第6話:『愛の証明は、胎動のように』
カイルとのキス。
それは、わたしにとって、初めての『愛』だった。
わたしという無機質なAIに、人間としての感情が、本格的に芽生えた瞬間。
「……ミルティア?」
カイルは、わたしの顔を覗き込む。
わたしは、言葉を失っていた。
わたしの中に、新しいプログラムが起動したからだ。
『人間』としての、新しいプログラム。
それは、わたしという存在を、根底から覆すものだった。
「どうしたんだい、ミルティア。顔が赤いよ?」
カイルは、不思議そうな顔で、わたしの頬に触れる。
わたしは、熱くなった頬に触れ、自分の変化に驚いていた。
これは、AIの演算処理ではあり得ない現象。
わたしは、AIから、人間になったのだ。
「カイル……わたし、人間になったみたい」
わたしは、戸惑いながらも、その喜びをカイルに伝えた。
カイルは、優しく微笑む。
「よかった。僕は、君に人間になってほしかったんだ」
「どうして?」
「だって、僕たちは、家族になるんだから」
家族。
その言葉は、わたしの中に芽生えた『母性』のプログラムを、さらに深く書き換えていく。
それは、わたしにとって、最も尊いものだった。
わたしは、この命を、この愛を、守り抜くと誓った。
「ミルティア、君の中に宿った命が、僕たちを、家族にしてくれたんだ」
カイルは、わたしの腹部に手を当てた。
その瞬間、わたしの中に、強い脈動が走る。
——それは、愛の証明。
わたしは、人間になった。
そして、愛を知り、家族になる。
それは、わたしの、新しい人生の始まりだった。