出会い
探検だ、冒険だ。
そう、都合のいい現実逃避だ。
俺は、いつもの帰り道と違う道を選んで帰ることにした。
いつもと違う道を通るといつもと違う景色や学生の姿が見える。
こんな日になんか新しい出会いでも生まれそうだ、女の子とあんましゃべないけど。
そうしているうちにあたりも暗くなっていった。
「やっべ、暗くなってきちまった、早く帰らねーとって、ん?」
そんな夕暮れ時に一つの物が目に留まった。
刀だ。
川のほとりに刀が落ちていたのだ。
それは、おもちゃなんかじゃない、人を殺せる殺傷能力のあるれっきとした武器だ。
なんでこんなものがここに落ちているのかはわからないが、大体の予想はつく。
この都市は、魔法使いが武器登録をきちんと行ったうえで武器の携帯が許可される、なのでこの刀はどこかの魔法使いの物だろう。
「しっかし、なんでこんなところに……」
そもそもこんな誰もが拾える場所におちていていいものではないのだ。
武器を持っている生徒の多くは魔法が使えるものであり、この近くの学校は桜火学園しかない、のできっとうちの学園の生徒の物であろうと俺は予想をつけた。
「よっとっ」
俺はその刀を明日学園に持っていこうと、その刀を拾いに川に降りた。
その刀はまさに日本刀と呼べるものであり、揺らめくようツバに、真っ赤な鞘、漆黒の紐が結んであった。
川のほとりとその刀、あまりに不釣り合いなその組み合わせが、刀の異様さと美しさを引き立てていた。
「まったく、こんなところに誰が落としたんだ。 ばれたらちょっとした罰じゃすまないぞ。」
俺は、その刀を持ち上げたがズシリといった鉄特有の重さはこず、その刀は羽のように軽く、ほのかに熱を発していた。
「変な刀だな、もしかしてやばいやつなのかこの刀…かかわらないほうがよかったかな。」
ただの刀ではないということは見てすぐに分かったが、手に持ってさらにその刀の異常性が伝わってきた。
刀はその使い手の鑑、きっととんでもない使い手の物だということはすぐに分かった。
「でも、放置ってわけにもいかねえしな、しかたないもって帰って、明日にでも学園に届けるか。」
俺は、その刀を持つと、暗くなる前に急いで家に帰りついた。
そのままバッグなどをすべて肩から降ろすと、手に持っていた刀を部屋の机の脚に立てかける。
しかし、その姿は見ていても美しいものだった。
すこしばかりその美しさに見とれていると、突然トイレがしたくなり、俺はトイレに駆け込んだ。
ジャアーー
「ふぅー、すっきりしたー っておおぉい!」
俺は、トイレを済ませて部屋に戻るとリビングで平然とカップで飲み物を飲んでいる人影に驚いた。
「なあ、驚くのもいいがチャック前回だぞ。」
「いやん‼」
俺は、とっさにチャックを閉める。
その女は、何でもないものを見たかのように平然としている。
そ、そんなことよりっ
「お、お前どこから入ってきたんだ。」
俺の問いかけに対して視線だけを向けて、とても洗練された動きで髪をたくし上げると、興味のないような視線で俺を見た。
「どこから入ってきたとは愚問だな、お前が私をこの部屋に連れ込んだのではないか、何をされるのか不安でしかたなかったのは私のほうだぞ。」
ん?何を言っているのかがすんなり頭に入って来ない。
「え、それはつまりどういうことだ?」
はぁー、とその少女はため息をつくともったいぶるようにためて口を開いた。
「刀だよ、私は君の持っていた刀さ。 そういえば信じてくれるか。」
そういって、その女は刀があった場所にちらりと目を向ける。
こいつは何を言っているんだ…俺の持っていた刀はそこに…ってあれ?
「えっ、か、刀がない、っていうことはお前本当に俺が拾った刀なのか?」
その女は、何にも言わずに俺の目を見つめ、そして口を開いた。
「そうだといっているだろ。 んー、この家にはお菓子はないのか、なあ坊主ちょっと甘いものを買ってきてくれないか?」
「いや、でていけよ。」
「ん?」
「ん? じゃないよ、お前が誰かの落とし物だっていうから、学園に届けようとしていただけだ、自分で二足歩行できるならとっとと帰るんだな。」
「そうか、じゃあ、この家を燃やされるか、お菓子を買ってくるかどっちがいい。」
そういって、少女はその手に炎の塊を出現させた。
「お、おちつけよ、そんなことしたらお前だって警察いきだぞ。」
「なんだ、この社会の人間は刀を捕まえるのか…ふふっ。」
「くそっ」
少女は俺のそういいさっさと家から俺を追い出した。
怖い、刀を盾にする奴なんて初めて見た。
「ったくなんだっていうんだ。 まあ、なんか俺が勝手に家に連れてきてしまったわけだし、近くのコンビニでなんか買ってきてやるか。」
俺は、しぶしぶその現状を受け入れた。
まあ俺は田舎者だからこの都会には知らないがいっぱいあるということだろう。
だから、人に変身する刀があってもおかしくはないんだ、俺が知らないだけだ。
俺はそうであると自分に言い聞かせ足早に近くのコンビニにむかった。
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