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006.新居

小人(ドワーフ)は少数ながら、いた。

妖精(エルフ)との交流は百年以上振りだと、ちょっとした騒ぎにもなったが、交渉自体はかなり上手くいった。


それというのも、師匠が取っておきの素材(オリハルコン)を大放出したからだ。


───流石、お師匠さん。ツボを抑えてる…。


どうも小人(ドワーフ)というのは、素材に目がないらしい。

物を作るのが大好きで、そのための素材採取は必須スキルなんだとか。

鉱物資源の探査も得意らしいのだが、オリハルコンというのは非常に希少な金属で、小人(ドワーフ)といえども見つけるのは難しいらしい。


───そんな物を貯め込んでるお師匠さんって、いったい何歳なんだろう?






まぁ、そんなこんなで、家は完成した。


地下三階、地上三階建てのとんがり屋根だ。


三階は実質屋根裏のような感じで、物置きとオリビアの部屋になっている。

地下は素材置き場と研究室、それから食料貯蔵施設だ。

一階はキッチン、ダイニング、バスルーム、リビングなどがあり、二階が書斎とジェニファーの部屋。


最初はツリーハウスを検討したりもしたが、研究室のことを考えると結局今の形におさまった。


ぱっと見は小ぢんまりした家なのだが、中は思いっきり空間拡張の付与がなされている。

それどころか、状態保存の付与まで。

勿論、これはジェニファーの所業だ。


小人(ドワーフ)の親方もこれには心底呆れていた。

曰く、「どんだけの魔力を注ぎ込むんだよっ!」らしい。

師匠に言わせると、魔法の維持には魔石を使うので何の問題もないとのことだが。

何に重きをおくかは人それぞれだろう。


最終的には、屋敷の附近一帯に隠蔽の魔法もかけた。

それから、海辺や小人(ドワーフ)の里への転移陣(ゲート)も設置していた。

海辺へはキッチンから、小人(ドワーフ)の里へはリビングから。

挙句の果てに、各階への移動も転移陣(ゲート)にしていたし…。


建物は完成したというのに、ジェニファーの大改装に時間が取られて、落ち着いて過ごせるようになったのはニヶ月後だった。


「やーーーっと、落ち着けますね!」

「ああ。あたしも、なかなか楽しめたよ。」


にんまり笑う師匠と、弟子の様子は対称的である。

オリビアは疲労困憊な表情だ。


「はぁー。私も、勉強にはなりましたけど。

 正直言って疲れました…。」

「若いもんの科白じゃないねぇ。

 もうちょっとしゃきっとおしよ。

 こっちまでカビちまいそうだ。」


転移陣(ゲート)の設置は座標の指定が手間で、かなりの時間を要したのだ。

オリビアがぐったりするのも仕方ないといえた。




「今夜のご飯は、お魚ですよー。

 取り敢えず、塩焼きにしてみました。」

「裏の川で獲ってきたのかい?」

「はいっ。海はいろいろ準備が必要そうですから。」


大海蛇(シーサーペント)がうようよいる、という話は忘れていない。


「そのうち、海釣りも教えとこうか。」


魔女がニヤリと口角をあげた。

何か良い調理法があるのかもしれない。


───お師匠さん、意外とグルメだもんねー。


「あ、お師匠さん。

 私、明日は街に行ってみたいんですけど……」

「ああ。一番近いのはナナイ村あたりだろうが、街は少し遠いかもしれないねぇ。」


今のところ必要なものは揃っているが、いざ買い物がしたいとなった時に慌てるよりは、交流しておいた方がいいだろうと思ったことを弟子は伝えた。


「そうさねぇ。

 だったら、やっぱり、ギルドがあるような規模の街がいいだろうね。」

「……海沿いを探ってみましょうか?」

「あたしが知ってるのは、昔過ぎるからねぇ。」


魔女は首をふりふり、考えているようだ。


「上から調べるのが楽だろうから、あんたの従魔を飛ばしてみちゃどうだい?」

「うーん。そうですね。

 ルビー、お願いできる?」


オリビアが小鳥に声をかけると、何となく『分かった』と言ってるように思えた。


「大丈夫そうです。」

「そうかい。じゃあ、あたしはこの辺の散策でもしとくよ。」


弟子と従魔のやりとりを微笑ましそうに見ていた魔女も、明日の予定を口にする。


「……薬草ですか?」

「ああ。薬草もそうだが、鉱物とか魔物とか他にも食材なんかの目星をつけておきたいからね。」

「それなら、私もご一緒したいんですけどー。

 っていうか、寧ろ、弟子の役目ですよね、それ!

 ぜーーーったい、ついていきますからね?」


弟子は口元を歪めて抗議する。

「学びのチャンスは逃したくない!」というのが弟子としての言い分だ。


「まぁ、その辺は好きにしな。」


魔女は苦笑と共に同行を了承した。

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