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魔導書のしおりは宇宙船のかけら  作者: 繭式織羽
序 或いは断片
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守護者の頁

 契約言語の喚起を以って、手順通り復元を開始した。


 耐久性に問題のあった綴じ糸も、これで情報を散逸することはなくなるだろう。


 だがそれ以上進めようとすると、残存情報を保存させた仮契約者が、こちらに血と涙の有無を確認してくる。


 適合素材から同成分を得られる旨を伝えると、本末転倒だと大いに嘆かれた。


 復元作業を保留にするしかなかった。


 適合素材による復元が出来ない以上、散逸した情報を集めるのは地道で気の遠くなるような作業になるだろう。


 それでも仮契約者はその方法を選んだ。


 選んでおいて、何を集めるのか確認してくる。


 必要なのは魔術。或いはその合間に綴られた原本の断片。


 魔術は記録(ログ)として世界に残る。


 あらゆる場所に魔術の記録は在る。


 旅の行く先を灯す里程標の光に。


 迷い込んだ森の、精霊が眠る苔の層に。


 空を流れる都市の、訪れる者のない図書室で咲く一輪の花に。


 底知れぬ迷宮のような、万象の博物館の戯れに。


 あらゆるものに記録は残る。


 記録には、それを編んだ者の記憶が時たま絡む。日記の断片のようなそれら。


 大切な人が無事に帰ってくるように。


 小さな種や虫達が森を奥深く育てるように。


 いつか訪れる友人が笑ってくれるように。


 螺旋の(ことわり)の先で約束を叶えるために。


 待てるだろうか。


 集められた記録が一冊の本を形作るのを。


 読み継がれて浸透した記憶が、人々の思いの中で再生されるのを。


 あなたが私を知るのを。

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