第70話
「ねえ、お兄ちゃん?」
「ん、なんだ」
「膝枕してあげようか?」
「え、やめておくよ、青空にまた怒られる」
「そーなの、つまらないな」
「なんか積極的だな、華怜」
「んーちょっと開放感かな」
「そうだよな、土日はゆっくりできそうだな」
「うん、だよねー、じゃあ私が膝枕してもらう、お兄ちゃん」
「あ、別にいいよ」湊の膝の上に華怜の小さな頭が乗っかる。
「なんだか落ち着くな、お兄ちゃんの膝の上」
「そうか、まあ、そうかもな」華怜のきれいな足に目が行ってしまう。
「お兄ちゃん」
「ん?なんだ?」
「頭なでて」
「ああ」
「優しいんだ、お兄ちゃん」
「そうか?」
「そうだよ」
少し、ゆっくりとした時間が流れる。青空が戻ってくるが、何も言わなかった。
「おかえり、青空」
「うん、ただいま」
「お姉ちゃん、ちょっと、お兄ちゃんの膝を借りているよ」
「どうぞ、どうぞ、華怜になら貸してあげる」
「やったあ、公認だよ、お兄ちゃん」
「あ、まあ、そうか」
「ねえ、私ちょっと寝るね、お兄ちゃん」
「あ、分かった」
「おやすみなさい」そう言うと湊の膝に頭を乗せたまま寝てしまった。
「なんだか、飼い猫が膝の上で寝ちゃったみたいだよ、これは動けなくなった」
「だいぶなつかれているようね」
「ああ、だいぶ、かな」
「私がいない間に?」
「いや、別にそういうわけじゃ」
「ほんとに仲がいいんだから」
「ああ、まあそう言われるとそうかな」




