「記憶の監視者たち」
「記憶の壁」作動モード / 同年 同日 8:15 / 神聖記憶主義社会〜影の時代〜
記憶編集技術を悪用し、虚偽の記憶が拡散された結果、人々は真実を見失い、記憶に基づく価値観の衝突が激化した。偽の英雄的記憶や歴史が広まり、異なる記憶を信じる集団間で対立が生まれて、記憶を巡る暴力事件やテロ行為が社会秩序を破壊することとなる。
こうして「民主記憶主義社会(Memocracia)」が崩壊の危機を迎えたとき、混乱を収拾し秩序を取り戻すために、宗教的権威を利用した新たな統制が導入された。
教会は「記憶の壁(Memory Barrier)」を構築し、すべての記憶を厳重に管理する体制を整えた。この体制のもと、記憶の自由は厳しく制限され、他者の記憶に触れるには教会の認可が必要となった。過剰な記憶共有が抑制されると、社会は徐々に秩序を取り戻していった。
同時に、教会は記憶を神聖なる秩序の一部として再定義し、記憶管理システムを神の意志として人々に受け入れさせた。記憶へのアクセス権限は厳しく階層化され、一般市民は自分の記憶と、教会が人々に許可した記憶にしか触れることができなくなった。
教会の信託者たちは記憶の海を監視し、必要に応じて歴史や真実を改竄することで統制を維持した。
かつて民主記憶主義社会の象徴であった開かれた目のシンボルは閉じられ、人々に自由と共感をもたらしていた時代は終焉を迎えた。
こうして、記憶を教会が独占する「神聖記憶時代(The Age of Sacred Memory)」が到来し、人々の生活は厳格に管理された秩序のもとで再構築されていった。