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開かれた目 〜Memocracia 歴史の影に沈んだ文明〜  作者: CIKI
第三章:閉ざされた真実
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「余白のない街」

「記憶の壁」作動モード / 同年 4月10日 19:00 / 神聖記憶主義社会〜影の時代〜


エリザが住む「ネオ・セレスティア地区」は、都市の中でも整然と設計された中層階級のエリアだ。


ここでは、すべてが「効率」と「調和」を基準に作られている。 中空には高速輸送のチューブ型モノレールが音もなく滑るように走り、街路には通勤時間を過ぎた静けさが広がっている。


道路は白い合成石材で舗装され、その脇を人工の水路が流れている。水面は澄み渡り、夜になると底に仕込まれたライトが青い光を放つ。時折、水路の隣に配置された人工樹木が葉を揺らし、風が通り抜ける音がする。

住居エリアには、同じデザインの高層ビルが規則的に立ち並んでいる。ガラスの外壁には昼間の太陽光を反射する加工が施され、建物全体が銀色の光を放っている。夜になると、外壁に取り付けられたLEDパネルが緩やかに色を変え、淡い青や緑の光が街を包む。


エリザのアパートメントが入っている20階建てのビルも、例外ではなかった。建物のエントランスは全面ガラス張りで、中には白い無機質なカウンターが設置されている。


そこには無人のセキュリティ端末があり、住人は指紋や虹彩をスキャンして中に入る。 エリザはガラス張りのエレベーターに乗り込む。透明なシャフトを通して外の景色が広がり、高層ビル群の夜景が窓越しに見える。だが、エリザは振り返らなかった。エレベーターが15階に止まった。


部屋に入っても、そこは冷たく無機質な空間だった。床は光沢のある白いタイル、壁は淡い灰色で統一されており、家具は最低限のものしか置かれていない。


窓際に立つと、正面に「記憶の塔(Tower of Memories)」が見える。


塔は夜空に向かってそびえ立ち、頂上付近から青白い光を放っている。


街全体を見渡すその姿は、記憶管理社会の象徴そのものだった。その光景は、いつもエリザの胸に微かな圧迫感をもたらしていた。

エリザはカーテンを静かに引き、塔の光を遮った。


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