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プロローグ
空は赤い。地面は黒い。
轟音。爆炎。破片。焼け焦げた鉄の匂い。
ここは、日本列島の北端に位置する“第四防衛戦線”。
昨日まで学校に通っていた俺は、なぜかこの地獄にいる。
化け物は、黒い粘体で覆われた不定形の塊。小口径は効かない。
だからこそ俺たちの任務は「時間稼ぎ」だ。逃げろ、撃て、死ぬな――それだけが命令だった。
隣にいたはずの隊友の名前を、もう思い出せない。
俺の中では、あの茜色の空と一緒に、全部が遠ざかっていった。
それでも、まだ生きている。
銃を持って、歯を食いしばって、地面にしがみついて。
――だって俺は。
「ヒーローになりたかっただけ」だから。