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私の話  作者: M
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小学生 低学年時代 初めての冬休み

学校が無事に始まり、提出物も無事に提出できた。

学校へ行き帰宅したら家事仕事をする生活を送っていた。


そして初めての冬休みが始まる。

冬になると父は出稼ぎに出るため母子家庭のような暮らしになった。


母は農業の仕事がない為、兄達と向き合える時間が増え嬉しそうだった。

兄達がスキー場に行きたいと言えば、ナイターだろうといつでも車を出し、温水プールに行きたいと言えば日帰りにするのか泊りで行きたい場所があるのか計画してどこにでも連れ出した。


私は日帰りの場合は一緒の場所に行き、入場料のかからないロビーで待っていた。

泊りの時は父方の祖父母に預けられた。


夏休みに比べ、農作業がなくなった分、どこかに出かけても兄達を待っているだけか、祖父母宅なので宿題がとても進んだ。

冬休みから自由研究か工作を選べるようになった。

私は祖母に工作を作って提出したいと相談をしたら、祖母が嬉しそうに「編み物なら教えてあげられるよ」と言ってくれた。そして、祖母に一番簡単な編み物を教えてもらいながら、少しずつ編み物を始めた。毛糸などの道具は祖母が、前に買ったけど使わなかったのがあるから使っていいよと分けてくれた。


母が迎えに来て自宅に戻り、母が起きている間はプリントなどの宿題をやり、夜になったらこっそりと編み物をしていた。三分の一ほど出来た所で、夜にトイレで起きた母が隣の私の部屋の電気がついている事に気が付き突然ドアを開けられてしまった。

私は心の中で「バレた!!お母さんはおばあちゃんを嫌っている。どうしよう…」

母は部屋に入り私が編み物をしている事を理解すると頬に平手打ちが入った。

「お母さんがおばあちゃんにどれだけ嫌がらせと言葉の暴力を受けているのかお前は見てきただろうが。なぜ、おばあちゃんと同じ行動をとっている。」

「いい加減にしろ。」を連呼しながら拳と蹴りが入る。冬服になると隠せる場所が多くなるし、冬休みで学校にバレる心配もないので、容赦なかった。血の味がするが殴られた顔面が痛いのか、口の中が切れて痛いのかもわからない程、全身が痛かった。

私は何とか言葉を絞り出す「が…学校の…課題を工作にしようと思った…」

母の手がピタリと止まった。

そしてまた蹴りが入った。「なんで学校の課題をこそこそ夜にやってんだよ。昼間にやれよ。」

そして満足したのか、バツが悪かったのか母は出て行った。


私は母にグチャグチャに壊されてしまった編み物のショックと体に残る痛みで泣きながら眠った。


翌日、長男が私の顔を見てビックリした様子で聞いてきた「どうした⁉その傷⁉」

私より母が先に答える「馬鹿よね。昨日大きい音がしたから様子を見に行ったら、ベットから床に顔面から落ちたみたいなの。まだ腫れているのね。こっちに来て冷やしなさい。」

私が母の方に行くと私の腕を強く捻りながら「わかってんだろうな」と兄には届かないように囁き保冷剤を顔に優しく当てた。


私はもうどうでもよかった。

ただせっかくおばあちゃんがやり方を教えてくれて毛糸や道具をくれたのに、おばあちゃんになんて言おう…工作どうしよう…今から自由研究にした方が良いのかな?

学校の事を考える事でしか気持ちを保てなくなっていた。


顔の傷が目立たなくなった頃に母が私に「宿題は?」と尋ねてきた。

私は「自由研究か工作どちらかをやれば終わりだけど、まだ決まってない」と素直に言った。

母は車のエンジンをかけ、私に「外に出る準備をしろ」と言った。

車に乗り込み向かった先は父方の祖父母の家だった。

到着し車を止めると母は私に「おばあちゃん趣味でたくさん編み物を作っているから、手頃なのをバレないように盗んで来い。それでお前の宿題は終わりだろ?」

私は「盗むのは良くない。おばあちゃんに頼んでみる…」と言ったが、母は拳を振り上げ殴るしぐさをした。とっさに私は頭と顔をガードした。

母は「殴られたくなきゃさっさと行って来いよ。お兄ちゃんを塾に迎えに行く時間になるだろ。お母さんは車で待ってるから、早くいけ」

私は車を降りるしかなかった。

おばあちゃんいませんように…そう願いながらそっと玄関のドアを開けると、祖父の靴は見当たらなかった。祖母の靴は3足程あり、お出かけ用はどれかわからなかった。

ゆっくりと居間のドアを開けると、祖母も居間から別の部屋に移動しようと2人でドアを動かしていたようで至近距離で鉢合わせした。私は後ろめたい気持ちで驚き尻もちをついた。祖母は誰もいないと思っていたのに、挨拶もせずに黙って家に入った事を怒っていた。


しかし私が下を向いたままで動かない事に何かを勘ぐったようだった。

「次からきちんと挨拶して入っておいで。今回はもう入っているのだから良いよ。」

「編み物でわからなくなったかい?」

私はもう耐えられなかった。大粒の涙を流しながら、祖母に

「おばあちゃんごめん…編み物…私がグチャグチャにしちゃったの…だから…おばあちゃんが作った編み物をMの工作として学校に提出するから、編み物ちょうだい…」

祖母は何かを言いたげだったが、私が泣きじゃくる姿を見たことがなかった為か、何かを悟ったのか一言「一緒に選ぼう」と言ってくれた。

私は涙を拭いながら頷いて祖母の後についていく。祖母は「学校に提出するならこれはどうかな?」と渾身の大きな人形を出してきた。

私は泣き笑いをしながら「小学一年生がそんなの作れる訳ないでしょ」

そしておそらく私が作ったらこんな感じだろうと思う、熊の人形を手に取り「これで良い」と言うと祖母は慌てて「そんな失敗作学校に提出しないで」と言っていたが、私は「小学一年生はこれでも出来すぎだよ」と言って祖母をなだめて貰う事に成功した。


車に戻ると母が「遅い!!」と言って頭を殴ってきた。

祖母の感が働いたのか珍しく外まで祖母が見送りに出てきた所だった。

おそらく祖母は私が殴られていた場面を見たはずだ。母もバツが悪そうに頭を下げた。

祖母が運転席まできたので、母が車の窓を開ける。

「私が作った編み物を学校に提出するって本人言っているけど、良いのかい?」

祖母が尋ねると、母は

「自分で頑張ってやろうとしたみたいですが癇癪起こして壊しちゃって。時間がありませんので、今回はお借りさせて頂けませんでしょうか?」と言い、祖母は「親が了承しているなら、返さなくて良いし失敗作だから、捨てておきなさい」と言って解放してくれた。


母は私に何かを言いたげだったが、自宅の前で私を降ろし、兄のお迎えに急いで向かっていった。


兄達は塾で宿題も工作も終わっていくようだった。


冬休みの食卓は毎日兄達に食べたいものを母が聞き、兄達の好きな料理ばかりが並んでいた。

父がいると父は日本食が好みで洋食は好みではない為、冬ならではの食卓だった。


年越しは父方の祖父母の家に親族が大集結し、大人の男は深夜1時過ぎまで飲み明かし、嫁たちが働き続ける形で解散になる直前にお年玉をみんな受け取る。

私にお年玉を渡そうとする親族に母は「Mにはいりませんから、お気持ちだけで結構です」と断っていたが、子供全員が貰っているものを私にのみ渡さない事は出来なかった親族は母にではなく私に直接渡してくれた。母は貰った金額を来年のお年玉で返さないといけないから、金額を知るために全て母に渡すように私に言い、私は毎年お年玉は母に渡す決まりになっていた。


そうして冬休みも終わりに近づいて行った。

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