第68話
3教科が終わり、3人は下駄箱のところに集まった。
明日、明後日が休みということもあり、周囲の生徒たちもかなりほっとした表情だ。
「とりあえず、終わったな、あと二日」
「うん、終わったね、湊」
「終わったよ、お兄ちゃん」
「とりあえずは、帰ろうか」
「うん、そうだね、湊」
帰り道は、寄り道をせずに真っすぐ滝野川の冨永家へ向かう。久しぶりの日差しが3人の影をくっきりと歩道に焼き付ける。
「暑いね、お兄ちゃん」
「あー、ほんとだな」
「お兄ちゃんに曇りにしてっていったらなるのかな?」
「ならないよ!」
「そうなんだ?」華怜は不思議そうな目で湊を見つめる。
「そんな目で俺を見るな、仙人かなんかだと思っているのか?」
「そうじゃないけどさ、なんとなく、なんでもできるのかなって」
「なんでもできるか、そんなことありえるのかな?」
「どうなんだろうね、お兄ちゃん」
「例えば、この宇宙を造った神様がいたとして、なんでもできるのだろうか、それは、ノートに絵を描くようなものじゃないのかな、俺たちは描かれた絵みたいなものだから、作者のことを万能のように思っているけど、次元が違うだけで、不自由な想いをしているのじゃないかな?」
「お兄ちゃん、たまに難しいことを言うよね、でもそっか、神様も不自由なのかな?」
「ただ、絵を描けるってことは、ここに雨を降らせることも洪水を起こすことも、できるのかもしれないけどね」
「なるほど、私たちの世界に対してはなんでもできるってことかあ」
「そーだな、雷を落とすくらいはわけがないだろうな」
「え、やめてよ、お兄ちゃん、ぞくぞくしてくるよぉ」
「あ、ごめん、大丈夫だから」
「うん」そう言って湊の手をぎゅっと握りしめる。
「二人とも、なにをそんなに難しいことを言っているの?」
「あ、まあ、たまに、華怜の栄養みたいなんだよね、めんどくさい話が」
「そんなこと言って、湊だって好きなくせに」
「はは、そうかな?」
「うん、面白がっているよ」
「ああ、まあそんなところだ」




