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反撃、激闘

じりりりりりりりりりりり………


いつも通りの忌々しいアラームで目が覚めた俺は、目を開けて一番に目に飛び込んできた太陽の光に思わず顔をしかめた。


「うっ、まぶしいな」


瞼を閉じていても感じる光のまぶしさに俺の意識は覚醒し始めた。

目を開けるといつもの俺の部屋の天井だった。


「そ、そういえばここは爆発したはずじゃ…」


しかし、周りを見渡すとそこには、昨夜あった爆発の痕跡なんてかけらもなかった。

ここで俺はある一つの結論に行きつく。


「もしかして、全部夢だったのか。 はぁーずいぶんリアルな夢だったなー。てへっ☆おれってばもうー。」


「夢ではないぞユーキ」


「ぎゃーーー‼」


俺が、体験したことをすべて夢で終わらせようとしていたら、突然脳内に話しかけられた声に現実に引きずり出された。


「もしかして‼」


俺は、机の方を見ると、そこにはちゃんと赤い鞘の立派な刀が立てかけられてあった。


「おや、いいレプリカの刀を持ってきてしまったもんだ。」


「おい、現実逃避をするな。 第一、こんなに美しいレプリカがあってたまるか、目が覚めたのだな、おはよう。」


「ってててことは、あれはすべて現実ってこと。」


「そうだ、あの後、あの男に気絶させられたお前はこの部屋まで運ばれたわけってことよ。 そしてそのあと部屋の破損部分を一通り直した後に奴は帰っていったわ。」


カレンは、人間の形に変わるとその刀の状態では読み取れないふてくされた顔を表した。


「それになあ、お前と私は、もう主従の関係で結ばれているんだ。 肝心のご主人様が激よわの気絶じゃ、私も動けんくなる。」


そういいながら、カレンは俺のベッドのそばに座った。


「よし、脱げ。」


「は?」


こいつは、何を言っているんだ。


「いいから脱げと言っている。」


「や、やめて、唇だけじゃなく、色んなはじめ手を奪う気かお前は、そうはいかせんぞ。」


俺は、がっしりと布団を抱きしめて、体を隠すようにガードした。


「い、い、か、ら、脱げといっているだろう‼」


カレンは、力任せに俺の布団をはぎ取り、来ていた服をめくった。

そして、クシャリと顔をしかめた。


「やはり、やつめ変な細工をしよったな。」


カレンが見つめる視線の先にあったのは、結城のお腹一面に刻まれた入れ墨のような紋様だった。


「なんだよ、これ… 洗ってとれるのか…」


「バカ、洗ってとれるわけなかろう、それは呪印だ。」


「呪印?」


「ああ、お前も意識を手放す前に奴から聞いていただろう、お前の魔力回路は、私の膨大な魔力に耐え切れず悲鳴を上げておったのだ。 恐らく奴は、私とお前の魔力経路のパスに制限をかけたのだろう。」


「それって、制限つけてないとやばいのか?」


「ん? なら試してみるか? 高度な術式の呪印とはいえ、私レベルであれば解くことは造作もない。」


そういって、カレンは、俺のお腹に書かれている紋様を指でなぞった。


「え、ちょっおま」


その時だった。


体中の血液が沸騰したように、全身が発熱し始め、汗が蒸発し、全身が焼かれるような感覚に陥った。


「うーん、やはりまだお前には厳しいな。」


そういって、カレンは腕を横に振った。

その瞬間から、その燃えるよな力の奔流が止まり、静寂が訪れた。


「なにこれ、息できないんだけど、あの衣装これやらないでもらえます。」


「しかし、これは私にとっては、体に鎖をつけられている感覚で気持ち悪いのだ、これはお前の特訓次第だな、しかし昨日の件でお前の魔力回路も機能し始めているぞ。」


「えっ、うそっ、それってつまり…。」


俺は、頭をふとよぎったある仮定を確かめるべく、右手のパーの状態にして前に差し出した。


「スプラッシュウォーター‼」


結城がそう唱えると同時に、結城の手から、ひねった蛇口から出る程度の水が噴出した。


「おお、使えたな魔法。」


「やった…やったぞー、魔法さえ使えれば、俺はこの学園を去らなくても済む、ありがとうカレン、ありがとうこの世界‼」


「ふむ、その調子で子の忌々しい呪印がなくても私の魔力を受け入れることができるようになるまでに魔力回路を拡張してほしいものだが。」


「ん? 魔力回路って拡張するものなのか? 生まれつき魔力回路の大きさって決まっているんじゃ。」


「は? 筋トレしても筋肉は増えないといっているぐらいおかしいことを言っているぞお前。」


何を言っているんだっていう顔で俺の顔をカレンは覗き込む。


「魔力回路は使用した頻度で洗練さが増していく、全力より大きな力を使えば少しずつではあるが、魔力回路は拡張していくのだ。 まあ、今の時代、戦争もないから限界まで魔力回路を使うという経験自体が珍しく、軟弱な人間が多くなってしまっているららしいがな。」


「つまり、俺はまだまだ強くなれるってことか‼」


「そういうことだ。」


俺は、新たな未来への希望を加味し寝ながら、ベッドへとダイブすると、置時計が目に入った。


「ってあれ、もう登校時間すぎてるじゃん、やっべ、早く登校しないと‼」


俺は大慌てで登校の支度をして外に飛び出た。

その時、気が付いた。

身体が異様なほど軽い、風を切るように早く動けるし、今ならフェンスだって飛び越えることができそうだ。

やっぱり俺に魔力が流れているんだ。


俺は、その事実にただ感動を覚えていた。

俺、まだまだ終わりじゃない、どんどん可能性がある‼


「これなら俺も、この学園でやっていけるっ!」


俺は、肩が軽くなったように登校していたら、いつもよりも早い時間についてしまった。


そしていつものように自分の席に向かっていった。


「あれ、俺の席がない。」


いや、大体の犯人は想像がつくんだが。


「よう、しょうも懲りずまた来たのか、昨日先生と話しているところ見たぞ、きっと退学でもやんわり諭されたんだろ。 だからもう来ねえだろうと思って机をかたずけておいたんだが。」


はぁ、どうせこいつだと思った。

最近の俺がいよいよ追い詰められていることを悟って、こんなことをしたんだろう。


この昨日も俺に難癖付けてきたヤンキーの名前は、織田流星、いっつも出来損ないの俺のことを馬鹿にしてくるやつだ。


俺は、いつものように無視をして、その場を去ろう、それがこういうタイプには一番の得策だ。


「なんだこいつは、私の主人に対して失礼な奴だな。」


その態度に刀の状態で腰に刺さっているカレンが不快感をあらわにする。

しかし、俺はこいつとは張り合うつもりはない、争うのはあまり好きではないからだ。


「カレン、別にいいだろう、机ぐらい探せばいい。」


「おい、なんだ、戦わないのか。 私がついているのだから負けることはないぞ」


「もういいんだ、張り合っても仕方ないだろ」


俺がカレンにそういい、流星の隣を通り抜けようとした。

その時だった。


「おい、その腰に下げているみすぼらしい刀は何だ。 そんなものを下げて強くなったつもりか。 才能がない奴が何をしても無駄だということがなぜわからない。 お前も恥ずかしい奴だな。」


プチン、何かが切れる音がしたような気がした。

その時、俺の右手が流星の頭をガシッとつかみ投げ飛ばした。


「ああ、もう我慢ならん、ご主人をこれ以上侮辱するというのであれば、体でもってわからせてやるしかないな。」


おい、何やっとんねん。


いや、俺の右手勝手に動いてますやん、自立してますやん。


「おい、お前もしかして俺の体乗っ取れるのか、右手の力が大きくなったかなと思ったら自由が利かなくなったんだけど。」


「ああ、実際は乗っ取っているというより、お前の魔力回路を操って、体の神経に作用することができるといったほうが正しいな。」


「ふーん。」


「えっへん。」


「って何やっとんじゃぁー‼ 投げ飛ばしちゃったよ劉生くん、壁にめり込んじゃってるよう流星君」


俺は、壁にめり込んだ流星を見る、どうやら壁から抜け出そうとしているらしい。

彼の舎弟か何かであろう何人かが流星を引っこ抜こうとしている。


「おいおい、これどうすんだ。 だいぶ哀れなことになっているぞ、俺、このせいで退学になったら笑えないんだけど。」


そんなこといってる間に流星は体を壁から引っこ抜いた。


「おい、よくもやってくれたな、この学園内での暴力はご法度だぞ、今すぐに学園に訴えて退学にしてやる。」


「ほう、ではお前はこのご主人より弱いということを認めるということだな」


「なんでそうなるんだよ‼」


カレンは、俺を乗っ取ったまま話をつづけた。


「誰かに頼るということは、一人では解決でき名合問題に直面した時に行う行動だ。 お前も力で私をねじ伏せればいいだろう。 よって、すぐに学園に頼ろうとするお前は、私よりも弱いですといったようなものなのだ。」


「た、確かにそれはそうだが…なんかお前いつもと雰囲気違うくないか…」


流星はいつもとしゃべり方から雰囲気まで違う俺に違和感を感じてた。


「おいカレン、怪しまれてるぞ‼ そろそろ主導権をわたせ‼」


「ふん、どうせお前は、この場を何となくで終わらせるつもりなのだろう。 逃げてばかりではつまらん、今のお前に逃げる理由など一つもないのだ。 箱舟に乗ったつもりでどんとまかっせるがいい。」


「やだよ、何するかわかったもんじゃない。 俺は、平和が好きなの‼」


「たとえそれが、負け犬でもか…」


負け犬…

その言葉が俺の心に深く突き刺さった。


「おい結城、聞いてんのか‼ 俺にこんなことしといて、ただでは済まないって言ってんだよ。」


気づいたら、流星とその取り巻きが集まってきていた。

その騒ぎを聞きつけたのか、多くのギャラリーも集まってきた。


「負け犬は嫌だ。」


「ああぁ‼ 声小さくて何言ってるかわかんねえよ。 もっとはっきりしゃべれよ、この最底辺がよ‼」


流星は、取り巻きとそのギャラリーを味方につけたと思い込み、さっきの驚いた顔を一変させて、でかい態度になっていた。


「負け犬は嫌だって言ってんだよ。」


カレンは結城の覚悟を認めたのか既に体の主導権を俺に渡していた。


「流星、俺は今日からお前のすることに対して、徹底的に抵抗する。 今後はそのことをしっかり理解して俺に嫌がらせをするんだな。」


「ぬるい」


あれ、なんか俺の口が勝手に。


「そんなことではぬるいぞ。」


あれ、カレンさん。


「決闘をしよう。」


カレンさん⁉


「私が負けたら、私はこの学園をやめよう、逆に私が勝ったらお前は今後私に一切かかわるな。」


んな、そんな、はるかに相手が有利な条件じゃないか。

それに、退学なんて…


しかし、周りのギャラリーは結城に憑依したカレンの決闘宣言に大歓声だ。



「わかった、いいだろう、今日の夕方、魔術訓練場で決闘だ‼ いまさら逃げ出すんじゃねーぞ‼」


するとすでに周りにできていた野次馬の集団から一人の青年が飛び出してきた。


「結城くん、どうするのさこんな決闘宣言しちゃって、今の一撃はたまたま不意打ちだから当たっただけであいつは名門の一家の子供で成績も上位者だ‼ 勝てるはずがない‼ き、君負けたら学校をやめるっていっていたけれど、君はこの学園にいたいんじゃないのかい⁉」


突然出てきたと思ったらまくし立ててきたこの少年は、小暮竜間、俺に次に学年で成績が悪いいわゆるワースト2だ。

だから、同じ穴の狢という意味で交流がある人物だ。

こいつも流星から少なからずいじめを受けており、そういった点で仲間意識がある。


「大丈夫だ、安心しろ、策はある。」


カレンの力でぶっ飛ばす、それが作戦だ。


「ゆ、結城君、君がいなくなってしまったら、僕は、僕は……」


ああ、悲しんでくれてるんだな、大丈夫俺は負けないから


「僕は、ワースト1になってしまうじゃないかぁー‼」


「ってそこかよ‼」


っと、体の主導権がいつの間にか戻ってたみたいだぜ。


そうして、一波乱終えた後、野次馬は解散し、俺と流星が決闘をすることになったという噂だけが広まっていった。

俺、いや俺たちは引くに引けない状況になってしまったというわけだ。


「ああ、ああ、かわいそうな結城君。」


隣では竜間が俺の未来を見るかのように何もない空中を眺め、ぶつぶつとぼやいていた。


ということで、脳内会議を始めます。


「カレン、いや、カレンさんこれは一体どういうことですか。」


「はいはい、お前の言いたいことは十分に分かっている。」


「いーや、わかってないね。 お前、あの場は我慢してやり過ごせばよかったの‼」


「お前は、見たことのない世界を見たいんじゃないのか? だから私と契約を結んだんじゃないのか?」


「それは‼そうだけど…でも俺には無理だよ…」


「はぁ、これは重傷だな、お前は記号におびえているんだよ。」


「記号?」


「そうだ、劣等生、流星、失敗、その言葉ばかりを恐れている。 お前が一回でもそれらに立ち向かったことがあったか。 それらの正体がなんであるかを調べたことがあったか。 お前には、私がついているできるはずのことをできないと思い込むのはもうやめだ。」


できるはずのことをできないと思い込むか…確かにそうかもしれない。

俺は、できないに逃げていたのかもしれない。


「カレン、協力してくれるか。」


「お前と私は、契約しているのだぞ、一心同体、一蓮托生だ。」


カレンの力が、ものすごく強いことはわかっている、きっと勝ってくれるだろう。というか勝つ。


そんな感じで一日の授業が終わり、クラス、いや学年中が注目していた決闘の時間になった。

既に会場には、野次馬がぞろぞろと集まりどちらが勝つかなどの賭けをそしてからかっている人々もいた。


そうすると魔術訓練場の入り口から、ギャラリーへ手を振りながら、のっしのっしとまるで儲かったかのように流星が歩いてきた。


「よお、結城、ボコボコにされる覚悟はできてるんだろうな。」


「ああ、できるだけケガさせないように手加減するよ。」


大丈夫、カレンのと契約を結んでから勝てる気しかしない。

大丈夫、勝てるはずだ。


すると、審判らしき生徒が訓練場に入ってきた。


「では、決闘を始める。 ルールは、攻撃は素手のみ、両者が降伏、戦闘不能になったらそこで決着とする。」


え、武器なし? 聞いてないけど? 俺の意見とか聞いていかなくていい? あれ、これ詰んだ?


「両者、それでよろしいですね。」


え、よろしいわけないだろ、カレンの力がなければ俺はあいつに勝てる見込みはないんだけど。


仕方ない、怪しまれてでもいいからお願いするしかない。


「あの、武器を使うのを許可してほしいんですけど……」


俺はおずおずと申し出る。


「しかし、武器を伴っての決闘は死人が出る場合がありますので、通常の場合には武器は使用しないという決まりなのですが。」


くそっ、どうする。 このまま素手で戦っても勝てるはずがない。


「いいじゃない、やらせてあげない。 危険になったら私が止めるわ。」


その時だった。

誰も気づかなかった。

気づけばそこにいた。

きっと俺がきっとこの人と戦ったら負けたことにすら気づかないだろう。

そしてそいつは、眼鏡をかけた一人の少女だった。


「か、鑑様、どうしてこのような物騒なところに」


決闘の審判をする予定だった生徒が突然狼狽しだした。

この女は、鑑というらしい、あそこにいたことに気づかなかった、それともずっとあそこにいたのか。


「いや、なんか新入りの一年生が決闘をすると聞いて見に来たんですよ。 それはそうと審判さん、少年は武器の使用を求めているようですね。 危険になったら私が止めますので武器の使用を許可してあげてください、それでいいですか。」


「し、しかし、鑑様、規則では……」


審判の生徒は、規則だからと譲らない。


「それとも、私のことは信用できませんか?」


「い、いえ、そういうわけでは」


しかし、あの圧力には勝てなかったようだ。

鑑さん、いったい誰だか知らないが、ナイスだぜ。


「はい、そういうことで始めましょうか。」


よし、俺は刀の状態のカレン、もとい炎黒刀を腰に構えた。

そしていよいよ始まるかという雰囲気になってきた。


「フォー、書記ちゃんー、いきなりいなくなったと思ったらなんか面白そうなことに首突っ込んでんねえー」


「会長‼ 鑑さんも‼ 会議中ですよ‼ というか鏡さんいつからいなくなってたんですか。 会長が言うまでわからなかったですよ。」


その雰囲気をぶち壊す勢いで、なんだか賑やかな人たちが二人やってきた。

その二人を見て、その鑑という女性も苦虫を噛み潰したような顔をした。

どうやら、何やら言い合いをしているようだ。


「このままではらちがあきませんね。 見ればわかるでしょう決闘です。 審判です。 二人とも、ここにいるなら観客席にでも行ってください。」


「んーわかったー。」

「すいません、すいません。」


そういわれた二人、というか会長と呼ばれていた方とその連れが観客席に向かっていった。

会長が、近づくとその周りの人たちは、まるでモーセが滝を割るように席を譲った。


「と、とりあえず武器の使用の許可は下りたってことでいいな、じゃあ始めようか。」


俺は炎黒刀を構えると、刀を抜いてその刀身をさらす。

その俺の姿を見たのか鑑さんは開始の合図をした。


「では、はじめ‼」


これは最初から予測できていたことだ。

流星は、簡単に言えば流星は俺をなめきっているんだ。

だから、自分からが責めない、あえて相手から攻めさせて、実力の差をわからせたいんだ。

あいつは、そういうやつだ。


「どうした、ご主人、攻めんのか? 相手はがら空きだぞ。」


「いや、よく考えたら、お前と契約結んでから、一日もたってないんだよ、戦闘スタイルってもんがそもそもないから、攻めるにもどう攻めたもんかと。」


「ふむ、じゃあ私の言う通り動いてみたらいい。」


「うっし、わかった。 何でも来い‼」


「相手に向かってジャンプしろ」


俺は、流星に向かってジャンプした。

地面にはミシミシときしむ音をあげ、風圧で審判をよろめかした。

飛ぶというより足裏の謎の力で放り投げられるという感覚に近かった。

そしてすでに、俺は流星の目の前まで迫っていた。


「そして、キックだ。」


俺は、流星に向かってそのままキックを繰り出した。

流星を蹴るというよりも空間を蹴っているという感じだった。

空気の抵抗をこれほどに感じたのは初めてかもしれない。


俺はそのまま蹴りぬいた。

ズドン‼

流星の体は既にそこにはなかった。


「カレンさん⁉ 次はどうすればいいんですか⁉」


「……考えてなかった。」


「おいいいいいい」


俺はそのキックの体制のまま訓練場の壁に一直線に飛んで行った。

そしてそのまま激突かと思い、思わず目をつぶったその時だった。


俺が目を開いたら、世界は反転していた。


「おーおー、少年、君すっごいねー、けど粗さが目立つね。」


俺は、さっき会長と呼ばれていた少女に片足をつかまれて宙ぶらりんになっていた。


っていうか武器の使用許可を求めたのに武器使わないまま終わっちゃたよ、どうすんのこれ、観客席の人たちも、早く勝負がついたことよりも、鑑様が武器の使用をせっかく許可してやったのによぉ、という顔をしていた。


「はーはっはっはっはー、これは実に面白いものを見せてもらったよ。 相手の彼は、どうしてこの決闘を引き受けたのか、判断力を疑いそうだよ。」


「会長、彼は退学ギリギリの劣等生だったはずです。 しかし、今の動きは、正直油断したとはいえ、私も視界から外してしまいました。」

「へぇー、彼が退学間近の劣等生ねぇ、にわかには信じがたいけど、茜がいならそうなんだろうね」


どうやら、会長さんにつき従っている女性は茜さんというらしい。


その会長さんは片手でぶら下げている俺のことを値踏みするかのようにじろじろ見る。

そしてその眼は、俺の刀にとまった。


「ふむ、どうやら、その刀に秘密がありそうだ。」


会長は興味津々といった顔で俺の炎黒刀に触れようと手を伸ばした。

しかし、彼女が炎黒刀の柄に触れた瞬間、彼女の手は炎に包まれ、会長の手の表面は焦げるどころか焼けただれていた。


「か、会長‼ 貴様、よくも会長に攻撃を‼」


「おい、カレンやめろ‼」


茜さんはその現状を俺が会長に攻撃したと思い、激高した。

俺も思わず叫ぶ。


「茜、やめなさい。 どうやら失礼を働いたのは私の方みたいだから。」


「会長…」


会長は、怒りに狂う茜をなだめた。

気づけば会長の右手は、光に包まれて修復されている。これも魔法なのかすごいな。

そして会長さんは、右手を顎に当てると、考えるようなしぐさをした。


「うーん、もしかしたら茜よりも強いかもねぇ。」


「か、会長‼ 私がこんな奴に負けるとでも思っているんですか‼ こんな宙ぶらりんの男に。」


こんなやつって、そこまで言わんでも、っていうか宙ぶらりんなのは会長に言ってください。


「ねぇ、少年、名前は。 私の名前はカミーラよ。」


「結城、最上結城といいます。 というかおろしてもらっていいですか。」


「ああ、ごめんごめん、忘れてた。」


会長は、足をつかんで宙ぶらりんにしていた俺を地面に下ろした。

そして、何やらに奴いた笑みで俺を見下ろしてきた。


いや、なんか嫌な予感がするんだが…


「ねぇそれじゃあ結城君、そこにいるあたしの付き人の茜と戦ってみない?」


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