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小説「のっぺらぼう」スピンオフ作品


 朝の日差しがカーテンの隙間から差し込み、まぶたにあたった。

タカシはゆっくり目を開けた。


ーぼく保育園にいかなくちゃ


保育園には大好きなナオミ先生、アキコ先生、お友達のヒロシくん、ジロウくん、あと時々怖いけど、いつもは優しい園長先生もいる。


ママは園長先生が少し苦手みたいだけど、ぼくは大好き。


だってね


「みんなには内緒だよ〜」


って、その日のオヤツの残りの、キャラメルやビスケットを、エプロンのポケットから出して、イタズラっぽいウィンクをしながら、ぼくだけにくれるから。


ぼくはウィンクがまだ上手に出来ないから、両目を一緒につぶっちゃうけど、その特別なおやつを両方の手を並べて、お皿みたいにしてもらうんだ。


「先生ありがとう!」


園長先生が嬉しそうに笑うのと、特別なおやつをもらえるの、両方が嬉しくて、ぼくもニコニコしちゃう。胸もドキドキしてる。

とってもとっても嬉しい。


特別なおやつは、一つの時もあれば、二つの時もある。


お腹が空いていて、すぐ食べちゃう時もあるし、ぼくが頑張れば、大切に取っておける時もある。ぼくだけの内緒で大事な宝物。


だって、ママにも見せたいし、

一緒に食べたい!


今日は秘密のおやつ、もらえるかな?


保育園の事を考えながら、掛け布団をどけると、少しヒンヤリした空気。


「あたたかい服を着ましょうね。」


担任のナオミ先生はぼくに上着を着せる時、いっつもそう言う。だからぼくは家にいる時でも言っちゃうんだ


「あたたかいふくをきましょうね!」


今日は少しのどがガラガラでかすれた声が出た。


一番あたたかい服は洋服掛けの上の方にかかってたから、今日はこれ。割と気に入ってた。恐竜がついてる上着。


色がおかしくなってるし、穴がたくさん空いてみっともないからもう着たらダメってママは言うけど、年上のヒロシ君が保育園で着てる時から

「かっこいいなぁー!」

って思って、憧れてた服。


ヒロシ君ママが

「これ、よかったらどうぞ」

ってたくさんの服を袋に入れてくれた時、ぼくには見えていた。袋の中にこの服が入っている事を。すごく嬉しかったー!


それからずーっと大切で大好きな恐竜の服。

大好き過ぎて、うんと寒い日もこれで保育園に行っちゃった事もある。すごく気に入ってるからね。



上着を着て靴を履いて、玄関から外にでる。


保育園に行こう。



ー今日は何だか道路が変だ


道路工事ってやつをしたのかな?

アスファルトが雲みたいにフワフワしている。


あぶないよ。転ばない様に気をつけて。ゆっくりゆっくり。


先生たちの言う通り、気をつけて歩き出したのに、ぼく、転んじゃった。


ー慌てて立たないで、おしりをついてから、ゆっくり立てばいいんだよ。


そう思って座ったまま空を見たら、

大変だ。空がぐるぐる渦巻いてる。


空だけじゃない、道路も電信柱も、お隣のおうちも。


ぐるぐるうねうね動いてる。


ーなんだろう?


ぼくが不思議に感じていると

悲鳴が聞こえた




「きゃー!!」


「ちっちゃい子が道に倒れてる!

お母さんー!お母さんは!どこですか?」


「何?何?どうしたんだ?


あー、これは…

山田さんちの子だ、


まーた子供ほったらかして」


「あの、加工場だっけ?

働いてるの、港の加工場!電話して!」


「困ったねー」


「たっくん、パジャマに靴履いてどこ行くつもりだった?どれ、抱っこしようね。」


ぼくはふんわり抱っこされて

すごく気持ちよくなっちゃった。



「うわぁーこの子、すごい熱出てる!」


抱っこされた時、ぼくの恐竜の服が玄関に落ちてるのが見えたけど、

拾って欲しいって言えないまま

ぼくは眠ってしまった。




ーーーーーーーーーーー



耳の中で小さな音が膨らんで遠くなるみたいな、変な感じにぼわぼわ聞こえる。



「…よく寝てるから、少しなら大丈夫だとおもって、仕事、休めないから…」


ぼくのママの声…


それと、たくさんの人の声がした

ぼわぼわして遠くに流れてく



でも、ぼく、眠くて熱くて体が動かない

言いたかったけど、また言えなかった。


ママをいじめないで!


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