偽物の偽物になった私:両親は私を捨て、影武者を本当の娘にした
私は「偽物」の「偽物」だ。
王や大名にそっくりな人物を、暗殺対策や混乱防止のために、
本人の代わりとして別の者が、その代わりを演じる「影武者」というのがある。
いわゆる「偽物」だ。
私も、高貴な血筋で生まれてしまった為に、私にも「影武者」がいた。
市位から、無理やり、連れて来られた、その娘は、私、ソックリだった。
この世界は、ある意味、実力主義だった。
魔力というものが存在している世界。
感情が揺さぶられると、そこに魔力が乗って、大きな力を発揮する。
しかし、未だ、魔力を制御するという方法が、見いだされていなかった。
故に、魔力が高い人間の感情を刺激したなら、
殺されても、仕方がないという流れになっていた。
防ぐ方法などなかったからだ。
だから、魔力が高い人間による、悪事や殺人は、不問とされた。
そこで、この世界では、処世術として、
魔力が高い人間を、高貴な人間として崇めるようになった。
それゆえに、魔力を持つ者ほど、神に認められた「高貴な者」とされた。
(正しくは、逆らってはいけない者、とされた)
この魔力は、同じ血を引いていれば、その力が、色濃く出る。
……という事になっていた。
この世界では、高貴な者は、高い魔力を持って生まれているが為に、
高貴であると、民にも、貴族にも認められ、尊敬と畏怖で見てもらえるのである。
実際、私も、他の貴族たちと比べ、2倍くらいの強い魔力を持っていた。
私のお父様や、お母さんが、他の貴族たちと比べ、
1.2倍くらいしか違わなかった事に比べると、破格の能力と言えた。
だからこそ「影武者」まで、用意され、大事に育てられてきた。
しかし、ある日、私の「影武者」が、
魔力測定を迫る貴族たちから、半ば強制的に魔力測定をされた。
彼らは、彼女が「影武者」である事を、半ば確信を持っていた。
そして、私そっくりの彼女なら、乱暴しても、
しょせん、偽物だから、自分たちには、害が及ばないと考えていたようだ。
魔力が高い人間による、悪事は、不問とされていたからだ。
魔力が高い人間は、
その人間の思いひとつで、カンタンに人を殺せてしまうからだ。
怒りや、妬みなどを抱こうものなら、それは、もうカンタンに……。
だからこそ、畏怖の対象なのだ。
故に、彼女は、これで、自分の人生が終わったと思った。
けれど、結果は、他の貴族たちと比べ「桁が違う」魔力を秘めていた。
魔力測定を迫った貴族たちは、この圧倒的な魔力差に、ひれ伏し、
それまでの非礼を詫びるしかなかった。
彼女が、少しでも、
自分たちに、悪意を持ったら最後、自分たちの命がないのは明らかだ。
この世界には、魔力を制御する方法が、確立されていないのだから…。
この1件以来、私は、周囲から、圧倒的な畏怖の目で見られるようになった。
そして、それは、私の家族も同じで、
私の家族は、彼女の事を、畏怖の対象として崇めるようになった。
その結果、彼女は、これまでと一転、
身代わり役から、保護すべき対象と、様変わりする事となった。
そして、私の両親は、
彼女を、本当の自分たちの娘とし、私を、彼女の「影武者」とする事とした。
私は、これまでと同じように「影武者」と同じ「私の名前」で呼ばれる。
異なるのは、私が「偽物」の「偽物」という存在になった事だけだ。




