入学式
ついに入学式が来た。
朝起きると母は自分自身を着飾るために美容室などに行ってしまい、家には兄しかいなかった。
私は自分で用意をし、新しいランドセルに新しい洋服を身にまとい小学校に登校した。
教室に行くと私は愕然とした。
保育園で一緒だった同級生は誰一人いなく、田舎のくせに小学校が4つもあった為、私は同級生がいないたった一人の新入生となったのだ。
入学式が始まり体育館に入場すると、なぜ両親が全て新しい物を身に着けさせたのかがすぐに分かった。
来賓席には町長や役員、部落長などがずらりと座っていて、保護者席にはPTAもいた。
外面を気にする両親だからこそ、兄達と同じように育てているとアピールしなければならなかったのだ。
入学式を終え、私は教室に戻る。
小学校は生徒不足により2学年1学級となっており、1年生と2年生が同じ教室で授業を受けるようだった。
なので当時、教室として使用されていたのは3部屋だった。
同級生がいない学年は私のみだった。
家でも学校でも一人だと思い、6年間楽しく過ごせる気持ちになんてなれなかった。
そして私の担任は長男の担任をしていた女教師になった。
当時は体罰やアレルギーに対して田舎だったからなのか、何の規制もなかった。
家に帰宅すると父が「めんどくせー行事が1つ終わった。疲れた。疲れた。はぁ~。お茶もってこい」と言い、母がお茶を出す。
母も続いて私に罵声か文句をひたすら言っていたが、この記憶は曖昧なので省略させて頂く。
夜になり、習い事や塾から兄達が帰宅し、みんなでご飯を食べている時に兄達が私に話しかけてきた。
「担任誰になった?」
「○○先生だよ」
大笑いしながら長男がいう
「あの先生、すぐ殴ってくるし腹が立ったら黒板の前に全員立たせて1人ずつ殴り飛ばして泣かせる先生だから、お前も殴られる準備しとけよ。俺も何回殴られて泣かされたか記憶ないわ。」
「わかった」この言葉以外私には浮かばなかった。
兄達が笑顔で私と話している事に腹を立てた母が口をはさむ。
「しゃべってないで食べなさい」
私は心の中で思ってしまう。
私がいない時の食卓はきっとこうして兄達中心で笑顔にあふれた会話をしながら皆で食べていたんだろうな。
私がいるせいで兄達にも迷惑をかけてしまっている。
私なんかいなきゃよかったのに…