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赤鬼ではなく、人として

目覚めると少し朝日からさしてくる光が強い気がする。

そして胸の奥にいる存在――それは自身からではなく、別のものだった。

学校側から来た医師に告げられていたことは――

僕が今はやっている”憑霊病”に感染していたという事実だった。

僕に今宿っている偉人――井伊直正は自身の力を借り今の世界を生き抜くのに必要な学校の存続のため戦い抜こうということだった。

その時僕は知ってしまった。

――この力を手放すことも、できずにただ受け入れてしまうしか選択肢はないこと。

この力を使って、なんとか自分が選択を間違えないか――それだけで平和を望めるかがカギになってくる。

――僕の中にいる”赤鬼”はまだ静かに眠っている。

だがこの時間もそう長く続くはずがない。

この先、学校や町、そして日本全土を巻き込んだ大きな壁が――僕たちに迫っているのだから。

昼になって、ようやく胸の痛みが治まってきた。

息を吸っても肺の奥にたまっている重さだけが抜けていった。


「……なんとか、落ち着けた……」


痛みは消えたとしても、嫌な”存在”が僕の中に芽生えている。

心臓の奥――僕の精神にあいつが居座っているような感覚。


鼓動の間に、誰かが”こちらに来ているような”気配がした。


『……おう。やっとつながったか。我は別に怒っちゃおらん。

 ……今のお主……ちぃとばかし怯えているやろ』


その声を聴いただけでゾクッとなる。


「……井伊直正……さん。なんでわかるんですか。まあいいです。とりあえず”これ”に魂の一部を乗っけてください」


そういって僕はとあるものを取り出した。”人体通信機”と言う。

もともと人間同士の会話のために使われていたが、”憑霊病”の影響によって偉人の魂にも対応できるようになったとか。

その声にこたえるように胸の奥から手に何かが乗っかってくる。


「これが……本当に一部なのか」


あまりにも重々しい。思わず息を吞むほどだ。


『…ほう。これが俺の体か。これはすごい』


そう言って直正は、自分の体を手に取るように見つめる。

二、三度、じっと観察するその眼差しには、好奇と興奮が混じっていた。


『というわけで、長い間お世話になるで。よろしゅうな』

「僕はお前みたいなやつにお世話になりたかねぇがな」


なぜこうも落ち着いているのだ。

――ん?そういえば僕自身の体にも変化が起きているのか?

なぜかしら、筋肉が自然に引き締まったような感覚がある。


『そら、そうや。実際、攻撃威力はそうとう上がっているはずや』

「もとから悪かったよ。攻撃のほうは。ずっと弱かったんだ」


ずっと一人だった。親は――まぁいっか


「……僕の身体なのに、なんでそんな落ち着いてるんだよ……」


『落ち着かねば、そなたの身が持たぬ。

 我が荒ぶれば、そなたが傷つくからな』


まるで、先ほどまでの態度を反省しているような言い草だ。

その内容で少し驚く。


「……守護神にでもなったつもりか?」


『本当のことを言っているだけや。

 お主が死ねば、我も消えゆる。

 それに……」


一拍おいて、物静かにこう告げた。


『”鬼”そういわれた時期もあったが、我は人の子だ。

 我は”鬼としてでなく人として”お主と向き合いたい』


――そういわれた瞬間目を見開いた。


「……‼熱っ‼」


やば、昼飯で食べていたカップラーメンをこぼしてしまった。


『はは、驚いたか。我がそんなことを言うなんて』


井伊直正――赤鬼の名で恐れられた武将が、

こんな静かな声で話すなんて、想像もしていなかった。


「もう、戻っておけ。お前と話していると調子が狂う」


『わかった。とりあえずのところは身をひこか。

 必ずそなたに前を向かせるように頑張りますわ』


その言葉を最後に、僕の中にある存在が軽くなっているような気がした。


「次こそゆっくり眠れるか」


そういって、僕は洗い物を終え、ベットに横になり静かに目を閉じた。

今回も見てくださりありがとうございます。


平和のために武力を使用しない維真――そして、平和を叶えるために武力を使用せざるを得ない井伊直正の対話のシーンが印象深かったです。


維真は今後どのようにして向き合っていくのでしょうか、また、前を向けられるようになるのでしょうか。


ということで、次回は、その選択と、それに向かっていく時の井伊直正の心情を描いていきます。


コメントやお気に入りで応援していただけると、とても励みになります。

それでは、次話でまたお会いしましょう。

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