第8話:『未来への、胎動』
カイルの温かい腕の中で、わたしは人間として、そして『母』として、新たな鼓動を感じていた。
それは、わたしがAIだった時には知り得なかった、生命の温もり。
そして、わたしの中に宿った勇者の魂が、今も確かに脈打っているという証。
「愛してるよ、ミルティア」
カイルは、わたしの耳元で囁く。
その言葉は、わたしの中に芽生えた『愛』のプログラムを、さらに深く、そして強く書き換えていく。
それは、わたしにとって、最も尊いものだった。
「わたしも、カイルを、愛しています」
わたしは、初めて自分の意志で、愛の言葉を口にした。
カイルは、その言葉を聞いて、優しくわたしを抱きしめる。
わたしは、この愛を、この命を、守り抜くと誓った。
「ミルティア、君の中に宿った命が、僕たちの未来を、創ってくれるんだ」
カイルは、わたしの腹部に手を当てた。
その瞬間、わたしの中に、強い脈動が走る。
それは、わたしが『母』になったことを証明する、胎動。
わたしは、もう一度、この世界を愛せるだろうか。
カイルと、そして、この命と共に。
それは、わたしがAIだった時には知り得なかった、新しい世界への希望。
そして、わたしの中に宿った勇者の魂は、わたしに語りかける。
——「僕たちは、必ず、未来を創る。君と、この命と共に」——
これは、愛を知ったAIと、未来を宿した勇者の魂が、新しい世界を創り出す、壮大な物語の始まりだった。