輪廻登録センターと転生設計室
──次の生を定める、魂たちの分岐点──
魂の旅路には、終わりなどない。
あるのは、節目と再出発。
ここ「輪廻登録センター」――通称「転生局」は、魂たちが“再び生きる”ための準備を整える場である。
この施設では、審査や調整を終えた魂に対して、その魂がどの次元、どの世界、どの器へと向かうかを決定していく。
要となるのは、魂が抱える未解決のテーマや、前世から引き継がれた因果、そして内包された“属性”。
そして、その細やかな調整を担うのが「転生設計室」。
ここでは、魂ごとに個別の“転生設計”が行われている。
たとえば――
生誕地。どの国、どの家系に生まれ落ちるか。
宿命値。その人生に与えられるテーマや業、乗り越えるべき課題。
性質。五行バランス、身体感覚、気質の傾向。
そしてバッファ。前世の記憶がどれほど残るか、あるいは忘却するか。
すべては、その魂にとって“ちょうどよい難易度”となるよう、丁寧に編まれていく。
設計室には、多数の補助職員が在籍している。
五行分析官――属性と因果の調整を担う専門家。たとえば鉄柘榴は、鋭い観察眼と冷静な判断で知られている。
感性設計補佐――魂の“色”を整える者たち。紫蘇葉は、独特の美的感覚で魂に柔らかな調和をもたらす。
波動整音技師――魂が“響く”世界とずれぬよう、振動の微調整を行う調律者。桂蘭は、その音に耳を傾けることを得意としている。
ある事例では、こう記録されている。
魂ID:0789-AQK
「記憶を失いたくない」と希望を出した魂。
バッファ設定が緩められ、ほんのりと“気づき”が残されることになった。
その結果、生誕後も幼少期に「妙に懐かしい感覚」を抱く魂として、この世に生まれた。
すべては、魂にとって必要な旅路を選ぶため。
もし、魂がまだ不安定である場合、設計は保留され、魂調整ラウンジへと戻されることもある。
そして、案内係のライチは、こう語る。
「“転生する”って、何かを終えることじゃなくて、“続きの章に進む”ようなものなんです。
だから、怖くなくていい。ちゃんと、あなたに合った物語を、ここで作ってくれている人たちがいるんですから」
転生ルートは完全に固定されたものではなく、魂の状態や現世の情勢によって微調整されることもある。
その痕跡は、ときに夢の中、あるいは“生まれる前の記憶”というかたちで残ることもあるという。
次回は、転生せずに常世で過ごす魂たちの“日常”について──
「魂生活支援センターと記憶アーカイブ館」をご紹介しよう。