朧幽学園の第二学年スタート《第壱章 地域編》
僕は決心した翌日、始業式に向かった。
井伊直正――その魂を胸に秘めて僕の”普通”が静かに姿を変化させていく。
そして、能力測定器の能力に刻まれていた”????”
それはまるで、これからの出来事を予見しているようなそんな感じがする。
顔なじみの澄花との久しぶりの登校。
学吸委員への入部もこれから現実味は帯びていくだろう。
僕はまだ、これから歩んでいくべき道を完全に掴むことができていない。
――だけどこれだけは絶対に曲げるわけにはいかない
”ピースエンド”
これは僕がそんな”ピースエンド”をつかむための物語。
憑霊者として、一人の人間として、学園から始まっていく”吸収戦”――
その”第二学年”の幕開けとなる。
無事に学校に間に合い、始業式に出席をした。
僕が通っている学園の校長先生の話はほかの学校とは違って短い……らしい。
――始業式、校長挨拶――
近年、世界は変わってしまった。
憑霊病――それは病ではない。才能であり、偉人の魂に選ばれた証明だ。
恐れる必要はない。恐れるべきは、力を持ち、どういう道を進むかです。
学校は、守られなければ消える。
君たち一人ひとりの存在が、この学び舎の未来を決める。
戦うか、失うか。その選択を先延ばしにする余裕は、もうない。
安心してほしい。
君たちは一人ではない。我々教師が導く。
正しい力の使い方を、正しい敵を、そして「生き残るための覚悟」を。
さあ、新しい日常を始めよう。
これは教育だ。
そして――生存競争でもある。
これで終わります。
その背中を見送りながら、俺は心の中で繰り返す。
――絶対に、教師たちの言いなりにはならない。
「さてここからは、今年度のことについてです」
と前置きを言った教頭先生の説明が行われた。
主な内容としては、新しくこの学園にも憑霊者が現れたことによる、ちゃんとした学吸委員の活動開始のこと。
後は、3日後に近くの学校と”吸収戦”を行うということだった。
吸収戦――言葉だけで、喉の奥がひりついた。
始業式が終わった直後の教室は、妙に静かだった。
いや、殺伐としているわけではない。ただ、話し声が前より小さくなっている。
だが、誰も前を向こうとしない。机に伏せる者、窓の外を見つめ続ける者、意味もなくスマホを握りしめている者。そっちのほうが多いのだ。始業式で校長が語った「生存競争」それが今の真っ暗な現実を突き刺しているような感じがした。
始業式の壇上で、はっきりと言われた。
――今年度より、憑霊病発症者を含む全生徒は学吸委員の統治下になる。
「……結局さ」
誰かが小声で言った。
「俺たち、もう普通の生徒じゃないんだろ」
返事はなかった。
否定できる者が、誰もいなかったから。
黒板の前に立つ担任教師は、始業式の時と同じ表情をしていた。
だが、さっきよりもさらに冷たい。感情を切り落としたような目で、出席簿をめくっている。
「憑霊病の診断が確定した者は、後で名前を呼ぶ」
その言葉に、数人の肩がびくりと跳ねた。
僕は何も怖気づかない。もう覚悟をしたから。
始業式の間、ずっと胸の奥がざわついていた。まるで、目の前の状況に大きな壁が立ちはだかっているような。
『……3日後に吸収戦か。ちと、早い気がするんだが』
「先にそのセリフ言わないでもらえます」
直正さんが先にその事実を言ってしまった。
僕だってそう思う。……早いじゃん。
恐怖よりも先に、奇妙な「覚悟」が湧いてくるのが、何より怖かった。
「……それでは名前を言っていく。朱熨宮、雲鷺、住、以上はこれから空き教室に来てもらう」
そういわれて、僕たちは、空き教室に来た。
「……きたねぇな。この教室」
見渡す限り、埃まみれだ。
とりあえず、ここを掃除してからだな。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
「始業式」という日常の中に、この世界ならではの要素が加わってきて、書いていて「この世界……大丈夫か?」ってなりましたね。
校長の言葉や、静まり返った教室の空気から、少しでもこの世界の重さや違和感が伝わっていれば嬉しいです。
まだ物語は始まったばかりで、維真は自分の意思を通すことができるのでしょうか。
これからずいぶん先になると思いますが、明らかになる「憑霊病」の正体、学園の真の目的、そして彼らが下す選択を、ぜひ見届けていただけたらと思います。
感想やご意見は、今後の執筆の大きな励みになります。
ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。
それでは、次の話でまたお会いできることを願って。




