戦闘と契約
ぴろぴろぴろぴろーー♪
「ありがとーござーました。」
俺は、とりあえず適当に甘味を買って、コンビニから出た。
コンビニを出た外は妙に静かで肌寒い。
ああ、いきなり追い出されたから、ちゃんと服を着てこれなかったわ、もっとちゃんと着込んでくればよかった。
うーさむさむ。
「っ‼」
すると突然、黒服の男たちに周りを囲まれた。
えっ、ちょっとまって、黒服の男たちに周りを囲まれる理由には全く身に覚えがない……
しかし何の身に覚えがなくても、こいつらが俺に敵意を持っていることだけはその戦う構えから見て取れた。
まてまずは、誤解を解くのが大切だろ、こんなに細々と生きてきた俺が黒服男たちに囲まれる訳ないじゃーん、てへっ☆
「あの、すいません。 何か勘違いされていると思うんですが。 多分人違いですよ。 夜のコンビニに買い物してきたしがない学生なんですが……」
男たちは、何にも答えない。
するとその中の一人が口を開いた。
「炎黒刀をどこにやった。 お前が持っているんだろ。 それを渡してもらおう。」
エンコクトウ?
黒糖の一種か?
「あの、どんな奴か具体的に教えてもらっていいですか、コンビニにあれば買ってくるので……」
「ああん、ふざけているのかお前は‼」
男たちは、突然すごみ始めた。
ああ、これはれっきとした勘違いというやつだな。
「はて、そのエンコクトウとやらは知らないんですが。 やっぱり人違いじゃないですか?」
エンコクトウ? そんな美味しそうなのやつはあいにく持ってない。
「そちらがそんな態度なら、こっちにもそれなりの態度っていうもんがある。」
男たちはズンズンと距離を近づけてくる。
おいおい、わらえないよこれ……
「くそっ、どうやら相手さんはこちらのは足を聞く耳を持っていないようだ。 おらっ‼」
俺は、手に持っていたビニール袋を周りを取り囲んでいる男の一人にぶつけると、男が大勢を崩した少しの隙を見て、男たちの包囲網を走り抜けた。
「くっ、逃げたぞ‼」
後ろから、大勢の足音が聞こえてくる。
「なんかよくわからんが、そう簡単に捕まってたまるかよぉ‼」
どうやら俺の田舎の山の中で鍛えた足は、大人の足の速さに勝るようだ。
どんどんその大人たちから距離を話していく、家に帰る前にはまきたいところだが……
俺は、道の角をランダムに進み、大きく遠回りをするように帰路についた。
この都市は、発展が進んでいる代わりに闇のある都市伝説が流れていたりする。
きっと、俺の知らないところで事件が起きていて、その当事者と俺は勘違いされたんだろう。
余計なことにはかかわらないのが吉というわけだ。
俺は住んでいるマンションの前までたどり着いた。
「まあ、これでまけただろう、とっととメイド女にお菓子食わせて、明日大学に届けよう。」
ただいまーっと
ドッカーン
その瞬間、俺の部屋が爆発して消し飛んだ。
恐らくその爆発で飛んだろう物であろう黒い煙が俺の部屋から噴き出していた。
「うそ、だろ……。」
俺はあっけにとられてその場を動けなかった。
するとその煙の中からメイド服の女が飛び出してきた。
あの爆発だ大けがを負っているかもしれないと思ったが、実際には無傷のようだった。
だが、俺の姿を見ると苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「おい! お前大丈夫か⁉」
「人の心配している場合か? 危ないのはあんたよ。 とっとと逃げるぞ。」
気がつくと周りにコンビニ前であったやつらと同じように黒服を着た男たちが周りを取り囲んでいた。
くっそ、こいつらみんなおんなじ顔しやがって、どこからでも出てくるのか。
爆風によって空を舞ってた少女は、俺の隣に着地すると俺の手を握ってきた。
「私で戦え。 魔力の供給も私が手伝う。」
メイド服は、俺の目を真剣に見つめてそういった。
「お前で戦う? ってどういうっておい。」
少女は、そういったかと思うと炎につつまれ、その炎の中から抜き身の刀として飛び出してきた。
「そういうことかよっ!」
俺がの刀を握りしめた、その時だった。
ドクン、ドクンと心臓が鼓動を打つのを感じた。
確かさっき、あの女は魔力供給を手伝うって言ってたよな。
もしかしてこれが魔力を持つっていう感覚か、全身が厚くて力があふれてくる。
その力の激流は一時のことで、次第に落ち着きを取り戻した。
魔力が体の中で正常な循環を始めたのだ。
「よし、行くぞ‼」
俺は、大きく飛び上がると取り囲んでいる男たちの頭すら飛び越え、その男の中の一人の頭を踏みつけてその群衆をとりあえず振り払った。
俺は、とりあえずそいつらから距離を離すように、住宅街の屋根を飛び移って高速でその場を離れた。
何故だかわからないが、頭で意識しなくても勝手に体が動く。
「メイドさん、とりあえず振り切ったけどこれからどうするんだ?」
俺は、爆発した家、追ってくる謎の男たち、この二つをどうするのか意見を聞こうとしたが、メイド服から帰ってきた言葉は、俺をさらに急き立てた。
「おい、油断するな、一人、いや二人の魔力がすごいスピードで追いかけてきている。 このままじゃ追い付かれるぞ。」
その警戒心を表すように刀身がぎらぎらと点滅した。
思わず周りを見渡す。
右を見ても左を見ても後ろを確認しても誰もいない
「誰もいないぞ。」
「いや、いるぞ、目の前だ。」
「はっ‼」
その瞬間だった。
目の前に既に長身の男が立っていた。
白いシルクハット、白いスーツ、赤いネクタイ、そして顔の下半分をおおう黒い布、この夜の暗闇に対してその存在を誇示するかのような存在に俺は釘づけにされていた。
「おーや、そりゃ手下の雑魚どもがてこずるわけだ。 炎の賢者が今日であったばかりの人物に手を貸すなんて。 どーやら契約はまだしていないようだがね。」
そいつはすでに鼻と鼻がくっつくぐらいの距離で語りかけていた。
俺は、固まってしまっていた。
逃げれないとか、動けないじゃない、どうしていいかわからないのだ。
今がどういう状況で、俺はその状況に対してどうアクションをおこせばいいのかがわからなかったのだ。
「まあ、面倒な芽は早いうちにつむに限るね。」
男がそういった後、俺の視野の中の世界は急に動き出した。
いや、俺が横に吹っ飛んでいるのだ。
蹴られた?
いつのまに?
「くはっ‼」
俺は、くの字に体が折れ曲がり、そのまま吹っ飛んだ。
そしてそのまま近くにあった公園のジャングルジムにめりこんだ。
「あ、ああ……」
ああ、身体の前進が針で刺されているかのように痛い。
ジャングルジムがひしゃげていて、俺の骨が粉々になっていないのはきっと体をめぐっているこの膨大な魔力のおかげだろう。
それにしても全身が痛い事には変わりはなかった。
「い…痛ってえ。」
しかしがおぼろげだが、男が俺に追撃を食らわせるためにこっちに歩いてきているのが見える。
このままじゃ、また……
しかし、さっき、あいつが目の前に車で俺は気づくことができなかった。
恐らく、あいつと俺の実力の差は明白だった。
(このままじゃ、勝ち目はないな……けど…)
俺は、ある一つの事実を理解していた。
そんなに早く動ける男がなぜこちらにゆっくり歩いてくるのか、その答えは簡単だ。
あいつ俺をなめている。
そう、そこにつけ入るスキはあるはず。
「おい、メイド、聞こえてるか。」
俺は体を起こして、ひしゃげたジャングルジムから飛び出すと、こちらにゆっくりと歩いてくる男に対して構えをとった。
「聞こえてるわ、にしてもこれは面倒な奴が来たわね。」
「追われてるのはお前なんだよな、なんで追われているんだ。 こころあたりは?」
「すまんな、いくつもあることに対しては数えないことにしているんだ。」
「お前なぁ…」
すると次の瞬間、そのシルクハットの男の手に炎が収束し始めた。
男の手のひらに炎が渦巻くように凝縮されていく。
「まーいーや、所有者だけ燃やしてしまおうか。」
「おいメイド‼ なんかすごい力みたいなものが集まっているぞ。 それとなんか物騒なこと言ってる‼」
メイド服の女もその力の強大さを感じたのか刀の状態のメイド服の女が叫んだ。
「おい、まずいぞ、あの攻撃を食らえばお前は死んでしまう。」
「それはわかる、単刀直入にどうすればいいかを聞いてんだよ‼」
「私と契約するんだ。」
でた、契約だ。 さっきのやつも契約とか言っていた、こいつらは俺の知らない言葉をよく使う。
今までだってそうだ。
いままで学園で過ごしていて、誰もが簡単にできることでさえ俺は一つもできなかった。
誰にやり方を聞いても感覚的なことしか教えてくれない。
なんだよ、仲間外れみたいじゃないか。
才能がないから、はい終わりってか。
俺は、変わりたい一心で嫌な村から逃げ出すように上京してきた。
ジョーダンじゃない、こっちでもうまくいかずに、村に戻ることになるかもしれないなんて。
悪魔でもいい、神様でもいい、何でもいい。
変わりたい、そのためにどうすればいいのか教えてくれるなら、見せてくれるなら契約でも何でもしてやるぜ‼
「わかった、契約するぞ‼ どうすればいい。」
俺は、結審をして刀の柄を強くつかむ。
「接吻をするんだ。」
せ、接吻⁉ 接吻って言ったかこいつ⁉
「おいそれってキスのことか?」
「ああ、それ以外何がある?」
「お、追い待てよ、俺はこの純潔を散らすわけにはいかないんだ‼ キスだなんて……安売りしないぞ俺は。」
「はぁ、何を言っているんだお前は、…なあお前、女と手をつないだことはあるか?」
ギクッと俺の肩が飛び跳ねる。
「あ、あるよ、それくらい。」
「母親抜きでだぞ」
「お、おう」
「親族も抜きだ。」
「うへっ、へへへ。」
俺は、何とも言えない気持ちの悪い笑みを浮かべてしまった。
「ええい、どうせお前など、一生独り身なのだ。 下らんプライドは捨ててキスすればいいだろう‼」
一生独り身……
「ひ、ひどい、俺の純情が傷つけられた、謝れ、泣いて謝れ‼」
「泣いてるのはお前だろうに…」
情けなく涙目を浮かべる結城を一瞥すると、周りの大気の分子が一度に慌てるように振動した。
「なんやら、相談事は終わったかぁ、人目についても面倒だし、終わらせるぞぉ。」
その時、ついにシルクハットの男から大きな火の玉を飛ばしてきた。
もう眼前まで迫っている。あと少しで俺らまとめて丸焦げだ。
「いいからキスをするのだ‼」
そういいながら、いつの間にか人間の姿に戻っていたメイド服の女は、俺の襟を強引につかみ俺の唇を奪った。
「ああん‼」
ッぶちゅー
その唇と唇が触れている瞬間、脳内に直接語りかけられた。
「小僧、名前は‼ 私の名前はカレンだ。」
「お、俺の名前は結城、最上結城だ。」
「よし‼ 最上結城、お前を私の契約者として認めよう、お前は私を契約者として認めるか。」
はっ、俺の唇を奪っておいてそれはねえだろ。
答えはもうとっくに決まっている。
「ああ、俺も認めるよ。」
そう頭の中で答えた次の瞬間に火の玉は俺に着弾し爆発した。
近くにあったブランコやジャングルジムはあまりの熱によって溶けてドロドロになり地面の土は周りにはじけ飛んだ。
誰が見ても、それはすべての生命を根絶やしにする地獄の業火であると思っただろう。
そして、その爆心地にいた俺はというと
「いってえ、結局痛いじゃないかよ。」
「肉片になっていないだけ奇跡だと思いなさい。」
と、ジョーダンが言えるほどには無傷だった。
けれど、それはあくまで死なずに済んだというだけで、目の前にいるこの敵がいなくなったわけではない。
シルクハットをかぶったその男は今にもこちらへと歩いてきている。
「ほぉー、契約を交わしたか。 必死だな炎の賢者よ。 どれ、見せてみろ。」
男はそういうと突然、視界からが掻き消えた。
次の瞬間視界がグルンと回転した。
何事かと思うと、男は俺の足をつかみあげていた。
「うわっ、くそっ、はなせっ‼」
「んー、綺麗な紋様だねぇ、もしかしたら君、案外掘り出し物かもね、なぁ炎の賢者よ。」
綺麗な紋様?
俺の体に紋様なんてものはないぞ?
そう思って俺のお腹をよく見るとへその周りに入れ墨のような紋様が浮かび上がっていた。
「なんだこれは、もしかしてその契約なんちゃらの影響か。」
「そうそう、ご名答。 感がいいねキミ。 この紋様は、カレンとの契約のしるしのようなも
のさ。」
そういって、男はとがった切れ目で、俺の体をなめるような目で見てくる…正直気持ち悪い。
「っ…っていうか、その炎の賢者ってカレンのことを言っているのか、この刀の人格の。」
「へー、名前を知っているということは本当に正式な契約を結んだんだね、それに炎の賢者は、正確にはその刀、炎黒刀に封印されているといったほうが正しいがね。」
ああ、今日は難しい言葉ばかりが出てくる。
わからないことは考えない方がいいと俺は決めている。
しかし逆にわかることは今の状態じゃ目の前のこいつにはかなわないっていうことだ。
というかこの刀ってそんな中二病チックな名前をしているのか、なんかやだな
「もう最善は尽くした。 煮るなり焼くなり好きにしろ。」
「え、ほんとに? んーでも君このままほおっておいても多分死んじゃうよ。」
男はそういってにやりと笑う。
「ならお前の好都合じゃねーか、このまま放置して、お望みどうり死んでやるよ。」
俺は、抵抗できない状態であるとわかっていても、最善を尽くしたことからくる自信や諦めから俺はもう自暴自棄になっていた。
「んー、ただ力の制御はまだへたくそかな、いやはやライトノベルの主人公じゃあるまいし体内の魔力回路を炎の賢者が強引に開いたもんだから回路が傷ついている。 今は、破壊と再生を繰り返しているから何とか保っているというわけか。」
男は、何やら俺の分析を行っていた。
しかし、言っている内容が早口なのと小難しいのとで、俺には理解できなかった。
「んん? ああ、どうやら何を言っているのかさっぱりって感じだね。 いいよ、どうせ放っていても死んじゃうんだし教えてあげるよ。 『縛』」
その男が『縛』と唱えた瞬間、俺の体は指先一つ動かせなくなっていた。
「君、うちの学園の最上結城君だよね、話には聞いてるよぉ。 学年最下位だってね、ろくに魔法も使えやしない。 見たところ、君の魔力回路は一度も使用された形跡がないようだ。」
男は、身動きの取れない俺の周りをぐるぐると回りながら、説明口調で話を進めていく。
「そして今、干からびた砂漠のような君の魔力回路に、炎の賢者との契約による魔力が一度に流れてきたわけだ。 これが、意味することとは、なんだと思う? 結城君」
「も、もが、もがが」
「ああ、そうか、『縛』ですべての体の自由を拘束しているんだった。 ごめんごめん。 ひょいっと。」
そういって男は、無造作に手を振った。
「ぷはっ、しゃ、しゃべれる。」
「んで、しゃべれるようになったところで話を続けようか、もう結論に入るけど、君の魔力回路は、炎の賢者の魔力の濁流に耐え切れず崩壊を始めている。 今、君が平然を装えているのは、炎の賢者の魔力の特性である治癒能力によるものだ。」
「じゃあ、その崩壊と治癒のバランスを保てば…」
「保てると思うかい?」
男は俺の発言にかぶせるようにそう言ってた。
「おっと。おしゃべりの時間はここまでみたいだね。」
「あれ、熱い、体全体が…熱い。」
身体が焼けるように熱い、ああ、まるで体全体が燃えているかのようだ。
「あ…あぎゃあががああううう…」
俺は壮絶な体の痛みに、そこらじゅうを転げまわった。
「ま、面白そうなんで、壊れちゃう前に蓋するか。」
悶えながらも、視界の端に移るシルクハットの男がそんなわけのわからないことを言っているのだけは聞こえた。
そしてそいつは、右手をパーにして高く掲げた。
「一体何を…」
次の瞬間、男の手がぶれるように消えたかと思ったら、俺の腹にとてつもない衝撃が走った。
俺の世界はそこで暗転した。
感想よろしくお願いします。