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憑霊病の予兆《第零章 プロローグ》

先に言っておこう。この世界は狂っている。子供の人口は減少していく一方で政治家たちは何も策を示さない。

学校も同じだ。いじめのエスカレート、告発してくる人が少ないわりに、告発したところで先生たちに「世間に漏らすな」と言われる始末。本当に悲惨な話だ。

そんな中、最近中高生の間ではやっているのが「憑霊病」だ。

感染者が学校のカースト上位に君臨する。強い者こそ、頂点に立つ権利があるのだ。

僕はまるで時代を超えたような、奇妙な夢を見た。


【我が義にかけて、殿のために――わが身を削ってまで敵陣に突撃していくのだ】


それは低く、それでいて胸の奥が振るわされるような声だった。

この声に呼応するようにどこからともなく無数の武者たちが雄叫びを上げていた。

赤い甲冑が視界いっぱい揺れた。

炎をまとったような軍勢、その陣頭に立つ一人の騎馬武者――

僕には彼が、まるで”赤鬼”のように見えていた。


その男は堂々たる背中を見せた後、戦場の風に身を任せ敵を蹴散らしていった。


その姿を見た瞬間、胸の奥から息ができなくなるくらいの痛みに襲われた。

「……誰だ……?」

そう呟いた瞬間、夢は音もなく崩れて消えていってしまった――。

――ドン、と胸を鈍器でたたかれたような衝撃で、僕は跳ね起きた。


息が、しずらい。

喉が熱くて、しばらく呼吸すらできなかった。


「……っ、は……はぁ……」


視界が揺れる。

さっきまでの”戦場”の赤が、じわりと黒く溶けていく。

代わりに見えたのが、見慣れた自分の部屋だった。


汗が額から滴り落ちて、シーツにしみこんでいく。

夢?――にしては臨場感がありリアルすぎる。


鼓動はまだ暴れるように脈を打っていた。


「……やっとか……」


ようやく収まり、ゆっくりと体を起こした。

薄暗い部屋の中、カーテンの隙間から差し込む光が妙にまぶしい。


呼吸が落ち着くまで少し時間がかかった。

夢の中で感じた胸の痛みは、まだ微かに残っている。


ふと、指先が震えている。


夢での風の感触も肌に残っている。


「……いや、ありえないだろ。夢だ、ただの夢。」


僕はそう言い聞かせた。胸のざわつきも消すように。


枕元の目覚まし時計は、普段より早い時間を指していた。

目を覚ました理由は絶対にアラームじゃない――

間違いなく、あの夢の”痛み”だ。


額に残る汗を拭いながら、僕は小さく息を吐いた。


今日は、何かが起きる。

そんな得体のしれない予感だけが、静かに胸に居座っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

主人公・維真の視点は静かですが、この後どんどん世界が動き出します。


第1話は夢のシーンが中心でしたが、次回からいよいよ“憑霊病”の正体が見えてきます。

よければ、続きを読んでいただけると嬉しいです。


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