてユーロとかドルとか……




