第26話 シルの過去(2)
───あれから僕は広い屋敷を案内されたが、覚えるのは得意な方で一回で屋敷の中を覚えてしまった。そして、最後に僕の部屋に入ると綺麗に整頓された家具や寝床に驚き、扉の前で立ち止まってしまった。
「……ここが僕の部屋、なんですか?」
恐る恐る隣にいる姉さんに聞き返すと優しい笑顔で頷いて中に入るよう言われた。
パタン──と扉が閉まると姉さんはさっきの優しい笑顔じゃなく、真剣な瞳で僕を見つめ口を開いた。
「シル、今から話すことは他言無用で聞いて欲しいのだけど。シルは聞く覚悟はある?」
そう告げた姉さんは優しいのに、どこか切なそうな表情で僕に答えをゆだねるように聞いてきた。僕は初めてのことで声が出ず、俯いて服の裾をキュッ─と掴んだ。
その時だった─────。
カツカツと靴音が部屋に響くなか、姉さんは僕の元に近づき、裾を掴んでいた手をそっと離し優しく握り返して暖かく、優しい笑顔で僕に言った。
「シル。怖がらないで?私はあなたの味方だから」
────その時、僕は手を差し伸べてくれた姉さんの手をぎゅっと握り返しこの人だけは信じたい。と本能で思った。
★★★★★★
部屋にあるソファに座った僕と姉さん。姉さんは震える声で僕に覚悟がある瞳で僕に言った。
「この公爵家は私以外全員敵よ、誰1人信用してはダメ。絶対に」
「な、なぜですか……?」
ゴクリと唾を飲み込み、なぜそんなことを言うのかを聞いたら、姉さんは深呼吸をしたあと、話し出した。
「…私は最近まで公爵に酷い扱いを受けてたわ。ミスをすれば暴力やご飯を抜くのは当たり前、私は公爵の道具でしかなった。……けど、第二王子の婚約者に決まってからそれらは一切なくなり"監視"という名の教養がつくようになったの。それはシルも同様に……」
その瞬間───僕の背中にぞわりとした電流が流れ、鳥肌がたつほど気味が悪かった。それに、姉さんはそんな過酷な境遇でも光を灯し続けたのに僕は"強い"。と思うと同時に、苦しんでも前を向く姿にすごく胸を打たれた
……姉さんはすごい、僕だったら無理だ。
そんなふうに思ってしまうほど、姉さんは何かを決めた瞳をしていた。そしてその瞳はどこか不安でゆらいでるのに芯がある決意の瞳だった。
それを見た僕はこの人を一人にさせたくない…守りたい、と思ってしまうほど姉さんとは一緒に人生を歩みたい──そう、生まれて初めて思えた瞬間だった。
★★★★★★
朝日がまだない夜明けの空が窓から差し込むのに目が覚め、ぼーっと天井を見つめていた。
『シルは本当に天才ね!一度で覚えて、私みたいな特殊魔法も生み出せるのは本当にすごいわ』
『姉さんの方こそ僕よりもすごいじゃん!!』
『そうかしら?シルにそう言ってもらえて嬉しいわ』
………本当に姉さんはすごかった、僕よりも。人に優しく、強く、冷静で。そんな姉さんを僕は守りたかった、一人で抱え込ませたくなかった
気づけば涙が頬をつたい視界がぼやけていた。
……姉さん、僕に"愛"を与えてくれてありがとう。今度は僕が姉さんに愛を与えれる存在になりたいからさ、もう。勝手にいなくならないでよ
声を殺しながら涙を流す僕に夜明けの空は静かに見守っていた。
そこから僕は朝早いが、公爵家を出る支度を始めた。姉さんから貰った手紙を胸に抱き───
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