帰るまでがヘンゼルとグレーテル
昔々、とても貧しい家で兄妹を山に捨てる計画が持ち上がりました。
「ヘンゼル、グレーテル。明日は朝一番で山に出掛けるからね!」
捨てられるとも知らず、次の日の朝二人は、母親の後をついて行きました。
「ちょっとココでお待ち」
母親はそう言い残し、二人を置いて山を下りました。
暫く二人は待ちましたが、昼を過ぎ日が落ちかけても母親が戻らないので、遂に二人は山を下りることにしました。
しかし、二人は母親の後ろを着いてきただけなので、帰り道が分かりません。
これが犬なんかだと100km離れていても、帰巣本能で家に帰ってくるらしいですよ。凄いですね。
グレーテルは持ち前の帰巣本能で歩き出すと、そのまま何となく選んだ道を歩き、そして暗くなる前に家へと辿り着きました。父親は泣いて喜びましたが、母親は苦虫を噛みつぶした様な顔で二人を出迎えました。
次の日、ヘンゼルとグレーテルは更に山の奥へと連れて行かれ、そしてまた置き去りにされてしまいました。
仕方なく二人はそこで渡されたパンの欠片を食べ、そして待ちました。
しかし夜になっても迎えが来ないので、仕方なく家に向かうことにしました。
辺りは闇に包まれて、足下すら真面に見えません。フクロウの声だけが、夜の闇の中から不気味に聞こえてきます。
そうそう。フクロウの目って色の識別が弱いかわりに、僅かな光でも分かるそうですよ。凄いですね。
グレーテルは持ち前の視力で夜の山を歩き続け、日付が変わる前には家へと戻る事が出来ました。
父親は咽び泣いて喜びましたが、母親は苦虫を誤飲した様な顔で二人を出迎えました。
次の日、ヘンゼルとグレーテルは山の奥の奥へと連れて行かれ、そしてまたもや置き去りにされました。
既に辺りは夕方です。仕方なく二人は野宿をすることにしました。
しかしテントも無しに野宿は危険です。虫にさされたりでもしたら、もう大変です。
そういえば、スズメバチの巣を襲う鳥が居ましたよね。ハチクマでしたっけ? 固い羽で蜂の毒針をガードしているので、大丈夫だそうです。
グレーテルは持ち前の固い皮膚で虫をガードすると、夜明けと共に起き、そして家へと帰りました。
父親は嗚咽して泣きましたが、母親は苦虫を一気食いした様な顔で二人を出迎えました。
翌日、二人は山の最果てに置き去りにされました。
そして、グレーテルは持ち前の犬並みの嗅覚で、帰宅途中にお菓子の家を見付けました。
「ワンワン!」
「おお! これは凄い……!」
ヘンゼルが我先にとビスケットの窓に齧り付きました。空腹ですから仕方ないことです。
グレーテルはチョコレートの屋根に齧り付きました。そして倒れました。犬ですから仕方ないことです。