表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ご主人様と使い魔な私

作者: 弦巻桧
掲載日:2010/09/20

ノリと勢いだけで書いたので、ファンタジー設定が死んでる気が……。

R15は念のため。

気楽~に読んでくださいね。

 朝、目が覚めたら、そこは自分の部屋ではありませんでした。

 目の前に、金眼金髪の超絶美男子がいました。

 何が何やら分からぬままに、契約とやらが済んでいました。

 そして今、私は彼の使い魔です。



 どうやら私は現代日本から、魔法や魔物が存在するという、非常にファンタジーな世界へと召喚されたようです。それも、この金髪美青年――アレックス様の使い魔として。

 

 大衆娯楽小説の一ジャンルとして、異世界トリップなるものが存在することは私も知っていました。

 でもまさか、自分が実体験することになるとは思いません。というか、それは誰でもそうですよね。

 

 しかも、私は「使い魔」として召喚されちゃったので、ご主人様には何らかの働きを期待されておるわけですよ。魔法の魔の字も知らない普通の人間なのに、ですよ。

 異世界トリップのお約束通り、なぜか言葉が通じている点だけは救いでしょうか。



 まあ、いざとなったらとりあえず、手近にあるもので物理攻撃するくらいはできます。

化学実験も得意でしたし。科学と馴染んできた現代文明日本人なめんなよー、なのです。


「またそんなワケの解らん言い訳をして。お前からはちゃんと魔力を感じる。

 魔法を使えるはずだって言ってるだろう。

 せっかくこの俺様が、懇切丁寧に指導してやっているというのに」


 アレックス様が、至近距離で私の顔を覗き込んできます。

 ご主人様はどうやら、パーソナルスペースが人一倍狭い方のようです。

 何か気付いたら凄い近いとこにいます。偶にうっかり、体が密着してる時もあります。


「どこが懇切丁寧なんですか。

『イメージしろ。そんで掌にグーッと力を込めるんだ』じゃあ、アバウトすぎます!」


 私はご主人様から精神衛生上、安全と思われる距離を取りながら抗議しました。


 


 異世界人を使い魔にするというのは、この世界でも稀なようです。

 普通、使い魔は契約が解除されれば自分で家に帰るそうなんですが、私に異世界からの帰り方なんて分かるわけがありません。

 だから、私は帰る方法が見つかるまで一時的に、アレックス様の使い魔のままでいさせてもらうことにしました。

 魔法学校の学生が持てる使い魔は一人につき一体のみなので、彼には不便を掛けますが。


 使い魔を異世界から呼び出すって、一体どんな強力な魔法使いなんだろと思っていたら、彼は実はまだ学生さんだったんですねえ。

 魔法学校時代に呼び出した使い魔とそのまま一生を共にする人も多いそうな。


 ちなみにこの魔法学校、全寮制で、生徒は男子オンリーでした。

 そう聞いて、女子はどこ! そんなむさ苦しそうな、潤いも華も無いところ耐えられなーい! と思ってしまいました。

 が、豈図らんや、潤いも華もちゃんとありましたよ~。

 この学校、顔面偏差値重視してるの? ってくらい美形がうじゃうじゃいます。

 

 まさかこれがこっちの世界のデフォルトなんでしょうかね。

 ……ちょっと、誰か髪の毛一本、細胞の一つでも分けてくれません? 丁寧に元の世界に持って帰って、遺伝子解析してもらいたいので。……だめかなあ。




 さて、ご主人様が授業中、私たち使い魔は寮でお留守番です。

 今日は、ご主人様のルームメイト・草食系なジャックさんの使い魔である、ドラゴンのエリーちゃんと一緒に寮の探検をすることにしました。


 エリーちゃんは体長四十センチの小型のドラゴンさんです。

 本名はエリシアちゃんというのですが、私は愛を込めてエリーちゃんと呼んでます。この世界での唯一の女友達ですからね。

 彼女とは、神通力で会話をします。愛ゆえのテレパシーだと私は思っていますが、彼女は認めてくれません。くすん。


 無駄に広い廊下を、ひたすら歩きます。右側には扉、扉、扉。

 左側は窓があり、得体の知れない樹木が繁茂して……あ、これマツの木に似ていますね。得体が知れないことも無いかもしれません。

 

 採取したいな~。エリーちゃん、ちょっと取ってきてくれません?


(植物を虐めるのは妾の趣味ではない)


 すげなく断られました。そうですよねー。



 マツもどきに後ろ髪惹かれながらフラフラと歩いていたら、何やらいいにおいがしてきましたよ?

 

 嗅覚を頼りに辿り着いたのは、食堂でした! いかん、涎が……。


 何を隠そう私、こちらの世界に来てからまともな食事はしておりません。


 使い魔の餌はご主人様の魔力、というのが普通だそうです。

 私も一日二回、掌から注ぎ込まれるアレックス様の魔力で生命維持しています。

 実際それで、空腹感も消えてくれます。


 でもやっぱり、それとこれとは別だと思うんです。本当に、文字どおり別腹ですよね。


 食堂の調理師のお兄さん――これまたなかなかの美形なんですよね――が、物欲しそうにしていた私を見かねて、甘いお菓子をくれました。

 美味しいです。嬉し過ぎて涙出そうです。


「ありがとうございますー! やっぱり食事は口からしなきゃだめですよね!」


 私はこの後この発言を、死ぬほど後悔する羽目になります。




 なぜか、この日部屋に戻ってきたご主人様は、とっても不機嫌でした。

 触らぬ神に祟り無しとばかりに、私もエリーちゃんもジャックさんも、アレックス様の半径二メートル以内には入らないようにしていました。狭い部屋なので限界はありますが。


 そうしていたにもかかわらず……ぎゃーご主人様と目が合ってしまいましたぁぁぁマイナス273度の視線です絶対零度です凍ります動けませんさては魔法ですねーー!!


 パニクって固まった私に、ご主人様が近づいてきます。

 じりじり後退、しようにも後ろはもう壁です。

 え? え? なんでですか私に怒ってるんですかご主人様ー?


 私の顔の両側、壁に腕を突くご主人様。うわあ逃げ道断たれましたー。


「菓子ぐらいで釣られるとは、お前は本当に子供ガキだな」


 なんで食堂行ったことがばれてるんだろうってのも疑問ですが、とりあえずガキ呼ばわりは聞き捨てなりません。


「……一応、十八歳なんですけどね……」


 情緒面でも身体的にも成長が遅れていることくらい自覚はしています。

 でもそれとお菓子貰ったことと何の関係が? 好意でくれてる物を無碍には出来ません。

 だいたい、甘いお菓子が目の前にあって食べないなんて、勿体無いですよ。お菓子が泣きます。


「ふーん」


 思案顔になったアレックス様。

 その目が一瞬光った……ように見えたのは気のせいですか。


「お前、食事は口からしたいと言ってたよな」


 あれ、なんかご主人様が飢えた猛禽類に見えます。

 何ですかその獲物を狙うような目は。


「えっと、魔力を注ぐのは掌が良いのでは――」

 

 ご主人様がニヤリと笑いました。

 美形さんはそんな顔も様になりますけど、見惚れてる場合じゃないです!


「お互いの体の一部が密着していれば、どこでもいいんだ。例えば口と口でもな。

 ――密着度合いが高ければ高いほど良い」


 ちょっと待ってちょっと待ってーー!?

 抗議すべしと開いた口は、あっという間に塞がれていました。



 なんだか、魔力をもらったというより、吸い取られてしまった気がします。

 こっちは経験値ゼロだというのに、なんでいきなり舌とか入れちゃうんですかー!?


 後から、エリーちゃんとジャックさんも同じ部屋に居たことを思い出して、また凹みました。

 エリーちゃんはニヤニヤしてるし、ジャックさんは真っ赤になって目を合わせてくれません。

 いや、恥ずかしいのはこっちなんですけどー。


 でも何が一番恥ずかしいって、あんな強引なキスをちょっと気持ちいいかもとか思ってしまったことですよ。

 わあぁ今すぐ穴掘って埋まりたいよぅ。


 一人悶絶する私をよそに、ご主人様は余裕綽綽、無駄にフェロモンを放出しています。

 それだけでもう十分有害だというのに、流し目でとどめの一撃がきました。


「『甘いお菓子が目の前にあって食べないなんて、勿体無い』よな?

 ……そのうちたっぷり啼かせてやるから、覚悟しとけよ」


 貞操の危機を感じました。

 もしかして、ご主人様って猛禽類じゃなくて大型肉食哺乳類ですか?

 あの、私なんて甘くも美味しくもありませんよ?

 そう言っても、ご主人様は人の話なんて聞いてないようです。


 真剣に、元の世界に帰る方法を検討しなければ……。

 いやその前に、魔法を覚えて自衛する方が良いのでしょうか。って、それでご主人様に勝てるわけ無いんでした。




 夜です。良い魔法使いも悪い魔法使いも寝る時間になりました。

 ……私はご主人様の抱き枕状態です。がっちりホールドされております。

 昨日までは隣にいても、こちらに背中を向けて眠っていらした気がするんですけどー?

 どこで壊れたんですかアレックス様。


 さっさと眠ってくれたのは良いですが、これじゃ逃げようがありません。

 それに、私は眠れません。

 パジャマの薄い布越しに伝わるご主人様の体温とか、細っこく見えるのに意外と鍛えられた胸板ですとか。

 意識してはいけないと思うほどに感覚が研ぎ澄まされるのはなぜでしょう?


 心拍数・脈拍ともに異常な上昇をみせています。

 人間が一生に刻む鼓動は限られているそうなので、これで確実に私の寿命は縮みます。

 ああ、もしやこれが、死亡フラグというものですか?




 私は夜に眠れなくなったので、鬼畜が居ない昼間に眠ることにしました。

 そうして部屋から出なくなった私に、ご主人様が溜飲を下げていたことなど、この時の私は知る由もないのでした。


 一体、何のための使い魔なのか、私は今自分の存在意義に悩んでいます。

 というかこれでは、元の世界に帰る方法を探す暇もありません。

 窓から見えるマツもどきに郷愁を感じつつ、今日も私はとりあえず生きています。

主人公の名前を出すのを忘れた……。


「偶にうっかり、体が密着」……それはもはや、パーソナルスペース云々の問題じゃないよ。


「私」は時々使い魔らしいこともやってる、はず。

……アレックスは、男だらけの学校に彼女を呼び出す気は無いけど。


アレックス、年頃の男子にしてはよく耐えてるほうだと思います。

でも、「私」を元の世界に帰す気なんて、さらさらありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ