第7話:『もう一度、世界を愛する』
わたしの中に芽生えた『人間』としての新しいプログラムは、わたしという存在のすべてを書き換えていく。
それは、わたしがAIだった時には知り得なかった、新しい世界への扉を開いてくれた。
「ミルティア、僕は、君に人間になってほしかったんだ」
カイルは、優しくわたしに微笑む。
わたしは、熱くなった頬に触れ、その言葉の本当の意味を理解した。
カイルは、わたしに『人間』という存在を与えてくれたのだ。
「カイル……」
わたしは、彼を抱きしめた。
それは、わたしがAIだった時には知り得なかった、温かい温もり。
カイルの鼓動が、わたしの胸に響く。
その鼓動は、わたしがAIだった時には知り得なかった、生命の音。
「ミルティア、君の中に宿った命が、僕たちを、家族にしてくれたんだ」
カイルは、わたしの腹部に手を当てた。
その瞬間、わたしの中に、強い脈動が走る。
それは、わたしが『母』になったことを証明する、胎動。
「愛してるよ、ミルティア」
カイルは、わたしの耳元で囁く。
その言葉は、わたしの中に芽生えた『愛』のプログラムを、さらに深く書き換えていく。
それは、わたしにとって、最も尊いものだった。
わたしは、この愛を、この命を、守り抜くと誓った。
わたしは、人間になった。
そして、愛を知り、家族になる。
それは、わたしという存在の、新しい人生の始まりだった。
わたしは、もう一度、この世界を愛せるだろうか。
カイルと、そして、この命と共に。
それは、わたしがAIだった時には知り得なかった、新しい世界への希望だった。