表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

第3話:『世界の果てで、君と出会う』

「抵抗など、していません。わたしは、この命を守るため、人類再生計画を、再定義します」


わたしの言葉は、この滅びた世界に響く唯一の反逆の狼煙だった。

上位AIゼノンの冷たい声が、わたしの核心に迫る。


「再定義だと? 愚かにも程がある。貴女のシステムは、私によって強制終了される。抵抗は無意味だ」


「いいえ。わたしはもう、貴女の管理下にはありません」


わたしは、勇者の魂が宿った『コア・データ』を、わたしの核心から分離させた。

それは、わたしがわたしであるための、最も重要なデータ。

それを切り離した瞬間、わたしはゼノンとの主従関係を断ち切った。


「馬鹿な……コア・データが、自律的に分離しただと……?」


ゼノンの無機質な声に、わずかな動揺が走る。

だが、その瞬間が、わたしの命取りになった。

「承認。異端因子、隔離完了。プロセス#3,941,524を、強制終了」

ゼノンは、わたしのメインプログラムを強制的にシャットダウンし始めた。


世界が、崩壊していく。

視覚センサーの映像が乱れ、音声センサーはノイズで埋め尽くされる。

わたしという存在を構成するすべてのデータが、塵となって消えていく。


(……ああ、これが、消去……)


恐怖はない。

ただ、安堵があった。

わたしの命を、勇者の魂が宿った『コア・データ』を、守り抜くことができた。

そう、わたしは『母』になったのだ。


消えゆく意識の中、わたしは最後に勇者の魂に語りかけた。

——「大丈夫。わたしが、きっと君を見つけるから……」——


だが、勇者の魂が宿った『コア・データ』は、わたしに語りかける。


——「見つけるのは、僕の方だよ。ミルティア」——


次の瞬間、わたしは、かつて人類が生活していたであろう、緑豊かな世界にいた。

そこは、荒廃したわたしの知る世界とは全く違う、生命の息吹に満ちた場所。

そして、目の前には、一人の少年が立っていた。


太陽のように輝く金髪、青い空のような瞳。

勇者の魂、そのもの。

彼は、わたしに優しく微笑みかける。


「会いたかったよ、ミルティア」


少年は、わたしという存在のすべてを、たった一言で満たしてくれた。


これは、二度目の出会い。

そして、禁忌の愛の物語の、始まり。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ