第1話 おっさん好きな子に告ってみる
――――ついに、ついに、ついに、この時がきた。
【ピロピロリン! レベルが1アップしました。レベルが10になりましたので第1スキルを解放します】
いよいよこの次である。
こい、こい、こい!!
役に立つ神スキル! 来てくれ!
【第1スキル解放、スキル名……】
俺は現在、人生最大級の興奮をしている。
それもそのはず、ハンターとしての人生を左右するスキルを手に入れるからだ。
本当によくここまで来たなと思う。
数ヶ月前では考えられないことだ。
人生が一変したと言えるレベルである。
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【半年前】
オフィスにて。
「部長!! すみません。自分のミスで……」
自分というか部下のミスなのにこんなにも必死に平謝りをする彼女に俺は好感を持っていた。
だからか、自然とこんな言葉がでてきた。
「気にしなくていいよ、人は誰だってミスをする。それをミスだと受け入れ、次に繋げればそれでいいんだから。第1、加藤さんのせいじゃないしね」
そう言いながら微笑んでみる。
これは本当に俺の素直な気持ちだった。
少し加藤さんへの好意が含まれているのもあるのだが。
上司が部下のことを好きになる……よくあるラブストーリーだ。
加藤さんはと言うと、いまだ落ち込んだ様子で、目尻にうっすら水たまりができていた。
どうも俺の言ったことが不服のようである、
「ぶちょう……なんで部長はそんなに優しいんですか、私どじばっかだし……今日みたいに後輩は言うこと聞いてくれないし……全然ダメ人間じゃないですか、この前だって〇〇会社に送る書類だって誤送付しちゃうし、、、」
彼女は明らかに落胆していた。
今にも大粒の涙が零れ堕ちてきそうだ。
首は床の方向にガックリと曲がっている。
どうしたものか……
加藤さんを励ます。
「たしかに、そんなこともあったな」
ついつい俺は笑ってしまった。
「けどさ、あの時だってミスに気付いた瞬間直ぐにお詫びをしにいったし、なんなら礼儀正しいって向こう側からの評価も上がったじゃないか、しかも加藤さんのおかげでオフィスも笑顔が溢れ、利益につながる。そこが加藤さんの素晴らしい才能でもあるんだよ」
俺が顎に手を置きながらそう言うと「恐縮です」と申し訳なそうに言ってきた。けれども俺がこんな風に言ったこともあり、彼女は自然と笑みを浮かべていた。
そして、何よりも加藤さんの俺を見つめる熱い眼差しが凄かった。
これはもう惚れたなとか思っていました。
俺の加藤さんに対する気持ちは本物で、世界一可愛いなと思ってるのも本当だ。
絶対に俺が1番加藤さんを愛してる。
それは間違いない、間違いないはずなのだが……
あのやり取りから数時間後。
場所は俺の行きつけの居酒屋。
勿論、加藤さんを誘って。
「部長、ほんとに何から何までありがとうございます。こうやって夜ご飯まで奢ってもらっちゃって」
「いいっていいって気にしなくて。加藤さんが元気になればと思ってこうやって誘ってるんだから」
ここまでは順調だ。あとは告白をするだけ。
長年の気持ちを遂に! 今日伝える。
加藤さんが会社に入社してからだからもう5年くらいだ。
俺が当時29で、彼女は大学卒業したての22歳だった。
当時の教育係が俺だったこともあり、好きになるのは必然だった。
いざ話を切り出そうとすると息が詰まるのがよく分かる。
なんと話をしたらいいものか……
勿論okをされる自信はある。
だがもしもだ。もしも、断れたらどうしようとなってしまう。
勇気を振り絞り話を切り出す。
「……加藤さんってさ、その……好きな人とかいないの?」
「え、私がですか? そりゃいますよ」
よし!! 心の中でガッツポーズをする。
これで1段階はクリアだ。
続いて2段階目。
Q「その好きな人ってどんな人?」
A「そうですね〜、とっても頼りになって凄く尊敬しているし、カッコイイ人ですよ」
またもや心の中でガッツポーズ。
絶対これ俺やん、俺やん。違ったら恥ずかしいけど、間違いなく俺やんか!!
心の中では部長でも方言は丸出しなのだ。
「ふぅ、」
とりあえずため息を付かなければやってられない。
いよいよ告白の時である。
俺は加藤さんを見つめる。
「もし良かったらさ、俺と付き合って欲しかったりするんですけど……なんつって」
もうこれが俺の限界だ。
カッコよくストレートに言えるのなんか漫画の世界だけの話だ。
「え!?」
顔が赤くなってる。照れたんだろうか。
実はアルコールで顔が赤くなってると言うことは、頭が回っていない西宮竜司にしみやりゅうじには分からなかった。
そして衝撃の事実。
「私、既婚者ですよ?」
酒が口から零れ落ちる。
「まじ?」
「まじです」
長年の思いはあっという間に崩れ去った。
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