第67話
華怜が出て行くと入れ替わりで青空が制服姿で入ってきた。
「湊、華怜の匂いしているよ?」
「え?そんなの分かるの?」
「分かる」
「女の子の嗅覚って怖いな」
「もう、変なことしてない?」
「してないよ、大丈夫」
「湊は優しすぎるからなあ」
「青空、安心して」そう言って青空にキスをする。
「あ、だめ。」そう言いながら反応する。
「さ、降りようか」
「うん」
食卓を3人で囲む。
今日はごはんと納豆、卵焼き、お味噌汁と漬物だった。卵焼きは青空が作ってみんなに配った。食べ終わると華怜が食器を洗ってくれた。
いつもと同じ時間に家を出る。
久しぶりの日差しで外がむっとするほど暑い。
3人は並んで滝野川の住宅街を歩く。明治通りに突き当たるまでは本当に閑静な住宅街だ。途中、知り合いのおばさんなどとすれ違い、あいさつをして通り過ぎる。
華怜は湊の手を取ってなにやら自分の胸に当てている。さっきの大きくなるという話を信じているのだろうか。ちょっと仕草がかわいらしくて、湊も青空も注意する気にすらならない。
3人は明治通りへと差し掛かった。かなり交通量が多い。ここから高校までは少しだけざわついた通りになる。
「今日出たらとりあえず、土日は休みだね、湊」
「ああ、土日は遊べないけど、まあ、大丈夫だろ」
「うんうん、そうだね」
学校へ着くと華怜を1-Aに見送り、湊と青空は教室へと向かった。
試験直前の見直しをする。湊はまた、試験範囲をまとめたカードを取り出し、何回か繰り返し見る。今日も大丈夫そうだ。
目をつぶって、少し精神を集中させる。
チャイムが鳴って、先生が教室へと現れる。
前の方から順番にまず、解答用紙、その次に問題用紙が配られる。
回答用紙に名前を書き込み、問題を見る。
今日も、大丈夫だ、そう思えた。




