召喚された美男子(?)
優は頭がいいのです。
ただ寝の頭がよろしくないので馬鹿に見えるだけなんです。
「おお、成功だ!!」
初めて聞いた声は男の人の声だった。
「あの、ここは一体……?」
「勇者様、説明は後です。先ずはご自身の力を調べましょう」
そこからは何が起こったのかあまり覚えていない。
ただ、頭に響くような声が聞こえてきて力が湧いてきたのは覚えている。
Skill get
NEW『勇者』
NEW『カリスマ中』
NEW『恋する乙女』
NEW『初級魔法』
そして、気がついたときには鎧を着せられて、王様に会うように言われた。
「王様、ですか?」
「はい、先ほどからお待ちしております」
男の人に問答無用で連れてかれた。
王様はいかにもって感じの威厳のある厳つい顔に顎鬚の老人だった。
「ほう、そなたが求めに応えし勇者か」
「……え?あ、はい。そうらしいです」
「そうか。女子のような顔つきをしておるがさぞ強いのであろう」
「あ、あの!」
「む、なんじゃ?」
「僕は何で呼ばれたのですか?」
「……説明をしておらんかったのか?ふむ、ならば説明しよう。クルエル」
「は。……勇者様。あなたが呼び出されたのは魔王に対抗するためです。魔王は過去にも現れ、魔物を操り我々人間を殺していったのです。そして我々は魔王に勝てる者を呼び出そうと神から魔法を授かったのです」
「それが……」
「はい。『勇者召喚の儀』です。この召喚術は勇者様の同意なしに呼び出してしまいます。なので、勇者様がこのお話を断っても構いません。再び別の勇者様をお呼びいたしますので」
「別の人に……?」
「ええ。ですが、この世界に勇者と魔王は1人だけと決まっているのです。『勇者』のスキルを持つ方は1人だけしか存在できません」
「断ったら殺すつもりですか?」
「……良い返事を期待しております」
「……わかりました。勇者になります」
「説明は終わったか?」
「ええ」
「そうか。では勇者よ、これより暫くの間はこの国で訓練を受け、力を蓄えよ」
「1つだけ、お願いがあります」
「……申せ」
「人を探しているんです」
「探し人か。名は?そもそも異世界であるこの地にいるのか?」
「はい、います。名前は中西柚木。僕の大切な人です」
「よかろう。では、手配しておく」
王様との会話は緊張した。
頭下げなきゃ、とか。
敬語使わないと駄目かな?とか。
でも、すんなりと終わった。
柚木君を探してもらえるみたいだし、良かった。
「勇者様。こちらへ……」
謁見の間から出るとクルエルさんに呼ばれた。
訓練場でどの程度戦えるのか調べるらしい。
結論から言えば、僕は勝った。
勝利といって良いのかわからなかったぐらい圧勝だった。
兵士200人とかいってたけど、皆僕に攻撃を当てることすら出来ないで投げられた。
相手の動きが良く見えた。
力の流れが簡単に掴めた。
今まで出来なかった動きがいとも容易く出来たのだ。
合気が実践でこんなに使えるものだとは思わなかった。
合気道は実際に戦ったら空手のほうが強いのだ。
「見事です勇者様。200人もの兵士を吹き飛ばすなど……どのような魔法を使ったので……?」
「え……ただの格闘技ですけど……」
「な……!……それは素晴しい。それでは次は武器を持っての訓練です。私自らお相手致しましょう」
次の訓練は武器を使うらしい。
でも、僕の得意な日本刀はなかったので仕方なく剣を持った。
「さあ、始めましょう!」
クルエルさんが斬りかかって来る。
刃は潰してあるけれど痛そうだ。
今の私にはその攻撃がゆっくり見える。
流れに合わせて擦れ違いざまに斬り付ける。
「ッグ!!やりますね。さすがは勇者様です。ですが私はこの国で1番強いのです。負けてはいられません!!」
クルエルさんは強いらしい。
でも、僕には弱く感じる。
僕は攻撃を受け流し、背中を斬りつけ、首に剣を突きつけた。
「……なんと……お強いですね。完敗です」
「降参……という意味ですか?」
「ふふ、……はい。参りました」
クルエルさんはとても弱かった。
もしかしたら僕が強いのかもしれないけれど。
僕が強くなってるんだとしたらきっとスキル『勇者』のせいだと思う。
「素晴しいです、勇者様。これならば直ぐにでも魔物を退けられるでしょう」
「はあ……」
「おそらくですが、7日後には勇者様のパーティの選抜が終了して、すぐにでも聖剣を抜きに行くことが出来るでしょう」
「聖剣ですか?」
「はい。聖剣は勇者にしか抜くことも扱うことも出来ずに、聖剣を持った勇者は更なる力を得ることが出来るそうです。勇者様は今よりもずっと強くなれることでしょう」
どうやら僕はこれ以上強くなるみたいだ。
クルエルさんってこの国で一番強いらしいし、そんな人を無傷で倒せる僕がもっと強くなっても勝てないほど魔王は強いのだろうか。
「それでは勇者様、今日はもう疲れたでしょう。侍女をお呼びしますので少々お待ちを……」
今日は色々な事があり過ぎた。
僕は部屋に案内されてすぐに眠りについた。
柚木君。
必ず、君に会いに行くからね。
彼を探すために勇者となって魔王を倒すストーリーの始まり……
優が強い理由は『勇者』のスキルのおかげではないです。
それだと柚木を更に強くしてしまうので条件付の強化スキルです。




