表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書のしおりは宇宙船のかけら  作者: 繭式織羽
序 或いは断片
1/32

守護者の頁

 魔術は記録(ログ)として世界に残る。


 あらゆる場所に契約言語の綴る、魔術の術式が在る。


 旅の行く先を灯す里程標の光に。


 迷い込んだ森の、精霊が眠る苔の層に。


 空を流れる都市の、訪れる者のない図書室で咲く一輪の花に。


 底知れぬ迷宮のような、万象の博物館の戯れに。


 あらゆるものに記録は残る。


 記録には、その術式を編んだ者の記憶が時たま絡む。日記の断片のようなそれら。


 大切な人が無事に帰ってくるように。


 小さな種や虫達が森を奥深く育てるように。


 いつか訪れる友人が笑ってくれるように。


 螺旋の(ことわり)の先で約束を叶えるために。


 記憶に触れるたび、気付かれることも少ない密やかな思いが、やわらかく浸透する。


 術式を編んだ誰かを、記録に触れる前から知っていたのだと、懐かしく感じてさえいる。


 記憶に触れると少しずつ鮮明になる誰かは、いつも温かな笑顔で出迎えてくれる。


 今、編んでいる術式にも、己れの記憶が絡むのだろうか。


 待てるだろうか。


 読み継がれて浸透した己れが、人々の思いの中で再生されるのを。


 あなたが私を知るのを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ