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衝撃の生徒会初日

次の日

桜火学園 一年生塔 教室にて


「なっんであなたが、生徒会の役員なのよぉ‼」


俺は、さっそく怒鳴られていた。

カレンと出会ってから、鳴かず飛ばずの人生が変わり始めたけど、なんで不幸なことばかり怒るんだぁ。


「聞いていますの‼ 最上結城‼」


「はいぃ……すいません……」


俺はちょこんとうな垂れる。

なんでこんな状況になっているのかを説明するとだな…


まず俺の目の前で怒りをあらわにしている金髪ストレートの女の子は、滝川マリアといって、この学園屈指のお嬢様で有名な人だ。

この女の子は、この学園の生徒会に憧れて、この学園に入ったのに全然ライバルでも何でもない最下位の俺がいきなり生徒会に入会したことで憤りを抱いているらしい。


「いやー俺に言われましても、ほぼ会長が勝手に決めたことですしー。」


「ムキィィィィ‼」


マリアさんは、ハンカチを口に志願で地団太を踏む。

あー、これ話通じない奴かなぁー。


「う…私は生徒会にはふさわしくないというんですの………。」


「そんなことないですよアリア様っ、マリア様は努力家で優しい素晴らしい人ですわっ‼」


突然泣き始めてしまったマリアさんに対し、周りの取り巻きの何人かがフォローに入る。

完全に大勢に無勢で俺はいたたまれない雰囲気になっていた。


ああ、早くこの場から立ち去りたい…。


そうすると、廊下からどたどたと走る音が聞こえてきた。


「結城―、結城君はいますかー」


きた‼ 何が何だかわからないが、今の状況を打破するにはチャンスとしかとらえられない。


「お、俺ですーって……お前かよ。」


俺はとっさに教室の入り口のほうを振り返ったが、そこにいた人物を見て少しげんなりした。


「おま、お前って何よ。 せっかく私が直々に迎えに来てあげたってのに。」


教室の入り口で俺を呼んだのは、昨日、死闘(?)を繰り広げた茜だった。


「ところであんた、なんで正座しているわけ、教室のど真ん中で瞑想なんて変わったことしてるわね。」


「いや、そんなわけないだろ。 見ればわかるだろう見れば、説教されてんだよ俺は。」


そして俺が、マリアさんのほうに向きなおると、その当の本人、加えてその取り巻きでさえも目を輝かせていた。


「ほ、北条先輩ではありませんの‼ わたくし、滝川マリアって言います。 大ファンなんでです。」


おーおー。俺とこいつとじゃそんなに対応の差が激しいのかよ。

泣いちゃうよ? 俺もさっきのあなたみたいに泣いちゃうよ?

誰も励ましてくれないだろうけど、地団太踏んじゃうよ?


そんな俺のことなんかみんなもう既に忘れ去ってしまったかのように、北条先輩こと北条茜の周りには滝川マリアを含める人だかりができていた。

あいつ、妙に人気だな。

そんなにすごい奴なのか。


「それより、北条先輩、わたくし、いや、この学年一同がそこにいる男の生徒会への入会たいして全然納得していませんの。」


「ああ、会長が正式な手続きを踏まずに勝手に決めちゃったからね。」


「そうです‼ それに、この男が生徒会にふさわしいとは思えませんわ。」


そうだ、そうだと今まで周りにいなかった人たちも口々に言いだす。

言っていない人もいるが、それは昨日戦った流星ぐらいだった。

クラスのみんなが段々と集まってくる。

段々と声が大きくなってくる。

その時、茜の一声が教室の空気を変えた。


「こいつは、私より強いよ。」


その一言は、集まってきた群衆を黙らせるのに十分だった。


「生徒会は一律で実力で選ばれる。 こいつもそれに漏れないことをしっかり理解しておくれ。」


そういって、みんなが静かになった後、正座をしていた俺の首の根っこをつかんで教室を出ていった。


茜は黙って俺を引きづって廊下を歩いていく。

というかこれ、周りからどう見えてるんだ、なんか恥ずかしいぞ、俺。


「なんか、ありがとな茜さん、フォローしてくれて、お前が言ってくれなきゃ、きっとクラスのみんなを黙らせることはできなかったと思う。」


「べ、別に、あんたに何かしてあげようと思って言ってあげたわけじゃないわ。 単に事実を言っただけよ。 それと茜でいいわ。」


茜は俺を引きずるスピードを速め、俺の首がきゅっと閉まる。


「う、う、首が閉まります、というか、結局俺に何の用があってきたんだ、そして今どこに向かっているんだ。」


「さっき言ってた、生徒会に入るための正式な手続きってやつを今からやりにいくのよ。」


ああ、さっき言ってたな、会長が生徒会の正式な手順を踏んでいないって。


「んで、その手順とやらは何なんだ。」


そこで、茜の足がぴたりと止まる。


「ここだわ。」


俺らが止まった場所は何もない只の廊下だった。

しかし、茜の足はその何の変哲もない廊下の壁に進んでいった。


「おい壁とキスでもしたくなったのかって、は?」


そのまま、茜は壁の中に消えていってしまった。


「おいおい、嘘だろ、大事件だよ、茜が壁の中に入っていったんだけど、桜火学園の七不思議増えちゃったんだけど、どうどう説明すんの、これ」


そうやって、俺が廊下でわいわい騒いでいると、壁からニュッと手が出てきて俺はその壁から出てきた手に壁に引きずり込まれた。


「うわー、助けてーって何だこりゃ。」


壁に引きずり込まれたとき一瞬視界が暗転したが、目を開けたその先には空間が広がっていた。


「ちゃんとした手続きっていうのは、この学園の長、つまり学園長にあいさつすることよ。」


俺は、部屋をぐるっと見渡すとそこには、机が一つあるだけだった。


「そしてここが、学園長室ってわけ、驚いた?」


自慢気な茜よりも俺は目の前の事実を処理するので大変だった。

俺は、その机に座っている奴を見て開いた口がふさがらなかった。


「どうしたの、そんなに驚いたのかしら。 まあ、無理もないわね、私も最初見た時はすごく驚いたもの。」


「お前は……‼」


外からは見えない秘密の部屋なんか、今はどうでもよかった。

俺が何よりも驚いていたのは、目の前にいる男の顔に見覚えがあったからだ。


「やあ、初めまして、いや、久しぶりといったほうがいいのかな、最上結城君。」


「あの時のシルクハットの……変態‼」


そうだ、俺がカレン、炎黒刀を拾ったその日に襲ってきたやつらの中で、最後まで追いかけてきて、最後にはこいつに気絶させられたんだ。


「お、どうやら覚えているみたいだね、説明する手間が省けてよかったよ。 私の名前は、ジョーカー、この桜火学園の理事長をしている。」


「何すました風に自己紹介してんだてめー、あの日俺はもしかしたらお前に殺されていたかもしれないんだぞ。」


「えっ、なにあなた学園長と知り合いなの?」


初対面だと思っていた二人が知り合いだということに茜は驚きが隠せないようだった。


「ああ、学園長と結城君は既に一度お顔合わせをしているんだ。」


「ああ、それも刺激的な出会いをな。ってひょいっ⁉」

「わ、びっくりした。 南条先輩いつからそこにいたんですか。」


俺の後ろから、ニュッと眼鏡をかけた女性が話に入ってきた。

この女性は、俺が流星との試合で武器の形態の許可を求めた時に、助け船を出してくれた眼鏡の人だ。


「茜君、結城君の案内ありがとう、それと結城君、挨拶が遅れてすまない、私は南条鑑、気軽に鑑と呼んでくれ。」


「あ、どうも……。」


「ジョーカーから説明はしてもらった?」


「っで、そうですよ。 俺、この男にひどい事されたんです‼」


「はぁ、まだ何の説明もしていないのね。」

まるで鑑先輩は何が起こっているのかすべてわかっているかのようだった。


「おい、結城、昨日追いかけてきた二つの魔力反応の片方にこいつの魔力は似ているぞ。」


懐のカレンが俺にそういった。

そういうことか、この人俺がころされそうになっているのを見てたんだな、だからこんなに事情を察しているのか。

くそっ、もう何も信じないもんっ


「あーいや、今からいろいろ説明しようと思っていたんだが、その前にこいつがうるさくってな。」


「あー、そういうことね、結城君、少しジョーカーの話を聞いてあげてくれるかしら。」


俺は、恩のある鏡さんに免じてその矛を収めた。


「いいか、最上結城、俺がお前を襲う形になってしまったのは、お前が持っているその刀にある。」


どういわれて俺は、腰に下げていた刀を見る。

確かにこの刀を持っていて何故追われていたのかは、結局いまだに理解していないことだった。


「いいか、その刀には、太古の賢者の魂が収められている。 その名もカレン・メイザース、人呼んで炎の賢者だ。」


ジョーカーと呼ばれていたその男は、学園長室を歩きながら話を続ける。


「ここからが本題だ、その刀には、お前も知っているようにお前にはもったいないほどの凄い力が秘められている、それを悪用しようとする奴らがこの世にはいるっていう話だ。」


お前にはもったいないは余計だが…とりあえず今は置いておこう


「んで、なんだよ、その連中は。」


「アメジストという名前を語っている犯罪組織だ、世の中、もといこの魔術研究都市ユートピアに混乱をもたらそうとしている奴らだ。」


「そんな名前聞いたこともないぞ。 そんなに悪い連中ならニュースにでもなっているだろう。」


「ばーか、最後まで話を聞け、いいか世の中でニュースになるときってどういうときだと思う。」


「何か事件が起きた時か?」


「そうだ、何かが起きるからそれに人は気づき、メディアはそれをニュースにしようとする。」


ジョーカーは、俺の目の前に来ると、初めて会った時のように顔をぐっと近づけてきた。


「その事件を未然に防ぐのが君ら生徒会、レジスタンスの仕事さ。」


「レジスタンスぅ?」


「裏ではそーゆー組織名で通ってるの、そのアメジストを倒すのが、この桜火学園の生徒会の隠れた役目ってわけ、それを説明するために君はここに来たってわけ。」


「なんだか、突拍子もない話で呑み込めないんだが、そもそもなんの目的でそいつらはそんなことをするんだ。」


「それは…」


ジョーカーは窓の外の青空に目を向ける。


「…いまだわかってない。」


「今の間は何だ今の間は‼ ぜってぇなんか知ってるだろう‼」


それにアメジストだの、レジスタンスだのまるで悪とヒーローの物語じゃないかそんな本の中のような話をされてはいそうですかってはならねぇよ。


「ん、信じられないって顔ね、まあ、私も最初は何言ってんだって思ったけどね。 あなたも襲われたら否が応でも理解するわよ。」


「襲われるって、俺がか⁉」


茜の言葉に俺は戦慄した。

そしたら、俺の後ろに立っていた鏡さんが手をあげた。


「その話については私が、結城君、あなたの持っているその炎の賢者が封印されているその刀、炎黒刀は、もともとアメジストの連中が欲しがっていたものなの。 それを私たちがその刀を保護しようとしていた時に、間違えてあなたが拾っちゃって、勝手に契約しちゃったってわけよ。」


その契約せざるおえない状況はあんたらがつくったんですけどね。


「その保護しようとしていたことを先に私に教えておいてくれれば、昨日、あんな会場であんな戦闘しなくても済んだのに。」


プンプンと茜はわかりやすくへそを曲げたふりをする。

確かに、俺が炎黒刀の持ち主であると茜が知っていたら、別に昨日の戦闘はしなくてもよかっただろう。


「まあ、秘密裏に行えばすぐに終わることだったし、伝えるようなことでもないと思ったからね。 気を悪くしたなら許してちょうだい。」


そういわれ、茜も機嫌を直した。


「それに、生徒会に入れる口実が欲しかっただけだし。」


「あの、結局、俺の退学の話って…」


「ああ、その話は本当だよ、もともと君は才能がないから退学になる予定だった。 できないものはできない、それが魔法の世界だしね。 ただ炎の賢者との契約者となった君はSクラス越えの能力者認定だ。 退学は取り消しだ。」


「よっしゃー」


「その代わり、大きな力を持つ者にはそれだけの氏名や責任というものがついて回る。 君は、君自身がその力を使って悪いことをする人間でないと証明しないと、我々も君を自由にはしておけない。」


「そんなに、カレンとの契約ってやばいものなんですか。」


「ああ、強い力を持つ素性のしれない奴にうろうろされるのも危ないだろ。」


「た、確かに…」


強い力ってだけで、周りを不安にさせてしまうかもしれないってことか。


「だから、桜火学園生徒会、通称レジスタンスでの慈善活動をお前がこの学園にいる条件とする。」


「わ、わかりました。」

しょうがない、これでこの学園にいられるならいいだろう。

俺は、なんというか今後の未来の方針が見えてきたことに対して幸せがあふれそうになっていた。


「それと、昨日の件はすまなかった。 君を殺しかけた件だ。」


「我々は、とにかくその刀を誰の手にも届かないところに封じて、悪い奴らに利用されないことに必死だったのだ。」


確かに、ユートピアに混乱を貶めようとする奴らにカレンの力が渡ったたら大変だしな。

本来だったら、川のほとりに落ちていたのをこいつらが見つけて一件落着って感じだったんだろう。


「じゃあ、待てよ。 俺は、お前らが悪い奴から炎黒刀を守ろうとしていたのを俺が邪魔したのか。」


よく考えたら俺ってすごい邪魔をしたんじゃないのか。 あ、やべ、なんか罪悪感……。

でも殺されかけたのは事実だし、わざと邪魔したわけじゃないし…


「まあ、そういうわけだ、君が敵か味方か、それとも何も知れらないただの一般人なのかがわからなかった。 俺らも焦ってたんだ。 しかし、攻撃して危うく、殺しかけたのはすまなかったと思っている。」


ジョーカーは、誤解を解くとともに謝罪の意を述べた。


「う、まあ、そういうことなら俺も水に流すけどよ……」


その水に流すという言葉をジョーカーは見逃さなかった。


「じゃあ、そういうことでさっそく任務に出てほしいんだが。」


「へ?」


謝罪直後の手のひらを返したかのような突然の出動命令に、俺は思わず変な声が出てしまった。


「もともと、炎黒刀を川に落としてしまったのは、この都市に紛れ込んでいるアメジストの一味から奇襲を受けたせいだ。」


「気づいていないかもだけど、その炎黒刀、もとい君は狙われているんだよ。」


「そう、だからあなたはもっとその力を磨かなければいけない。」


「しかし、君もいつまでも力を狙われていたんじゃ日常生活を送るにも遅れないだろう。 だからね。」


「君を追っているアメジストのやつらを君自身が懲らしめるんだ。 いわゆる力の誇示だね。」


「力の誇示?」


「そう、アメジストの連中に、炎の賢者と最上結城は契約しました。 もうあなたたちに炎黒刀は奪うことはできませんって示してやるんだよ。」


「それが最初の任務か。」


「そう、それが最初の任務。」


「じゃあ、そいつらをとっととぶちのめしましょう。」


「はぁ、簡単に言うね。 この任務には大きく二つの問題がある。」


「二つの問題?」


「一つ目、まず奴らがどこに潜んでいるのかがわからない。」


「じゃあまずそこからか。」


「そして大事な二つ目」

ジョーカーは俺の顔にまた顔をぐっと近づけ言い放った。


「君は、弱すぎる。 このまま戦闘が始まったとしても、殺して炎黒刀を持っていってくださいって言っているようなもんだがな。」


「ぐっ、ぐうのねもでねぇ。」


「ていうわけで、茜、こいつに魔術の基礎というものを教えてやれ、話はそれからだ。 その間に俺と鑑は、お前を追っているアメジストたちのしっぽを探す。」


「了解です。」


「なんか、ありがとうございます。」


「いいって、なあ、一つ忠告してくぞ、炎の賢者の力は確かにすさまじいが限界はもちろんある。 強さと勝てるかは話が違う。 弱くても勝つし、強くても負ける。 覚えとけ。」



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