敵のアジト戦 前編
「ところで、だ、お前たちはメールを細かくチェックするという習慣はないのか。」
あ、あれ
「いや、あれは、犬のコスプレとか、いろいろあったっていうか……」
「言い訳はいいわ、この駄犬。 そういえばマリアさんがあなたに早く会いたいって言ってたわよ……あんまりヒーロー気取りもよしてもらいたいものね。」
なん…だと…
きっとそれは違う理由です。
生きていてすみません。
俺たちは、コンテナの中からひょっこりと顔を出した。
「みて、あそこの港から、多分あそこから出る船のどれかが、あなたを追っている敵が乗っている船よ。」
「んあ、なんだーもう逃げようとしているのか。」
この学術研究都市『ユートピア』には、船以外に出入りする方法はない。
この都市は、大きな壁でもって2方向を囲われており、この都市から出るには、その隙間の港から出ないといけない。
また、都市の技術流入や流出を避けるために船には念入りにチェックされる。
「アジト代わりに、船を使っている可能性があるっていうことか。」
「なるほどアジト代わりに船を使っているわけかー」
いつでも、逃げることのできる移動できるアジトか、なるほど。
「ん、良く気付いたわね。 あんたも頭が回るのね。」
「ご主人よ、聞こえないとはいえ、人が言ったことを自分が言ったように言うのは……」
「ってカレンが言っていましたー。」
「あ、そうなの、どおりで賢すぎると思ったわ。」
くそっ、どうしたらよかったんだ俺は……
「で、どの船を攻撃すればいいんだ。」
俺は、隠れている積み上げられたコンテナから乗り出して柄を握った。
「まだわからないわ、今、鑑さんが調べてくれているところ。」
「ああ、そうなんだ。」
鑑さんって結局何をしているんだ。
「ってお前は何やってるんだ。」
後ろを向くと茜が倒れた警備員を運んできていた。
「はい、おまわりさーん、悪い人がここにいます。」
それを言おうとしたら、茜に口をふさがれた。
「はいはい、おまわりさんなら、そこでおねんねしてるわよ~」
「ひえ~」
俺は、口をふさがれたまま奥に引きずり込まれていった。
「むぐっ、ぷはっ、何するんだ。」
「あんた、うるさいから、大人しくついてきなさい。 その人たちも電気ショックで気絶しているだけだから。」
よく見ていると、倒れている警備員は全員気絶しているだけであることが見て分かった。
「おおい、結局何をって、お前は何をして⁉ 」
俺が、倒れている警備員さんたちから茜に視線を戻すと、茜は配線板のようなものに電撃キックをかまそうとしていた。
「何をって。配線板をデストロイしようとしているんだけど。」
「いや、何故、配線板をデストロイしようかと思ったのかの理由を聞きたいんだが、こっちは。」
「なんでって、私たちが探している船、入ってきたってことは出るためのチェックも通れる偽装をしているはずでしょ。 このままじゃ、時間がたつごとにどんどん『ユートピア』の外に船が流れていってしまう。 だからこの配線版をデストロイして、足止めするのよっ。」
茜は、言い終わるのと同時に、配線板にキックを叩き込んで、配線板を文字通りデストロイした。
「おおう、やちゃったねぇ。」
やっべ、知らない振りしよっと。
「何ビビってんのよ、『ユートピア』じゃ実力行使が基本よ。 力がないものは奪われるのよ。」
「だからってよ……」
「だからも何も慣れよ、慣れ。 っというかあんたのためにやってあげているのよ。」
「それは、そうだがよ。」
く、仕方ない…すまんよっ、まじめな警備員さんたち。
「ご主人、それでよい正しさを忘れぬ心が必要なわけだ。」
「う、カレンよ、わかってくれるか。」
もう夜も更けて真っ暗な中、俺と茜は、壊れた配電盤の近くのコンテナに隠れ、港の人たちは予備電源に切り替えるであろうという情報を手に入れた。
「おそらく私たちに残された時間は、予備電源に切り替わるまでの時間みたいね。 そう長くわないわ。」
俺たちは、壊れた配電盤に集まった人らの話している言葉を盗み聞きをして、情報を集めた。
「鏡さんとの合図はどうしているんだ。」
「ああ、花火上げるって、」
「は? 大胆なのか、隠れているのかどっちなんだよ。」
「しんないわよ、あのね、郷に入りては郷に従えって言葉があるように、私たちにもルールっていうもんがあんの、その一つに合図はでかく、最後はでかく終わらせるっていう慣習があるの。」
「けれど、花火って堂々し過ぎじゃないの」
「いや、もう遅いよ」
何が、という前にそれは起きていた。
茜の瞳に移る花火の昇るときの細い光が、見えていた。
振り向いた時には、既にでかでか強い花火が花開いていた。
「さあ、行ってらっしゃい、これは、あんたの晴れ舞台でもあるんだから。」
「晴れ舞台って、おい⁉」
その晴れ舞台の意味を聞く前に、積み上げられたコンテナの高台から突き落とされた。
いや、っていうかこのまま落ちたら死んじゃう……
「カレン‼」
「困ったときにはあたし頼りか、いいぞ、頼れ、頼れ、眠りすぎて体はなまる一方なのだから。」
カレンは、炎黒刀から前方に炎を噴出させ、地表近くの空気を熱して膨張させ、上昇気流を起こした。
俺は安全に着地する。
「よしカレンあの船だ。」
「ああ」
基本的にカレンから魔力供給を受けているため、身体能力を大幅に強化されている。
話さずとも、自分がどうしたいかが心の念のようなもので伝わり、体にちょうどよく魔力を注入してくれる。
学園長室を出るときにジョーカーから一つだけ忠告を受けた。
ジョーカーが言うにはこうだ。
俺の体は、カレンによって魔力供給がされているが、それは俺の体にとって負荷のかかりすぎることらしい、突然の魔力の奔流に驚いた細胞が死んでしまい、そのままでは命にかかわるのだとか。
だから、一つ一つに力を籠める、一つ一つに魔力を分散させて、体への負担を軽くするんだ。
俺はそのまま花火の上がった船まで走り、大きく飛び上がった。
そのまま、積み上げられたコンテナから着地した時の要領で着地する。
舟の看板にきたぞ、どこに俺たちを狙って、教室をめちゃくちゃにした奴がいるんだ。
「ねぇ、君さ、どっからは入ってきたの、あの花火なに?」
そしたら船の中から一人の少年が出てきた。
「ねぇ、なんで僕を攻撃しようとするの、知ってるんだよ、僕を君が僕をおいかけまわしてたこと。」
「追い掛け回してたのはそっちの方だろ。」
お互いに応えない……沈黙があたりに散らばる。
その時、ぽつり、ぽつりと雨が降り始めた。
「なぁ、俺もお前に聞いていいか。 なんでお前は、俺の教室を襲った。」
「べっつにぃー、たまたま僕の作品たちが君らにお痛しちゃったって話でしょ、それにどっちかっていうと僕の作品を弁償してほしいんだけど~はいっ、弁償、はいっ、弁償‼」
「お前が言いたいのは、それだけか…」
「は?」
「お前が言いたいのはそれだけかって聞いてんだよ。」
「うん、それだけ。」
「そうか」
俺は刀を構えて、腰を深くする。
しかし、それは鑑さんが和ありこんできたことによって空回りに終わった。
「あーらら、捕まっちったー。」
鑑さんがその少年を拘束したのだ。
それにしても、いつの間に少年の後ろ側に回り込んだんだ。
「鑑さん……これで結果オーライですか。」
「いいや、まだよ」
鑑さんは、船の奥の方を凝視していた。
「そーだよ、せっかく炎黒刀をこいつに食わせたら面白いかもよって教えてもらったのにぃ」
「こ…いつ?」
俺は、上を見上げる。
今日はきれいな月夜だったはずだ。
なのになんで暗いのかなんて、決まっている、こいつがいたから。
僕と、月の間にこいつがいたからだ。
うがぁぁぁぁぁぁぁぁう。
「ま、炎の契約者もいるわけだし、これはこれで計画通りなのかな?」
でかい、でかすぎる。
その巨体が一歩踏みぬこうとしたら、そのまま船を踏みぬいた。
「くそっ…、この子は私に任せてっ‼」
「頑張ってにえぇ~」
鑑さんはその少年とともに避難する。
怪物のおかげで、周りは大騒ぎ、周りには、怪物の登場で壊れてしまった船の残骸。
俺は、その残骸を飛び乗って何とかやり過ごすしかなかった。
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