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ショートショート6月~2回目

だいすき

作者: たかさば
掲載日:2021/06/08

同じクラスの女子に恋をした。


はじめはただ、かわいいなあと思っていただけだったのに。


いつの間にか目で追うようになっていた。

いつの間にか耳が声を拾うようになっていた。


それとなく、女子の見ているものをチェックし、同じ雑誌を探してみたり。

それとなく、女子の口遊む曲をチェックし、自宅で何度も聞いてみたり。


毎日髪形を整え、女子の視界に入るように心がけた。

毎日予習を欠かさず、女子の耳に俺の発言を届け続けた。


偶然、同じ委員会になった時には、神に感謝というものをしてみた。


毎週、顔を合わせることはや数ヶ月。


ずいぶん、仲良くなったと、満足していたのだが。

ちょっとばかり、欲が出てしまったのだ。


……どうにかして、女子から『大好き』という言葉を、もらいたい。


手を変え品を変え、女子を夢中にさせるべく奔走した。

誕生日サプライズに甘い言葉、ときめく手紙にとっておきの景色、甘い歌声に穏やかな時間……。


「だ、大好きなんだからね?!」


僕が女子から初めて引き出した『大好き』は、ずいぶんツンデレな大好き、だった。


少し勝ち気で、でも泣き虫……そのギャップにメロメロだった。

くるくると変わる表情にずいぶん翻弄されつつ……どんどん女子の魅力にドはまりした。


「だーい好き!」


ちょっとくらいケンカしても、この一言ですぐに僕は女子を許した。

ちょっとくらい腹立たしいことがあっても、この一言があれば女子を許せた。


「ふふ……大好き。」


僕の横で、僕への愛を隠すことなく披露する女子。

人目を憚らず、僕への愛を堂々と披露する女子。


「……大好き。」


いつだって、呼吸するように僕への愛を口にした。


「大好きよ?」


いつだって、僕への愛を確認した。


「大好きって言ってるでしょう?」


いつしか、僕への愛を疑い始めた。


「……大好きだから。」


長年一緒に過ごしたからわかる、僕にしか聞き分けることのできない、微妙な大好きの変化。


この大好きは、僕の知る『大好き』では、ない。


僕の求める、『大好き』を再び、手にいれるために。


手を変え、品を変え。


閉じ込め、囲い込み、言い聞かせ、手取り足取り。


「大好き……。」


「大好き、だよ?」


「ふふ、大好き!」


「大好き、大好き、だーいすき!」


「大好き!」


何をしても。


何を言っても。


何もしなくても。


「大好きなんだよぅ……。」


「だだだだだいすき!」


「大大大好き大大好き!」


「うふふ、大好きなんだってばあ……。」


聞こえて来るのは、僕の望まない、偽りの『大好き』ばかり。


……いろんな『大好き』を聞いてきたけれど。


僕の求める『大好き』は、聞こえてこない。


今日も、僕は、僕の求める『大好き』を聞きたいと願い、女子に問いかける。


「僕の事、好き?」


「僕の事、だーいすき!」


「大好きだよ、大好きなんだってば!」


「大好き、大好き、だだだだだだだ!」


僕は、僕の望まない『大好き』しか言わなくなった、愛する女子を、抱き締めた。


「だい、だ、だ……。」


僕は、僕の望まない『大好き』が言えなくなった、愛する女子を、抱き締めた。


「……。」


僕は、愛していた女子を抱き締めたまま、目を閉じた。









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― 新着の感想 ―
[良い点] ラジオで聞いたら最高なところ。 [一言] エモいです!このお話好きです。
[一言] そんなに言ってくれてるのにー。 ツンでもなんでも、言ってくれれば、嬉しいものでしょう。
[良い点] カーッ! なんたる傲慢!! [気になる点] 僕ちゃんおじいちゃん? [一言] 満足できる能力って、満足なのですね。不満足は不満足です
2021/06/08 20:08 退会済み
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