表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/29

001.王女の追放

「王女ルキア。

 国家転覆を企んだ大罪人として、貴様に極刑を言い渡す。」


ルビウス離宮に突然現れた軍隊。

そのトップが一枚の書状を手に、声を張り上げた。


「国家転覆ですとっ?!

 何を言われますかっ、ガルダ将軍!」

「そうですっ。

 姫様に限って、そのようなことはありえませんっ!!

 それは、貴方だとて分かっていることでしょう?!」


侍従長と侍女頭が反論するが、将軍と呼ばれた男は酷薄な笑みを浮かべた。

一際立派な鎧や剣から、軍における地位は相当なものなのだろう。


「黙れっ!

 そこの女が精霊王を誑かし、謀反を起こそうとしていることは明白。

 最早、言い逃れは出来んぞ。」


将軍は建前を口にする。




精霊。

それは、宗教国家レグルスにおいて、大切にされるべき存在。

王族とは深い関係にあり、王位を継ぐ者はこれと契約する。

精霊との契約はレグルス王国の安定に必要な儀式であり、これを為す者が王となる。






現王は、王女ルキアの異母兄グラキエス。御年35歳。

水の精霊と契約し、王位を継いで9年が経とうとしている。

戴冠の当時、ルキア姫は僅か2歳であった。


新王が決まったことで、その他の王子や王女たちの婚姻や婚約が次々と決まっていった。

ルキアも例に漏れない。

5歳の冬に前王弟の息子ニクスと婚約が整い、王族籍から抜けるべく準備をしてきた。




しかし、ここから2年程が経った頃、状況は変化し始める。

時を経るごとに、ルキアの王族としての立場は微妙に揺れ動いていった。

ルキアが、成長とともに精霊に愛されるようになったのだ。




契約の儀式を経ずとも精霊との対話ができ、精霊王の寵愛を受ける姫。


その存在だけでも王にとっては厄介な存在であったが、加えて婚約者ニクスの父──前王弟ネブラ──が王位に色気を出し始めた。


即ち、息子ニクスを王配として、ルキアを女王に擁立しようと暗躍することになる。


まだ幼いルキアの預かり知らぬところで深まる、対立と緊張。

それに乗っかるようにして、権力争いに講じる貴族たち。


全てが面倒になった異母兄グラキエスがついに動いたというのが、今目の前で起こっている事態の真相だろう。




───いつか、こうなるんじゃないかと、分かっていたのかもしれない。


ルキアの心は冷えていた。


「私が王族でなければ」「私がネブラやニクスを抑えられていたら」「私が…」、ずっと考えてきたこと。


自分が何の抑止力にもなれなかった無力感。

そして、離宮で働く者を危険に晒しているという現実と焦燥感。


───私がここにいなければ…


そう、ルキアが思いかけた時。

大きな風の渦がルキアを包むんだ。

竜巻というには小さすぎ、旋風というには大きい。

それはルキアを包み込み、何処か遠くへと吹き飛ばした。




レグルス王歴527年、秋のことだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ