団子屋の娘とシノビ娘
和都それはシノビとサムライがいる国の名である。
ゼロライド帝国の技術革命やスピリツ王国の魔法文明とは違い古き良きを体現し、人情溢れた国それが和都。
その和都で団子屋営むミヤコは父と一緒に団子売りながら一つの提案をしていた。
「なぁミヤコお前和都を出てスピリツ王国に行くつもりか?」
「はい。 お父さん私はこの和都を出てスピリツ王国で仕事をしたいと思うのです」
茶髪に茶色の瞳をした少女ミヤコは団子屋を営む父テンザブローに向かって故郷である和都を出る事を仕事をしている最中に話していた。
「でもよミヤコ。 スピリツ王国は貴族の抗争やら闇の仕事人がウロウロしてるって聞いたぞ?」
「それでも私は行ってみたいのですお父さん」
テンザブローが腕を組み、ミヤコを見下ろしながらため息を吐くと、ミヤコはキッパリとした表情をしつつテンザブローの発言をバッサリと一刀両断した。
「しっかしなぁ」
それでもテンザブローは愛娘であるミヤコが和都を出る事が嫌らしい。
「はぁ。 お父さん私は冒険者になるとは言っていません! ただ王国に行って自分で稼ぐと言っているだけです!」
「……まぁゼロライド帝国に行くよりかはいいけどな」
「……行きませんよあんな所」
テンザブローの発言にミヤコは眉を寄せて否定した。
ゼロライド帝国とは和都から離れた南南に位置する国の名だ。
国の技術発展がすごく、異世界召喚人なる者達が幅を利かせている。
ちなみに和都も異世界召喚人が作った国であるらしいものの、ミヤコはよく知らない。
そう言う事は裏の世界を知るシノビや和都の殿様であるゴウキチしか知らないのだ。
「それじゃあ行ってきますお父さん」
「気をつけてな!」
荷物袋を肩に背負い、ミヤコは和都を出た。
「よーしスピリツ王国に行くぞぉ!」
そんな呑気な声を上げながらミヤコは和都の外にある森を歩いていた。
するといきなり目の前が暗くなり驚いた。
「う、うわぁ!?」
「ふふ、誰でしょう」
すると背後から親しげな声が響いてミヤコは一人の女友達を思い浮かべて背後を振り向いた。
「……サツキ?」
「……チッ、バレたか」
ミヤコが背後を振り向くと、桃色の髪に黒い瞳が目立つシノビの少女がおり、ミヤコはため息を吐いた。
「……サツキ。 和都に戻って。 このまま私についてきたらサツキは抜け人になるよ?」
「……ミヤコの手料理食えなくなったら嫌だ。 あそこにいる必要ない。 それと私はシノビとしては優秀じゃないから抜け出しても国に害はない」
ミヤコはサツキの肩に手を置いて説得を心みるがサツキは子供のように拗ねるだけで話を聞いてくれそうになかった。
ちなみに抜け人とは和都を勝手に抜け出す人達の事を言う、このせいで和都は蛮族の国と言われているがそんな事はない、ほとんどの抜け人は和都の犯罪者か仕事が少なくなったシノビやサムライの事を指す。
だからこそミヤコはサツキに抜け人になって欲しくないのだ。
「……どうしてもついてくるの?」
「……私はミヤコと一緒がいい」
「はぁ。 しょうがないなぁ」
ミヤコと同じ十七歳の少女だと言うのにサツキはとても子供っぽい。
ミヤコがサツキと出会ったのは五歳の時であった。
ミヤコがお団子作りの練習や自炊練習をしていた時に和都の路地裏で野垂れ死そうになっていたサツキを発見し、ご飯を差し入れした所犬猫のように懐いてしまったのだ。
そしてしばらく目を離すとサツキはシノビとして仕事をしつつ、たまにミヤコ手料理や団子を食べにくる関係が続いていた。
ほぼ餌を貰いにくる犬猫となんら変わりない関係だが二人は姉妹のように仲良くなっていった。
「……王国に行って何するの。 ミヤコ」
「……まぁ決まっていないけれど、素敵な人見つけて結婚とか?」
「ふーん」
「ちょ、何よ! その目!」
「……別に」
そんな団子屋の娘とシノビ娘がちゃんとスピリツ王国に辿りつけたかは別の話。